全体の販売台数では約4倍の開きがある

 2018年度の国内販売において、日産ノートが13万1760台で登録車トップに立ったことを覚えているでしょうか。日産車としては1968年度のブルーバード以来50年ぶりのトップということでも話題を集めました。そのノートが人気を博している理由は、ワンペダルドライブが新鮮で、街乗り燃費にも優れる電動パワートレイン「e-POWER」にあるのは疑う余地のないところ。同じくe-POWERを搭載したミニバン、セレナも2018年度では約10万台と好調に売れています。

 この勢いをもってすれば、国内販売において日産がトップに立つことはありえるのでしょうか。言わずもがな、日本国内での販売トップは156万9566台(軽自動車含む)のトヨタです。軽自動車を含む数字でいうと、ホンダ(74万8678台)、スズキ(72万5110台)が続き、日産は59万6087台で4位となります。

 つまり、日産はトップを狙う前に抜くべき相手がまだまだいるわけです。ただし軽自動車を除いた登録車だけの販売実績でいうと日産は2位となります。

2018年度 日本国内登録車販売ランキングTOP3

 1 トヨタ:153万2319台
2 日産:41万1991台
3 ホンダ:37万5879台
※数字は各社の速報値より

 それでも、ダブルスコアどころかトヨタは日産の4倍に近い数字になっています。いくらノートやセレナといった単独車種では互角以上の争いをしていても、全体としては「トヨタを抜く日はくるのか」という疑問に対しては、ひと言で「あり得ない」といえるほどの差があるのです。

日産にとってトヨタの販売チャネル再編が転機となるか?

 こうした差は商品力だけで生まれているわけではありません。販売網によるところも大きいのです。おおよその数字でいうと、トヨタの販売店舗数は4900カ所、それに対して日産は2100カ所程度といわれていますから、半分以下の規模です。そして、これから販売店舗を増やすというのは難しいことです。もし日産がトヨタの販売台数を抜こうと思ったら、一店舗あたりでトヨタの倍以上を売らなければいけません。仮説としても考慮するのは難しい数字であることは自明でしょう。

 しかしながら、トヨタは販売チャネルの統合、販売店の整理をすることを発表しています。街道などを走っているとトヨタ店とネッツ店、トヨペット店とカローラ店といった店舗が近接しているのを見ることもありますが、販売チャネルの統合により将来的には店舗数は減っていくことが予想されます。そうなると、日産の店舗数は増えなくとも、結果としてトヨタとの店舗数の差が縮まることになるでしょう。トヨタの販売店が統合で混乱するタイミングにあわせて、日産が国内でウケる商品を投入できれば、チャンスがあるかもしれません。

 とはいっても、既存顧客の母数で差がありますから、逆転するというのは難しいでしょう。日産のノート(コンパクトカー)やセレナ(Mクラスミニバン)の好調というのは、この2車種に軽自動車を合わせたモデルに販売リソースを集中しているという面もあるからです。日産がトヨタを抜くには、このふたつ以外のカテゴリーでも勝負権のとれるようなモデルをラインアップしていく必要があるでしょう。

 ただし、ここまでの実績や販売の条件はクルマが個人所有されるもの、という前提に立っています。今後、カーシェアリングやサブスクリプションサービスといった新しいクルマの利用法が主流になってくると、クルマの販売台数のトレンドも変わってくることでしょう。すでに日産は「e-シェアモビ」という電動車両に特化したシェアリングサービスを始めています。一方、トヨタは「KINTO」というサブスクリプションサービスを今夏から全国展開する予定です。クルマ単体の魅力ではなく、こうした新しいサービスの魅力によって結果としての販売台数が変わってくる可能性も十分に考えられます。

 そうしたゲームチェンジが起きれば、ことによれば大逆転というのもあり得るかもしれません。もっともゲームチェンジに対して積極的に変わろうとしている意識はトヨタのほうが強い印象もあります。はたして、日産が逆転劇を見せてくれるのでしょうか。