by ViCky SiNgh

アメリカ航空宇宙局(NASA)は2024年までに再び人類を月へと送る「アルテミス計画」を発表しており、連邦議会に追加予算の申請などを行っています。そんなNASAは月周回軌道上に「月軌道プラットフォームゲートウェイ」の建設を計画しており、宇宙技術を開発するMaxar Technologiesと軌道プラットフォームゲートウェイの電力と推進力を担うモジュールの発注契約を交わしたと発表しました。

NASA officially orders its first segment of a lunar space station | Ars Technica

https://arstechnica.com/science/2019/05/nasa-officially-orders-its-first-segment-of-a-lunar-space-station/

NASA長官であるジム・ブライデンスタイン氏は、「私たちが次に宇宙へ行く時、それは月にとどまることを意味します」と2019年5月23日に述べています。月軌道プラットフォームゲートウェイは地球と月の重力の間でバランスをとり、再利用可能な月周回軌道上の基地として運用されるとのこと。

NASAが2024年に予定している月面着陸計画において、宇宙飛行士は地球からまず月軌道プラットフォームゲートウェイに到達し、そこから月面へと着陸するとされています。月軌道プラットフォームゲートウェイはオバマ政権下で発足したプロジェクトですが、トランプ政権下でも計画は継続される模様。なお、オバマ政権下の宇宙開発計画では月軌道プラットフォームゲートウェイは火星への足掛かりとされていましたが、トランプ政権下では月面への着陸に焦点が当てられています。

航空宇宙界では月軌道プラットフォームゲートウェイが本当に宇宙探査プログラムにとって有益なのかどうか、激しい議論が行われてきました。しかし、木曜日にブライデンスタイン氏がMaxar Technologiesとのモジュール発注契約を発表したことで、正式に月軌道プラットフォームゲートウェイの開発がスタートすることが明らかとなりました。Maxar Technologiesが納品するのは月軌道プラットフォームゲートウェイの動力となる電気と、ゲートウェイの推進力を供給する部品だとのこと。



by NASA Goddard Space Flight Center

木曜日に発表された契約は最大で3億7500万ドル(約410億円)もの総額になる見込み。Maxar Technologiesは、Amazonの創業者であるジェフ・ベゾス氏が設立した航空宇宙スタートアップ「Blue Origin」や、チャールズ・スターク・ドレイパー研究所が設計・建設・宇宙船の運用などに関わるとしています。

Maxar TechnologiesがBlue Originともパートナーシップを結ぶという事実は、Blue Originが開発している垂直着陸ロケット「New Glenn」によって、軌道プラットフォームゲートウェイの構成部品が宇宙へと送られる可能性を示唆するものです。Maxar Technologiesはメディアとの電話インタビュー中で、今後12カ月から18カ月以内に部品を打ち上げる商用ロケットを選択すると述べ、その筆頭候補がNew Glennであるとみられています。

一方で大規模な宇宙開発においては開発の遅延が頻繁に起こるため、NASAが部品の打ち上げを計画する2022年までにNew Glennが開発されない可能性もあります。そのため、Maxar Technologiesは代替候補についても検討を続ける模様。

2024年に人間が月軌道プラットフォームゲートウェイを訪れる前に、NASAは小さな居住モジュールを月軌道プラットフォームゲートウェイに追加する予定。さらに2020年代を通じて国際的なパートナーとも協力し、さらに月軌道プラットフォームゲートウェイを拡張していくとNASAは述べました。