★宮司愛海インタビュー 前編

 昨年4月から始まったフジテレビ系のスポーツニュース番組『S-PARK』(毎週・土曜23:45〜、日曜23:15〜)。メインキャスターとして番組を仕切り、真剣かつ誠実にスポーツと向き合って、ときには愛くるしい表情を見せながら競技の魅力を伝えているのが、入社して5年目となる宮司愛海アナウンサーだ。意外なことに「あまり取材を受けたことがないんです」と言う彼女にインタビューを敢行。どんな想いで番組に取り組んできたのか、どのような気持ちで選手や大会の取材に臨んでいるのかなど聞いた。


インタビュー後、「大丈夫でしたか」と取材班を気遣ってくれた宮司愛海さん

―― 番組が始まって1年が過ぎました。率直な感想を教えてください。

宮司 やっとゼロに、スタートラインに立ったんだなという感じです。もともとスポーツにはくわしくなかったので。基礎知識もそうですし、スポーツの見方というのもあまりわからなかったんです。どういうふうに楽しむのか、とか。そういうところも含めて、スタートラインに立てたと言えるだけの知識と経験を積めたかなという感じです。

―― 『S-PARK』が始まる前に、『めざましテレビ』や平昌五輪のレポートなどでスポーツの取材もされていたかと思います。その時からすでに、いろんなスポーツの勉強もされていたのですか。

宮司 スポーツの番組を担当させていただくことが決まったのが…どれぐらい前だったでしょうか。半年もないと思うんですけど。年が変わる前ぐらいですね。だから、(番組スタートの)4〜5カ月前ぐらいで。それまでは、まさか自分がスポーツを担当するということは考えたこともなかったんです。現場に足を運ぶ機会もそれほどなかったですし。なので、平昌に行くということが決まってから、どういうふうにアスリートの方と接するのか、どういうことを聞けばいいのか、どういう振る舞いが失礼に当たらないのか、というのは考えながらやってきました。

―― 古くから言うと、フジテレビは中井美穂さんからだったと思いますが、若手の女性アナウンサーで、スポーツにあまりくわしくない方が、スポーツ番組のメインキャスターに抜擢されてきました。それでも、お話があった時は「まさか」という感じだったんですか。

宮司 「まさか」ですね。私は2015年入社なんですけれども、入社時点から(東京で)オリンピックがあるというのはもちろんわかっていたので、何かしらの形で関わることになるかなとは思っていたんですけど、第一線で関わることになろうとは、1ミリも思っていなかったというのが正直なところです。

―― 毎週土日には生放送があります。今でも本番前は緊張されますか。

宮司 します。私は、どの仕事の前でもすごく緊張するんです。特に不安な要素がある日ほどしますね。例えば、取材に行った内容をしゃべることもそうですし、何か準備してきたことを話すということもそうなんですけど、「大丈夫かな、ちょっと不安だな」と思っている時ほど緊張します。

―― 取材してきたことを自身の言葉で、しかも生放送でお話しされますが、どんなことに気をつけて伝えているのでしょうか。

宮司 そこは難しいです。どうやったら陳腐な言葉にならずに、例えば「すごかった」「感動した」「面白かった」「興味深かった」というありきたりな言葉にならずに、自分の気持ちを表現するかということとは、日々戦っています。現場で「これはこうだ」と思ったことは、その場でちゃんとメモしておかないと、意外に覚えておけないものなんですよ。だから、この感じをちゃんと言葉にすると、どういうことになるのかというのを、現場取材でもそうですけど、普段の生活の中から訓練するようになりました。

―― 少し話が変わりますが、会見の場では、いろんな人が質問されるかと思います。そういう現場に行かれた時に、いくつか質問を用意されて行くと思うんですけど、自分が考えていた質問を先にされたりすると、「あれっ」みたいな感じになったりしませんか。 

宮司 します、します。特に番組では、今日は取材内容をこういうふうに見せたいという、ある程度の設計図があるんです。それに沿ってアナウンサーは「こういう質問を聞こう」とか、「こういう答えを引き出そう」というふうに考えているんですけど、そういう意図が被ったりすることは意外と多くて。そういう時は、「うーん、どうしようかな」ってすごく考えますね。でも、結局は、自分が欲しい答えを導き出すというよりは、その人がどういう人生を歩んでどういうことを考えて、それをどういうふうに伝えたいのかという、より広い視点を持って考えないと、いい質問は出ないんだろうなと思ってはいます。

―― そうすると、準備が大切になってくる、ということでしょうか。

宮司 そうですね。かなり。


いろんな表情を見せながら楽しく答えてくれた宮司アナ

―― どういう質問をするかは、そのときの状況によっても変わってきますか。

宮司 そうなんです。本当にそこはケースバイケースで。「5分しかないです」「3分しかないです」「2問しか聞けないです」ってなったら、どれだけ綿密に作戦を立てられるか。その場でディレクターさんと相談しますし、柔軟にやっていかないと。時間があればたくさん聞けますけど、そういう時ばかりではないので。

―― フジテレビのホームページで宮司さんのプロフィールに、「初対面の人と話をするのが好き」と書いてありますが。

宮司 そうですね。得意というか、好きというか。昔からあまり人見知りするタイプじゃなかったというのと、いろんな人と話すと、いろんな気づきがあるという。それだけなんです。

―― 初めての方にインタビューする時は、緊張なのかワクワクなのか、どちらですか。

宮司 どちらかというとワクワクのほうが大きいです。ただ、それも本当にその場その場で違って。いわゆるレジェンドみたいな方に初めてインタビューする時はガッチガチに緊張しますし、そこはワクワクが大きいとはなかなか言えないですけど。できるだけ事前に、「聞けてうれしい」とか、そういう感情を持てるように努力しています。

―― ワクワクした方や、印象に残っている方はいますか。

宮司 たくさんいます。最近『S-PARK』では、平成から令和に変わるというタイミングで、レジェンドの方々にこれまでのスポーツ史を振り返っていただくという企画(『平成スポーツ史 時代が生んだ名勝負』)をやっていて、いろんなレジェンドの方にお話を聞かせていただいたんです。それこそキングカズ(三浦知良)さんの時も緊張しましたし。グアムまで行ってお話を伺いました。でも、カズさんはお話が上手なので、最初の5分ぐらいで「ああ、大丈夫かな」っていう感じにはなったんですけど。一番緊張したのは、全日本女子バレーの中田(久美)監督の時ですね。

―― それはなぜですか。

宮司 いろいろとお見通し、と言いますか、私がまだバレーボールのことを勉強し始めたばかりだということをよくわかっていらっしゃるなという印象でしたね。じつは、番組が始まって1カ月くらいのときで、どういう方なのか、どういう感じでお話を伺えばよいかをつかみきれていない中でのインタビューだったんです。もちろん勉強はしていったんですけれども、具体的に「何年の何々大会でこういう試合で勝ったのがきっかけで」っておっしゃっていただいても、「うーん…」と考えてしまうことがあり…。ただ、そんな中でも聞かなきゃいけない、番組のために何とかVTRに反映できるような言葉を引き出さなきゃいけないという状況で、自分の中では難しい部分があって。それが記憶に残っていますね。一番汗をかきました。

―― 印象に残っている大会や試合も教えてください。

宮司 つい最近のことになってしまうんですが、体操の全日本選手権です。内村(航平)さんにはたびたびお話を伺わせてもらっていて、オリンピックを31歳で迎えるという、その31という数字が体操ではどれだけすごい数字なのかというのは、お話を聞いている中でひしひしと感じていたんです。オリンピックに向けて頑張ってほしいという気持ちがある中で予選を見ていて、(ケガの影響もあって、予選落ちしたのが)すごく驚いたというか。こういうことがあるのかと衝撃を受けました。そういう意味では印象深く、すごくいろんなことを考えた大会でした。

―― そういう結果に終わっても、きちんと取材を受ける内村さんの態度がすばらしいって番組でもお話していましたね。

宮司 もし自分がその立場だったら、同じことができるかと言われると、(私は)絶対できないので。間違えた時、ミスした時、失敗した時に出る姿勢が、その人の本質なんだろうなというのは、内村さんを見てすごく感じました。

―― 今後、取材したい方や大会などありますか?

宮司 大会で言うと、水泳とか陸上とかオリンピックでは歴史の深い種目の取材はたびたび行かせていただいているので、それこそ新しく加わるサーフィンとか、大会ってどういうものなんだろうという興味はあります。記事で読んだりはしていますけど、実際に見てみたいですね。どこかで行けたらいいなと思っています。

―― 憧れていた選手や、自分が昔やっていた競技の一流選手に聞いてみたいこととかあったりしますか。

宮司 小さい頃、ほんとにスポーツを見ていなかったので、正直言うと、イチローさんくらいしかわからなかったんですよ。恥ずかしながら。そういう意味で言ったら、イチローさんにお話を伺ってみたいという気持ちはありますが、大谷翔平選手もどういう方なのか気になります。なかなか取材できない方とお聞きしているので。



―― ご自身は、スポーツをやっていなかったんですか。

宮司 やってないです。小学生の時にドッヂボールをやっていたのと、本当に小さい頃に新体操を半年ぐらいやったのと。あと、ダンスを7〜8年やったことぐらいしか体を動かした経験がなくて。すごくスポーツ音痴なんです。

―― 今後もスポーツをご自身でやろうという気持ちはないんですか。

宮司 興味はあるんですけど、やる暇があったら勉強したほうがいいだろうなって思っちゃいます。ジムに行ったり、ランニングしたりとか、そういう運動はしますけど。

―― 失敗しちゃった、ということはありますか。

宮司 たくさんあります。日々そうです。1対1でインタビューしている時は特に、一番選手のそばにいるのは私なわけじゃないですか。「あ、今、心を閉ざしてしまったな」みたいな瞬間って一番わかるんです。

―― それは、どんなタイミングですか。

宮司 「あ、これ聞いてほしくなかったんだ」とか、「聞き方を間違えた」とか。(相手が)けっこうテンション高めだから、(自分も)こういうテンションで行ってみようかなと思ったら、それがちょっと高く行きすぎてしまったり。そういうことはよくあります。本当はあってはいけないんですけど、「もっといい聞き方ができた」っていう反省は毎回ありますね。あとは…去年のお話ですが、内川聖一(ソフトバンクの内野手)さんに「ナイスピッチングでした」って言ったこともありますし。今振り返ると信じられないですが、よく、言い慣れていない感じが出てしまっていましたね。

(つづく)