観光客が少ない大町エリア。地元の古い商店がぽつぽつ並び、ここで暮らす人々のリアルな息づかいが感じられます。そんな場所に、店を構えて7年目になる〈オイチイチ〉。この店は、鎌倉らしさにあふれていんです。

昼は、体にやさしい定食とお弁当を。

瀬木いくよ/昼の部担当。都内で食の仕事に携わったのち、鎌倉に移り住んで15年。お料理全般をこなす。

妻・いくよさんが担当する昼の部は、定食屋さん。

昼メニューは「本日のごはん」1,080円。メインのおかずをお肉かお肉以外の2種類から選ぶシステム。玄米ご飯、お惣菜、お味噌汁つき(テイクアウトの場合は無し)。「献立は、食材を見てから組み立てます。野菜はできるだけ無農薬。作り手の顔が見えるもの、新鮮なものを使っています」(いくよさん)

明るい店内で、健康的なランチをいただける。

夜は、お酒と共にお惣菜をつまむ。

瀬木 暁/夜の部担当のマスター。移動式映画祭や、映像制作など、たくさんの仕事を持つ。鎌倉っ子。

やがて陽が暮れ、夫の暁さんが店に立つ夜の部は、雰囲気が一転。薄暗い照明のなか、まったりした音楽と引き込まれるトークに、つい、時間を忘れて杯を重ねてしまう。

お酒は、逗子の「ヨロッコビール」のドラフト(アンバーエール400円)や、こだわりの酒屋〈掛田商店〉から仕入れる厳選した日本酒を。ときには貴重な熟成酒があることも。アテには、昼のメニューにも登場するヘルシーなお惣菜。「葉わさびの醤油漬け」400円、「明日葉と春菊のひしお和え」450円など。

どこか懐かしく、気持ちがゆるむ空気感…そんな居心地が良い理由とは?

初めてでも、どこか懐かしく、気持ちがゆるむ空気感。居心地の良さの秘密とは?「ボロボロの建物を自分たちでリノベーション。ハンガーも友人の手作りで、一枚板のカウンターは材木屋さんにもらったもの」と暁さん。つまり店内には、二人の居間に招かれたような穏やかな時間が流れている。「休みが多い」のも〈オイチイチ〉の秘密。暁さんは移動式映画祭の運営チームの一員で、長く店を閉めることも。今年も会期に合わせ、5月末まで休業予定だ。「1年の半分くらいしか営業してなくて、時間もまちまちです」と笑う暁さん。ほかの仕事を含めて、鎌倉での日々の生活を楽しんでいる様子が伝わってくる。

二人の魅力に引き寄せられるように、昼も夜も、カウンターには今日も誰かがやってくる。近隣の人々や、地元の同年代の店主にクリエイター。そして、ここでまた新しい出会いが生まれ、人と人がつながっていく。鎌倉のローカルな人付き合いの輪の中心に、〈オイチイチ〉がある。

(Hanako1172号掲載/photo : Ryosuke Nakagawa (Uber) text : Yuka Ito)