いまでもハワイ航路は憧れ  photo by iStock

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ハワイはJALの牙城であり、守るべき聖域

「A380の3機すべてをハワイ路線に導入して、マーケットシェアの面で優位に立つ」
ANAホールディングスの片野坂真哉社長は、今年2月の記者会見でそう宣言した。ハワイを舞台にしたANAとJALの全面戦争が始まった。

5月24日から、傘下の全日本空輸(ANA)が総2階建ての超大型機A380(フライングホヌ)を順次、成田−ホノルル線に就航させた。座席は520席で世界最大の航空機だ。

ハワイ・ホノルル線は、日本航空(JAL)がシェア30%を握る「牙城」。“ハワイといえばJAL”といわれるほどの路線だ。対するANAのシェアは15%である。超大型機を投入して、特に3機体制が整う2020年以降、シェアを確実に奪い取り、“ハワイといえばJAL”のイメージを変えようとしているのだ。

5月24日は、JAL対ANAのシェア争奪戦の火蓋が切って落とされた日として航空関係者の記憶に残る日になるだろう。

いまでもハワイ航路は憧れ  photo by iStock

来るべきこの日に向けて、ANAは周到な準備をしてきた。もともとANAでは、A380が初飛行した2007年から導入を計画していたが、翌2008年に起きたリーマン・ショックでいったん計画は中断していた。

現在の航空業界は、格安航空会社の台頭などで、中小型機による多頻度運航が主流になっていて、運行コストが高く、空席が出やすい大型機の出番は、あまりなくなってきている。そこにあえてA380という超大型機を投入するには理由があった。

「ANAは、高需要が見込まれるリゾート路線の強化を図ってきました。ホノルル線はロードファクター(座席利用率)が90%を超えています。大量輸送が見込める路線だったのです。また、A380は燃料の効率性もよかった」(ANA関係者)

ロードファクターが90%を超えているということは、どのホノルル便も実質満席状態といっていい。ホノルル線の需要は間違いなくある。この路線に超大型機を投入しても、旅行客を取り込める可能性はかなり高い。それはリゾート路線の強化にもつながる。超大型機の活用を模索して、たどり着いたのがホノルル路線だったのだ。

修学旅行はハワイに行こう!

総2階建ての巨大飛行機は、2階部分には最前方にファーストクラスが8席、真ん中にビジネスクラスが56席、後方にプレミアムエコノミークラス73席がある。1階部分はエコノミークラス383席で、合わせて520の座席を備える。

プレミアムエコノミー

ホノルル線で運航しているボーイング787はビジネスクラス40席、プレミアムエコノミークラス14席、エコノミークラス192席の合計246席。輸送規模は787型機2機分を軽く超える。

そして独自のサービスでお客獲得を狙う。ANAのホノルル路線で初のファーストクラスは個室型シートでドア付き。ビジネスクラスにはカップルや家族が隣り合って座れるペアシートも設けられている。プレミアムエコノミークラスのシートは、ゆとりの38インチのシートピッチを用意した。

1階のエコノミークラス後方には日本の航空会社で初めてとなる「カウチシート」を60席分導入した。隣接する席のレッグレストを引き上げると、3〜4席分をベッドのように使うことができる。日本からホノルルまでは、往路で7時間、復路で8時間以上かかるので、座ったままの姿勢は大人でもつらい。

その点、カウチシートなら寝転んだり、姿勢の自由度は高い。特に子連れ客にとっては非常に便利なシートといえる。

さらに、機内5カ所にバーカウンターを設置。着替えや赤ちゃんの授乳に使える多目的ルームなど多彩な設備も用意している。

ファーストクラスのカウンターバー

気になる料金だが、ローシーズン(閑散期)でファーストクラスが35万円、ビジネスクラスで10万円、プレミアムエコノミークラスで5万5000円、エコノミークラスは2万7500円だ。他の航空会社より、若干お安めの価格設定となっている。

カウチシートの料金は、何名で利用するか(何名分の席を購入するか)で変わってくる。1名で3席利用の場合は8万6500円なので、プレミアムエコノミークラスの料金よりは高くなる。

「ハワイという場所柄、結婚式や新婚旅行、あるいは記念日旅行、さらには年に一度の家族旅行が目的というお客様が多い。いろいろなお客様に、せっかくだから飛行機でも少し贅沢をしたいという気持ちに寄り添うようなつくりを目指した」(同前)

超大型機ということもあって、これまで取り込めなかったお客層も狙う。1つは団体客の取り込みである。520席という座席数は、団体客を乗せても十分に対応できる。修学旅行などもターゲットにしているという。

それでも520席という膨大な座席数を埋めることはできるのか。ちょっと気になる。

憧れの機内食に垂涎

実は、これまでANAのホノルル線には乗りたくても、なかなか乗れなかったお客がたくさんいた。それは、ANAのマイレージプログラム会員だ。どの便もほぼ満席状態のため、ANAのホノルル線はマイルを使った特典航空券が取りづらいことで有名だった。

日ごろ出張でANAのマイルを貯めているお客が、休暇で航空券に変えようとしても特典航空券の枠が少なかった。A380が3機就航すれば座席が大幅に増えることから、マイレージプログラム会員の利用も相当に増えると思われる。

さて、機内食はどうだろう。飛行機の旅の楽しみの1つでもある。

まずは、ファーストクラス。写真のように贅のかぎりを尽くした食事だ。フルコースでの提供だ。

ファーストクラスの食事

ホノルル発便では、オアフ島コオリナにある5つ星ホテル「フォーシーズンズ・ホテルズ&リゾーツ」内にあるイタリアンレストラン「Noe」とのコラボレーションメニューを提供する。

ビジネスクラスは、日本発の機内食はワントレイで提供するのも大きな特徴。日本を夜に飛び立ち、早朝にホノルルに到着するスケジュールであることから、機内では早々に機内食を摂って、早く休み、ホノルル到着直後から元気に動けるようにすることを目的に、機内食の提供や食器の回収にかかる時間を最小限に抑える工夫だ。

プレミアムエコノミー、エコノミーの各クラスの機内食はどうか。

プレミアムエコノミーでは、ANAが初めて専用メニューを提供する。メインは陶磁器に乗せられており、エコノミークラスとは一線を画す。ビジネスクラス同様、日本発便は1トレイでの機内食提供となる。

エコノミークラスでは、日本発便の機内食は特徴あるものとなっている。シドニー発祥でワイキキにも店舗を構えるオールデイダイニング「bills」とのコラボレーションメニューだ。

383席の乗客に早く機内食を提供し、素早くトレイを回収することで、乗客がより多くの休息時間を確保できるよう、エコノミークラスの機内食は選択肢を設けない。ただし、チャイルドミールやベビーミールなどのスペシャルミールは事前にリクエストできる。また、どのクラスの機内食も3カ月に1度見直しがある。

JALとの全面戦争になる!

A380の就航に合わせて、ホノルルのダニエル・K・イノウエ国際空港に、自社ラウンジをオープンさせる。

ファーストクラス利用者や、AMC(ANAマイレージクラブ)のダイヤモンドメンバーなどが利用できる「ANA SUITE LOUNGE」と、ビジネスクラスとプレミアムエコノミー利用者やAMCのプラチナメンバー、SFC(スーパーフライヤーズカード)会員やスターアライアンスのゴールド会員などが利用できる「ANA LOUNGE」を設置する。

ウミガメをイメージしたデザインのA380。JALは嵐のメンバーが描かれた特別塗装機で対抗

ラウンジの最大の特徴は、A380型機の2階席(アッパーデッキ)にアクセスするPBB(旅客搭乗橋)に直結していることだ。A380型機の2階席はファーストクラス、ビジネスクラス、プレミアムエコノミーが配置されており、これらのシートの利用者はラウンジから直接、搭乗できるようになっている。

ハワイを訪れる日本人は、年間150万人を超える。非常に大きな観光市場だが、1997年には222万人近くの日本人が訪れていた。A380の就航をきっかけに、ANAは再び、需要を喚起する起爆剤にしようという思惑がある。

そして、現在15%程度のホノルル線のシェアを最終的には25%まで拡大を目指し、さらに上乗せを目論んでいる。それは、JALのシェアを侵食するということでもある。

JALも手をこまねいているわけではない。2017年には7年ぶりにハワイ島のコナ直行便を復活させた。2018年3月には、ANAと提携していたハワイアン航空を自陣営に引き込んで提携することで合意。ハワイアン航空は、オアフ島以外の離島路線も数多く運航している。

「JALの赤坂祐二社長は、ANAが需要を創出することは、JALにとっても大きなメリットがあるとしつつ、ホノルルだけでなく、ハワイ全域でANAに対抗するともいっています。これまで、ANAとJALの国際線路線網は体力勝負を避け、棲み分けしてきましたが、どうやら仁義なき戦いが始まる可能性が高いですね」(業界関係者)

JALもこのままでは、済まさない。ANAが仕かけたJALvs.ANA戦争が、サービス向上につながれば万々歳だ。今年のハワイは、熱いぞ!