前澤友作社長

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ZOZO「前澤社長」が失った「打ち出の小づち」(2/2)

 女優との交際や“現金ばらまき”で名を轟かせた前澤友作社長(43)が直面する苦境――。専門家の分析で明るみに出たのは「月に10億円超の資金流出」「資金繰り逼迫」という問題だった。追い込まれたZOZOは、どこで判断を間違えたのか。

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「ZOZOのキャッシュポジション、つまり現金の残高を見てみると、だいたい200億〜250億円の間で推移しています。ですから、約240億円の自社株買いというのは、手持ちのキャッシュとほぼ同額であり、相当大きな買い物だったわけです」

 と解説するのは、企業の財務分析に定評のある公認会計士の川口宏之氏である。前回触れた通り、前澤社長は18年5月に保有するZOZO株をZOZOに売却。同社は自社株取得のため、銀行から240億円を借り入れた。

前澤友作社長

「しかも、購入当時の株価が割安だったなら、そのタイミングで自社株買いをするというのはまだ理に適っていたと言えるのですが、今、振り返ってみれば、それほど割安だったわけでもない。その当時、ZOZOはPB(プライベートブランド)事業を始めて資金需要が増していた時期です。なぜそんなタイミングで自社株を買ってしまったのかは、経営判断として疑問が残るところです」

 加えて川口氏はこんな懸念も口にする。

「ZOZOは約240億円の自社株を取得するために、ほぼ同額を金融機関から借り入れたわけですが、借り入れた債務は返済していかなくてはなりません。その返済の原資をどうするのか。ZOZOは返済の原資にPB事業の利益を見込んでいた節があります。PB事業で儲けが出ると見越して、自社株買いに手持ちのキャッシュとほぼ同額を注ぎ込んでも大丈夫だと考えたのではないでしょうか。でも、そのアテが大きく外れてしまったわけです。想定外の失敗が資金面でも響いていると言えます」

恐ろしい担保

 錬金術が狂ったという点では、専門家らは揃って前澤氏が昨年6月に設定したストックオプションを挙げる。新株予約権を自身に付与し、株価が上がれば自分がぼろ儲けできるスキームだ。

 株式ストラテジストの中西文行氏によれば、

「本来、ストックオプションは会社で働く従業員の士気を上げるために行使されるケースがほとんどなのに、ZOZOは株価が上がれば差額の儲けの9割が前澤社長の懐に入る形で、こんな条件は聞いたことがない。他企業で社長が得られる割合は3割程度、残りは部下に渡すのが相場ですから」

 ただし、このストックオプションを行使するには条件があると中西氏は続ける。

「段階的にZOZOの株式の時価総額が、それぞれ2兆円、3兆円、5兆円に達することが条件になっています。現段階で時価総額は約7千億円なので、今後も行使するのは難しい」

 株価が上がり続ければ、濡れ手で粟の如く金を手にできる。まさに「打ち出の小づち」。そんな前澤社長の目論見が頓挫しているのだ。

 それを象徴する出来事が、4月の決算発表前に起こっていた。今年2月、前澤氏は3度もZOZO株に関わる大量保有報告書を提出したが、そこでは自らが保有するZOZO株のうち実に9割を、担保として金融機関に差し出していたことが判明したのである。

 再び中西氏が言うには、

「一般論として、これまで担保にしていた株の値段が下がったので、更なる担保を求められたと考えるのが妥当です。けれど、金融業界で株は非常に恐ろしい担保です。特にZOZO株が下がり続けていけば、差額を埋めるため追加の担保が必要になっていく。何が何でも株価を上げないとダメな状況に追い込まれていきますから、前澤社長には辛い日々が続くでしょう」

アート作品を手放す

 背に腹は代えられないのか。前澤氏は蒐集していた現代アートにも手をつけた。5月16日のサザビーズオークションで、所有していたアンディ・ウォーホルとエド・ルシェの作品を売却。落札価格は計8億8千万円と報じられた。

 さるアートコレクターは、

「4月1日に香港で開催されたオークションでも、前澤さんはコレクションの一部を手放しています。その中には、草間彌生の作品も含まれていたと言われており、それは、日本円にして8億7千万円を超える高値で落札されています。前澤さんは、この取引で相当の儲けをだしたはずです」

 一方でリスクもあって、

「作家とギャラリーは、作品がオークションなどの市場にむやみに流れることを嫌う。投機対象として作品を捉える人に、本当に価値のある物を売ろうとはしませんから、今後、前澤さんが真に評価の高い作品を手にできる可能性は少なくなります」(同)

 斯界の信用を失くしても、当座の金を得たいのか。

 ZOZOに訊くと、

「前澤個人の資産に関することですので、弊社からの回答は控えさせていただきます」(広報担当者)

 と言うばかり。古(いにしえ)からの物語には、「打ち出の小づち」も使い方を誤れば自らに災いが振りかかる、と書かれている。前澤社長はその戒めを、身を以て我々に教えてくれたに相違ない。

「週刊新潮」2019年5月23日号 掲載