4月27日に職員通用口に捨てられていた子犬とドッグフード

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《どうしてこんなことができるのか……悲しい? 悔しい? もう表現できない、言葉にできない感情でぐちゃぐちゃです。(中略)今日、犬を捨てた人間に言いたいです。絶対に許さない。絶対にこのままじゃおかない》

【写真】捨てられた犬たち、園で飼育され大きくなった“でん”の可愛らしい姿

 栃木県宇都宮市北部の民間「宇都宮動物園」で犬やカピバラなどを担当している飼育員の室井晶さん(27)は、その日の園のブログに「許さない」と過激なタイトルを打って、こう書き込んだ。ブログは大きな反響を呼んでいる。

人間に怯えておしっこを漏らす犬も

 室井さんは4月27日午後7時55分ごろ、同園裏手の職員や業者だけが出入りする通用口脇に子犬9匹が捨てられているのを見つけた。いずれも生後2〜3か月のレトリーバー系だった。糞尿用シートの大きな段ボール箱2つに入れられ、ドッグフードが添えられていた。成犬用の安価なエサだった。

「たぶんラブラドールレトリーバーとゴールデンレトリーバーのミックス犬だと思います。命あるものを捨てる、放置していくことに憤りを感じました。子犬たちはみな震えていて、手を差しのべただけで、怯えて甲高い悲鳴をあげたり、おしっこを漏らす子もいた。人間不信が大きいと感じました。エサを見せると興味を持って近づいてくるものなんですが、みんなで固まって遠ざかろうとするんです」

 と室井さんは振り返る。

 手のにおいをかがせて安心させてから体に触れようとすると、やはり悲鳴をあげたり、噛んできた子犬もいた。

「もともと社交的な犬種なので、雑な扱いをされてきた背景が見えてきました。これで昨年から3回目ですよ。捨てるなら、増やすな。かわいそうだと怒りがこみあげてきたので、この現状を訴えようと、仲間に相談してブログに書いたのです」(室井さん)

 最初は昨年11月11日の午後6〜7時ごろ、第一駐車場の隅に4匹。同月25日の同時間帯には通用口に7匹が置き去りにされていた。

「同じく生後2〜3か月のミックス犬です。きっと同じ人が捨てていったのだと思います。状況や犬種、犬の性格が似ているんです」(同)

 これとは別に昨年、同園のフェンス越しに高齢男性が猫を投げ捨てた事件も。過去には、亀、イグアナ、ニワトリ、ウサギが捨てられたこともあった。動物園や動物病院などはペットが捨てられやすい場所とされている。

19匹は里親のもとへ、1匹は園で飼育

 荒井賢治園長(55)は、

「現場の飼育員はみな助けたいと思っていますよ。しかし、保健所に持っていくのが一般的でしょう。感染症の可能性があるし、まず園の動物を守らなければなりませんから」

 と実情を打ち明ける。

 同園では、健康チェックをしたうえで犬の里親を見つける事業を行っているため、1匹を除く計19匹は里親に引き取ってもらえたという。

「ただ、2回目に捨てられていた犬で約2か月早く生まれたとみられるオスは園で飼っています。大きくて、で〜んとしているので“でん”と名づけて、生涯、うちに置くことになりました。ハードルを跳んだり、樽を転がしたりするドッグショーの特訓と、リードをつけてお客さんと散歩する要員として調教を積んでいます」(室井さん)

 同園で今年から職員として働くようになった岡田翔太さん(18)は、里親として1匹を引き取っている。

「あえて人見知りするモカ(メス、7〜8か月)の里親になったんです。名前は、なんとな〜く(笑)。いまではすっかり、なついていますよ」

 岡田さんは職場に近い祖父宅で暮らしている。祖父・星野栄一さん(68)が現在のモカの様子を話す。

「翔太が“最後まで愛情を持って面倒をみる”と約束したので飼いました。うちには保健所からもらってきた外飼いの番犬メル(メス、2歳)がいますが、モカは室内で飼っています。ふだんは翔太の部屋で寝起きしていますが、すでにメルとも仲よくなってね。頭がよくて、もうお座りもするんですよ。最初は震えていましたが、いまでは私にもじゃれて、じゃれてしょうがない(笑)」

 犬たちは幸せな犬生をリスタートしているようだ。

捨て犬の犯人は?

 許せないのは捨て犬の犯人だ。糞尿用シートをまとめ買いした大きな段ボール箱や業務用サイズのドッグフードが置かれていたことから、ブリーダーなど専門家による犯行の疑いがある。市内のペットショップや大型ホームセンターを訪ね、商品名などを手がかりに情報を集めたところ、ペット業界関係者から興味深い話を聞くことができた。

「ブリーダーはシートを使わず新聞紙で代用します。エサもそんなに安いものは与えない。品質のよいフードを食べさせないと、健康で高い値段のつく犬には育たないからです。それと、ミックス犬はブームですが小型犬の話。レトリーバー系の中・大型犬のミックスは売れないし、高値がつかないことをブリーダーは知っています。避妊・去勢手術をしない、だらしない一般の愛好家の仕業ではないか」

 ヤフーや楽天など大手オークションサイトでは生体取引が禁じられているため、売買目的で繁殖させた可能性は低いのではないか、という。

 宇都宮動物園は4月28日に栃木県警宇都宮中央署に被害届を提出した。

 動物愛護法違反の疑いで捜査が続いている。