ローランギャロスでの練習では好調なプレーを見せる大坂なおみ

 大坂なおみ(WTAランキング1位/5月20日づけ)が、全仏オープン(ローランギャロス)で日本人初となるグランドスラムの第1シードを獲得し、またひとつ日本テニス界の歴史に足跡を残した。

 普段から「ランキングは自分の目標にはならない」と話す大坂だが、今回の全仏では、珍しく第1シードになることにこだわりを見せた。言葉を一つひとつ選びながら、その理由を語ってくれた。

「世界1位として、グランドスラムに臨むのは初めてです。(全仏は)とても大事な大会のひとつですから、そこでいいプレーをしたい。私にとって、グランドスラムは特別な場所で、ここでナンバーワンとして臨むことは、他の大会でナンバーワンとしてプレーすることと、大きな違いがあります。私の好奇心を満たしてくれることだと思っています」

 WTAローマ大会、準々決勝前に発症した右手親指付け根周辺の痛みが心配されたが、パリ入りしてからの大坂は順調に練習をこなしている。

「日に日によくなってきています。痛みなく動かせます。85%ぐらいかな。プレーの後に固まってしまう感覚はありますが、試合までに100%に回復できればと思っています」

 ボールの弾み方が高くなり、スピードが減速されるローランギャロスのレッドクレーは、球の速いコートを好む大坂にとって、簡単なサーフェスではない。4月下旬のWTAシュツットガルト大会のあと、大坂はラファエル・ナダルがスペイン・マヨルカ島に開校した「ラファ・ナダルアカデミー」を訪れて、レッドクレーでの練習を積んでさらなる進化を目指してきた。

「どのサーフェスでもいいプレーができればと思っています。ここ数年で、クレーでよりよいプレーする方法がわかってきましたし、今年は実際いいプレーができています。ここでどんな結果を残せるのか本当に楽しみです」

 大坂は、大会ドローのトップハーフに入り、1回戦で、アンナ カロリナ・シュミエドロバ(92位・スロバキア)と初対戦。

 勝ち上がった場合、2回戦では、エレナ・オスタペンコ(40位、ラトビア)とビクトリア・アザレンカ(44位、ベラルーシ)の勝者と対戦する。

 オスタペンコとの対戦成績は、大坂の1勝0敗で、2016年全仏1回戦では、大坂がストレートで勝っている。オスタペンコは、大坂と同じ21歳で、2017年ローランギャロスチャンピオン。また、アザレンカとの対戦成績は、大坂の1勝1敗。アザレンカは、2012年と2013年の全豪オープンチャンピオンで、元世界ナンバーワンだ。

 そこを順当に勝ち上がった場合、3回戦からはシード選手との対戦の確率が高くなる。大坂が当たる可能性のある選手は、第29シードのマリア・サッカリ(29位、ギリシャ)で、1勝1敗。4回戦は、第14シードのマディソン・キーズ(14位、アメリカ)との対戦になれば、大坂の1勝3敗。2018年の全仏3回戦ではストレートで大坂が敗れている。

 準々決勝で顔を合わせるのは、順当であれば第8シードのアシュリー・バーティ(8位、オーストラリア)で、対戦成績は大坂の1勝2敗。または、第10シードのセリーナ・ウィリアムズ(10位、アメリカ)であれば、大坂の2勝0敗だ。

 2月上旬、初めて世界1位になった大坂が、アレクサンドラ・バインコーチとの関係を突然解消して周囲を驚かせたことは記憶に新しい。その後、3月上旬にジャーメイン・ジェンキンスコーチと新たなスタートを切ってからは、まだ優勝がなく、世界1位になって以降、結果が残せていない。

 全仏開幕時点で、大坂の世界ナンバーワンは18週目に入るが、大会後の成績次第で、大坂以外の4人の選手が1位になる可能性を持っている。

 もちろん大坂が、全仏で初の決勝進出を果たせば、他の選手の結果に関係なく1位を維持することができる。

「ここでは、準々決勝にまだ進出したことがない。だからといって、そこを目標にしたくはないんです。全豪オープンと同様に、最終的な目標は優勝することです」

 大坂は開幕前の会見では、スマホで会見の様子を自撮りするリラックスした姿も見せた。タフなドローになったが、全仏での戦いを楽しもうとしていることが感じられる。

 そして、優勝を目指すことを明言する大坂からは、昨年とは比べものにならないほど、精神的な成長がうかがえる。

 大坂の1回戦は、日本時間の5月27日か28日に行なわれる予定だが、優勝争いだけでなく、第1シードとしてふさわしいプレーを披露し、大きな結果を残せるのかどうか、世界中が注目している。