結婚していても、全員が恋愛強者というわけではありません。実際に結婚している夫婦というのは、どのようなマッチング形態なのでしょうか(写真:amadank/PIXTA)

恋愛に前向きなのは、男女とも3割程度しかいません。


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私は、これを「恋愛強者3割の法則」と名付けています。よく最近の若者の恋愛離れや草食化が進んだなどといわれますが、時代が変わろうとも同じです。

実際若者の恋愛相手がいる率(恋愛率)というのは、昔からさほど変わっていないのです。

いつの時代も恋愛相手がいる人は約3割

1982年以降の出生動向基本調査による長期推移を見ると、婚約者・恋人がいる率はおおむね男性20%台、女性30%台で推移しており、恋愛率は3割前後なのです。

2015年は男性の恋愛率が21.3%と直近では最も低いですが、33年前の1982年も21.9%と、それほど大きな変化はありません。この数字は、18〜34歳全体の平均ですが、男性で最も恋愛率の高い25〜29歳でもこの30年間一度も33%を超えたことはありません。


恋愛関係の定義に関して、異性の友人がいることも異性交際(恋愛)であるとする分析もありますが、それは疑問です。告白した際に「いいお友達でいましょう」という回答は、普通に考えれば拒絶の意味であり、異性の友人を恋愛関係に合算するのは妥当とはいえません。

ところで、なぜ男女で恋愛相手がいる率に10%もの開きがあるかという点に疑問を持たれる方もいるでしょう。それは、いくつか要因があります。その1つは、未婚男女の人口差による「男余り現象」です。『茨城県が1位!「ニッポン男余り現象」の正体』でも紹介しましたが、20〜50代では300万人も男余りですし、20〜30代に限定しても145万人も男余りです。

もう1つは、『未婚男が割を食う「バツあり男」の再婚事情』に書いたように、再婚においては、「再婚男×初婚女」の組み合わせが最も多く、未婚男性はこうした「時間差一夫多妻制」のあおりを受けているともいえます。つまり、一部の恋愛強者男による独り占め現象があるということです。

とはいえ、未婚者の統計だけで、恋愛強者3割と断じるのは乱暴ではないかというご指摘もあります。なぜなら、既婚者は全員恋愛経験者ではないか、というわけです。

確かに、現在は9割以上が恋愛結婚をしており、日本の有配偶率は約6割です。ならば、そうした既婚者の数字を合わせれば恋愛強者は3割どころか、7割近くになるのではないか、と。しかし、既婚者だからといって、全員が恋愛強者といえるのでしょうか? 恋愛経験者と恋愛強者は違います。

全国未既婚者3万人を調査した

そこで、私は20〜50代の全国未既婚者3万人調査を実施し、恋愛に関する強者・弱者度を数値化しました。

質問項目としては「自分は恋愛上手であるか否か」「恋愛に対して能動的であるか否か」「異性に対して告白したことがあるか否か」「異性から告白されたことがあるか否か」「自分の容姿に自信があるか否か」「これまで付き合ったことのある人数」など複数項目の結果を5段階評価に分け、全項目平均で4以上の対象者を恋愛強者として分類しています。


これによれば、未既婚比較をすると、当然ながら未婚者のほうが恋愛強者率は低く、既婚者はその倍の値でした。とはいえ、20代既婚者こそ恋愛強者率は男女とも4割を超えますが、30代以上は出生動向基本調査の結果同様、男女とも3割前後に落ち着きます。20代だけ突出するのは、そもそも20代での婚姻数が少ないことと、20代で結婚に至る若者に恋愛強者が集中するからです。

結婚したからといって、全員が恋愛強者だとは決していえないし、恋愛強者だから結婚できているわけでもないのです。1980年代までの日本の皆婚を支えたのは、お見合いと職場縁などのお膳立て婚だという話は、『100年前の日本人が「全員結婚」できた理由』に書いたとおりです。

では、実際に結婚している夫婦というのは、どのようなマッチング形態なのでしょうか。恋愛強者同士がマッチングしているのか、それとも、恋愛強者と恋愛弱者がマッチングしているのか、その内訳について調査しました。全国1000組の夫婦を抽出して、恋愛強者度を測定しました。結果はこちらです。


男女ともほぼきれいに3分の1ずつに分かれました。既婚者においても、恋愛強者は大体3割なのです。

それぞれのマッチングは?

興味深いのは、それぞれのマッチングです。恋愛強者は強者同士でマッチングされると思いがちですが、そうではありません。それぞれのマッチングを細かく見たのが以下のグラフです。


ご覧のとおり、全体では、強者同士・中間同士・弱者同士という恋愛同類婚が最も多く、半数近い48%を占めています。しかし、詳しく内訳を見ると、恋愛強者同士の夫婦は全体の15%しかいません。中間×中間カップルが18%、弱者×弱者のカップルも16%であり、強者同士のマッチングはそれほど多くないのです。

男性の方が恋愛強者で女性が弱者という、いわば恋愛力における「女弱者の恋愛上方婚」は全体の24%、逆の「男弱者の恋愛上方婚」は28%もあります。これはつまり、恋愛弱者男女でも、恋愛強者の異性と半数が結婚まで到達しているということです。

恋愛力があったり、モテたりすれば結婚できるかというと、そう単純な話ではなく、「割れ鍋にとじぶた」ではありませんが、互いの弱点を補完し合う形で夫婦となっている例が多いわけです。

1960年代半ばまで、見合い結婚が半数を占めていました。「恋愛してから結婚」という道筋ではなく、極論すれば「出会い即結婚」でした。そこには、仲人や世話焼きおばさんたちなどによる第三者の目利きがありました。当事者の主観や感情ではなく、客観的で冷静な視点があればこそ、当時の皆婚と低い離婚率が達成されたのかもしれません。

世帯年収に格差はあるのか?

ところで、本連載においてたびたび話題にしてきましたが、「女性の経済力上方婚」志向があります。これは、「女性は結婚相手に対して、とくに年収について自分より高い相手を選択する」という傾向です。婚活において「相手の希望年収はいくら以上」というのもその表れです。

実際、夫婦となったカップルのその恋愛強者・恋愛弱者のマッチング別に、夫婦の世帯年収に格差はあるのかについて調べました。前提として、本調査は世帯年収300万円未満を対象外としています。結果は以下のようになりました。


恋愛力同類婚夫婦の平均世帯年収は760万円。女弱者の恋愛上方婚(男性のほうが恋愛強者である夫婦)は686万円、3つの組み合わせで男弱者の恋愛上方婚(女性のほうが恋愛強者である夫婦)の場合が最も高く、平均世帯年収は777万円でした。

つまり、「恋愛弱者の男性×恋愛強者の女性」による組み合わせの夫婦の世帯年収がいちばん高いということです。これは言い換えれば、あまりモテない男性でも高年収によって、モテる恋愛強者の女性と結婚することができた、と見ることもできます。結婚においては、経済力が恋愛力を凌駕するのです。

参考までに、2016年国民生活基礎調査に基づいて、核家族世帯に限って平均年収を算出すると約545万円ですが、世帯年収300万円以上の核家族だけに絞ると平均世帯年収は711万円となります。その全国平均を唯一下回るのが、「恋愛強者男×恋愛弱者女」の組み合わせです。

「恋愛と結婚は別物だ」とはよく言いますが、男性の結婚という視点で見ると、恋愛強者であることはたいして大きなポイントにはならないのかもしれません。

確かに、学生などの若いうちは容姿やモテるコミュニケーション力などの恋愛力が物を言いますが、その神通力は結婚には通用しないということです。そして、「色男、金と力はなかりけり」と川柳にいわれるように、恋愛力と経済力は一致しているものではなく、うまくバランスがとれているともいえます。

そう考えると「結婚相手には高年収の男がいい」と希望する婚活女性のライバルは、恋愛強者の女性だらけということになります。相当、熾烈な戦いになりそうです。ちなみに、上記調査で組み合わせを問わず、上位3割の恋愛強者女性だけを抽出した夫婦世帯年収は840万円となり、突出して高かったことを最後にお伝えしておきます。