新聞の楽しみの一つは連載コラムだ。

【写真】丸山議員は、日本酒を飲んでいたという

 今週とくに注目していたコラムがあった。それは、佐藤優氏(作家・元外務省主任分析官)が何を言うか、書くか? である。

 丸山穂高衆院議員の「戦争」発言が報道された先週。元島民の男性に対し、北方領土問題について「戦争しないとどうしようもなくないですか」などと発言。


5月20日、報道陣の取材に応じる丸山穂高衆院議員 ©時事通信社

 その批判の一つとして丸山議員が飲酒していたこともあるのだが、私は同じ「飲酒」でもちょっと違う点から問題を感じたのだ。以前に佐藤優氏の著作を読んだら、次のような箇所があったのである。

《ロシアの酒飲み政治家は酒を飲まない者を信用しない。酒を飲んだときと素面のときの発言や態度の変化をよく観察して人物を見極めるのである。》(『国家の罠』186P、新潮社)

 ああ……。

 つまり、「ロシアと政治家と酒」という面でも丸山議員は考えられるうえで最悪だったことがわかる。最強の最悪。

 丸山議員の言動を知ったロシアの政治家の中にはニヤニヤした人だっているに違いない。よく「国益を損ねた」って言葉を使いたがる人がいるけど、使うなら今回だろう。

「一刻も早く政治家を辞めるのが国益にかなうと思う」

 そう考えていた数日後、スポーツ報知に佐藤優氏のコラムが掲載された。なんと書いてあったか?

【佐藤優コラム】「暴言」丸山議員は早期辞職を(5月20日 スポーツ報知)

 この中で、

「丸山氏が友好の家の敷地外に出て、大声でわめき散らしていたら、酩酊者としてロシア警察に保護された。」

「日本としては、ロシアの管轄権行使を認めるわけにはいかない。従って、丸山氏の即時釈放を要求することになる。」

「日本政府が、戦争による北方領土問題解決の可能性を主張する丸山氏を守らざるを得ない状況が生じたならば、ビザなし交流をロシアは止めた。また、北方領土交渉も停滞した。」

 佐藤氏らしい指摘だ。最後は「丸山氏のような輩(やから)は一刻も早く政治家を辞めるのが国益にかなうと思う。」

 やっぱり「国益」損ねてます! そういえば今回久しぶりに「ムネオハウス」という言葉を思い出しました。鈴木宗男氏も佐藤優氏も怒り心頭だった。

「丸山の暴言葬るのは簡単だが…」

 さて、次に考えたいのは今回の件は丸山議員の資質だけの話なのか? である。

 日刊スポーツ「政界地獄耳」は「丸山の暴言葬るのは簡単だが…」と書いた(5月20日)。

《丸山の暴言を議員辞職させて葬るのは簡単だ。だが、この歴史観や一方的な歴史認識を持つ議員は丸山のみならず保守系議員に多い。それを昨今の政治家の失言と同じようにくくるのは、本音を口にしてはいけないといっているのと同様だ。》

 そう、丸山議員は「失言」したわけではない。「本音」を酒で漏らしたのである。思っていたことを。

「大事なことは黙っていようぜ」という目くばせ?

 すると時を同じくして自民党が“失言防止マニュアル”を党内に配布した。

「自民、失言防止の教え 『発言は切り取られる』『強めのワードに注意』」(毎日新聞5月15日)

 ここで注意を呼びかけているのは、

(1)歴史認識や政治信条に関する個人的見解

(2)ジェンダー、LGBTについての個人的見解

(3)事故や災害に関し配慮に欠ける発言

(4)病気や老いに関する発言

(5)身内と話すようなウケも狙える雑談口調の表現

 の5パターン。(5)は森喜朗からの教訓だろう。

 しかし「代議士」と呼ばれ、言葉のプロであろう国会議員の先生方にマニュアルが配られることに脱力感もあるが、一方でこれは「大事なことは黙っていようぜ」という目くばせにも思える。

「こちら特報部」は「『勘違い』を起こす下地」と

 東京新聞「こちら特報部」は、丸山氏の発言が飛び出す背景についてこう論じていた。

 ここ数年の政権の「軍備増強路線」、そして「ネットは極論歓迎」という風潮から「日本は強い」「何でも力で解決できる」と思い込む人も増えているのでは? と(5月16日)。

「勘違い」を起こす下地、という表現も記事にあったが、もしかしたら勘違いでない本気の議員も多いのかもしれない。

ヤマタクが、令和の時代に望むことは

 私は4月30日にトークライブをおこない、ゲストに山崎拓氏(元自民党幹事長・防衛庁長官)を招いた。平成の政治史を全部知ってるだろうから平成最後の夜に話してもらおうと思ったのだ。

 82歳のヤマタクは現在もヤマタフだった。超満員の観客に2時間喋り続けた。加藤の乱などの秘話もたくさん。女性にモテた話だけは口を閉ざした。

 最後に「令和」という時代に望むことを尋ねると「戦争の無い時代」と答えたヤマタク先生。

 山崎拓氏にしろ野中広務氏にしろ梶山静六氏にしろ、ふだんバチバチやっていても戦争の悲惨さを体験した世代は「戦争だけは二度とさせない」という共通認識があったという。

 そういう世代がどんどん消えていき、イケイケの坊ちゃん世代が中心になるのはヤマタク先生からしても不安なのだろうなぁと隣で話を聞きながら感じた。するとその直後に丸山議員の戦争発言だ。「ああ、きたか」というのが正直な感想だった。

 今回の件、丸山議員だけでなくその背景を含めてずーっとネタにして(気にして)いかなければいけないニュースだと思うのです。

『芸人式新聞の読み方』 が文庫になりました。ジャーナリスト青木理氏との「全国紙・地方紙実名ぶっちゃけ対談」などを文庫特典として収録!

(プチ鹿島)