モンストグランプリ2018での優勝チームの表彰式。賞金もさることながら、スポンサーによる副賞の豪華さにも注目したい(筆者撮影)

タイトルとの関連性より、集客力と拡散力

2018年の流行語大賞のランキング入りなど、徐々にですが、eスポーツが世の中に浸透しつつあります。それがわかる顕著な例の1つが、eスポーツイベントのスポンサーです。これまでは、イベントで使用されるゲームタイトルをリリースしているメーカーによるプロモーションとしての位置付けで、スポンサーがつかないかそのゲームに関連するゲーミングデバイスのメーカーによるものがほとんどでした。

しかし、昨年からゲームタイトルとは関係性が薄い企業によるスポンサーが少しずつ増えています。

その1つが、EVO Japanでのカップヌードル(日清食品)です。ゲームをプレイしながらでも食べられるという親和性はあるものの、ゲームと密着した商品であるわけではなく、イベント自体に集客力があり、商品の認知が見込める拡散力があると踏んでの協賛なわけです。


eBASEBALL パワプロ・プロリーグ e日本シリーズの優勝チーム、埼玉西武ライオンズと三井住友銀行のキャラクター、ミドすけのフォトセッション(筆者撮影)

ほかにはeBASEBALL パワプロ・プロリーグのe日本シリーズでは三井住友銀行(SMBC)がスポンサーとして参加しています。さらにロートZ!(ロート製薬)は、全国高校生eスポーツ選手権やRAGEなど数々の大会へ協賛するとともに、対戦格闘ゲーム『ストリートファイターV AE』のときど選手にもスポンサーとして支援しています。

毎年7月にミクシィが開催するゲームや音楽の祭典「XFLAG PARK 2019」の一部「モンストグランプリ」でも多くのスポンサーが協賛しています。4月に開催概要が発表された「モンストグランプリ 2019」では、グーグルとトヨタ、Number(文藝春秋)がスポンサーとして加わることとなりました。

グーグルは国内のeスポーツ大会へのスポンサーとしての参加は初と見られています。トヨタは昨年の「モンストグランプリ 2018」で、優勝チームへの副賞としてカローラスポーツを提供していましたが、本格的にスポンサーとなるのは今年からとなります。文藝春秋もeスポーツへの支援はこれまで聞いたことがなく、いずれも画期的な事案であることは間違いありません。

「これまでのモンストグランプリの実績をみていただき、今年は新たに3社の協賛メーカーに参加いただいています。日本最大級のモバイルeスポーツイベントとして、期待していただいています」(ミクシィ執行役員ライブエクスペリエンス事業本部長の田村征也氏)

そこで、なぜ今、eスポーツのスポンサーとなるのか、トヨタと文藝春秋に聞いてきました。

「プロゴルフの大会のようだ」

「モンストグランプリは昨年も協賛しておりましたが、昨年はカローラスポーツを優勝チームの副賞として提供しました。カローラスポーツが発売直後だったのでお披露目も兼ね、会場での展示とテレビCMの上映をさせていただきました。今年はさらに一歩踏み込み、車を副賞として提供するだけでなく、カローラスポーツとモンスターストライクの人気キャラクターである「ルシファー」とのコラボを実現しました。

カローラスポーツは20、30代の男性がメインユーザーで、モンスターストライクのメインユーザーと親和性が高いと感じております。年々盛り上がりを見せているeスポーツの中でも『モンスターストライク』は存在感があり、協賛することで、より多くのお客様にカローラスポーツという車の魅力を知っていただくいい機会と考えております」(トヨタ広報担当者)


モンストグランプリ 2018の会場に展示してあったカローラスポーツ(筆者撮影)

昨年のXFLAG PARKでのカローラスポーツの展示は、それまで車に関心が薄かった層にも十分アピールできたのではないかというくらいの存在感がありました。優勝チームの副賞として手渡されたときにも「eスポーツ大会で優勝することで車がもらえるのか」「プロゴルフの大会のようだ」とインパクトの大きさを感じたのを覚えています。

「Number編集部は比較的年齢の若い男性が多く、以前からeスポーツには強い関心を持っていました。国内外での盛り上がりを受けて、NumberWebを中心に、すでにeスポーツ大会の模様などは記事として取り上げています。

最近は雑誌Numberの誌面でもeスポーツの選手を取り上げるようになり始めています。Numberがちょうど本格的にeスポーツに取り組んでいこうと考えているところへ、ミクシィさんから今回のお話をいただきました。協賛するだけでなく、『モンストグランプリ2019』をしっかりと取材させてもらい、記事化に協力していただけるとの話もあり、協賛社に加えていただくお話をお受けした次第です」(Number編集長の宇賀康之氏)

どちらもeスポーツイベントが企業もしくは商品のアピールの場として、活用に足る存在だということを認識して協賛しているのがわかります。とくにeスポーツは若者中心の文化であり、若者への訴求をする場としてはもってこいのイベントといえそうです。自動車にしてもスポーツにしても、昨今は若者の関心が薄れている分野だけに、eスポーツへの協賛は必然ともいえるのではないでしょうか。

今回話を聞くことがかなわなかったグーグルですが、Google Pixel 3をモンストグランプリの公式端末として、さらに決勝進出チームへの賞品として提供すると発表しています。スマートフォン市場もすでに成熟しており、最後発であるグーグルとしては、これからスマホを持ち、今後のメインターゲットとなる若者へのアピールをするには、有効であるのは間違いないわけです。

今回の3社による協賛は、単に資金面、サービス面などの支援だけでなく、モンストグランプリのeスポーツの地位向上にも大きな意味があるともいえます。

これまでeスポーツイベントは、使用するゲームタイトルを開発、販売するメーカーによる持ち出しで、位置付けとしてはプロモーション的なものでした。スポンサーがついたとしてもゲーム周辺機器やPCメーカーなどで、販売に直結するものがメインだったわけです。そこからゲームとは関係性が薄いメーカーが参入するようになり、いよいよイベントとしての知名度と集客性を認められたところまできました。

さらに、今回の3社のようなメジャーメーカーが入ることで、たかがeスポーツ、ゲーム大会と一蹴するレベルを超えてしまったといえるでしょう。

スポーツ総合誌「Number」の存在は大きい

とくにNumberの存在は大きく、スポーツ誌としてのオーソリティーがeスポーツを取材対象として認定したことで、eスポーツはやはりスポーツであると再確認もできたのではないでしょうか。

また、今年から参入した上記の3社に加え、昨年に引き続き、ロジクールやカルビー、第一屋製パン、テックウインドも協賛企業として名を連ねています。連続してスポンサーを買って出るということは、それだけ効果を見込めた証拠でもあり、eスポーツが広告媒体としての価値があるということを証明しているわけです。


ミクシィ執行役員ライブエクスペリエンス事業本部長の田村征也氏(筆者撮影)

「Numberはスポーツ総合誌で、記事として取り上げる競技は、野球、サッカーから、オリンピック競技、競馬、F1、プロレスなどと多岐にわたっています。第1特集にこそなりませんが、将棋や麻雀も誌面で取り上げたことがあります。

フィギュアスケートなどは、今でこそ第1特集で表紙にもなりますが、20年前にはまだそこまでの人気はありませんでした。eスポーツはNumberにとってまったく新しいジャンルで、これからの本格的に取り組んでいくスポーツです。いずれはフィギュアスケートのように人気のジャンルになるかもしれない、と期待して記事を作っています」(宇賀氏)

ミクシィは今季大幅な減収減益となる見込みを発表しています。その中においても約40億円の事業領域の投資をしており、プロスポーツ事業に注力しています。eスポーツもその一環と見られており、もはやプロモーションのためのイベントではなく、エンターテインメント事業としての位置付けとなっていると言えるのではないでしょうか。

そこに多くの協賛企業が共感をしており、イベントとしてのモンストグランプリに魅力を見いだしているわけです。今後もイベントとしての価値が高まれば、より協賛する企業も増え、資金が集まればさらにクオリティの高いイベントへと昇華していきます。この相乗効果によりeスポーツは次のステージへ進み、他のエンターテインメントイベントと肩を並べることを期待したいところです。