■上司がせっかちになる理由がわかった!

心理学の基本法則に、「ジャネーの法則」があります。「時間を感じる心理的な長さは、年齢に反比例する」という法則です。3歳の子供にとって、1年は人生の3分の1ですが、30歳の大人にとって、1年は人生の30分の1です。つまり、自分の人生における時間は、1年、1日というワンピースの割合が、全体の長さに対して減ると同時に、短く感じるようになるというわけです。

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また、若い頃は、未経験のことがたくさんあります。新しいことを経験すると、時間は長く感じるのです。どこかへ出かけるとき、行きは長く、帰りは短く感じますが、これも体験したことのないことをすると、時間が長く感じられるせいです。

もう1つ、大人になればなるほど、短い時間の中でやれることが増える、という理由が挙げられます。10分、1時間の間に処理可能なことが増えると、時間は早く過ぎるようになる。一方で、壮年期を過ぎ、老人になると体力が衰えて、短い時間でやれることが減ってしまいますが、「できる」という感覚は変わりません。なので、年を取っても時間の進むスピードは、早くなっていきます。

職場では、せっかちな重役や上司に「現場の大変さを知らないくせに……」と不満を感じる人も多いと思いますが、できなくても「できる感覚」を持ってしまった年配の人たちは、部下に理想を求めてせっかちになってしまうのです。

時間の感じ方の違いは、年齢によるものだけではありません。よく、楽しい時間はあっという間に過ぎる、といいます。これは、時間の経過に注意が向きづらくなるから。

エレベーターには、荷物、荷台を運ぶ人の安全確認のために鏡が備え付けられているものがあります。鏡があると、人は髪型や服装など、時間以外のことに気を取られます。なので、鏡付きのエレベーターのほうが時間を気にする時間が減り、すぐに移動するように感じられるのです。半面、注目するものがないと長く感じるということ。刺激が少なく、つまらない仕事だと、「早く終わらないかな」と、終業時間が気になって時計ばかり見てしまうものです。

■ゴルフよりボルダリングがよい理由

このように、年齢や、仕事の質、個人の感覚の差によって、時間の感じ方は違います。上司と部下にも、時間の感覚にギャップがあるもの。お互いに尊重したいものですが、人は無意識に、「時間は平等だ」と、感覚を共有しているという前提を持ってしまう。

では、どうすればいいか。部下からは、こまめに仕事の進捗を報告すること。上司は報告を受けると、「待つ」以外に注目することができるので、時間の感じ方も変わります。また、「いつまで待てますか」と上司に決めてもらうのもよいでしょう。

上司と部下で「強制的に時間を共有する」ことで、認識のズレを修正する方法もあります。これには、どちらともが経験したことがないことをするのが大切です。ゴルフなどでは、上司のほうが経験豊富なため時間の感覚にズレが生じるので、例えばボルダリングなど、未知の経験を共有してみるのもよいでしょう。

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藤井 靖
明星大学心理学部心理学科准教授
臨床心理士。早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程臨床心理学研究領域修了。

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(明星大学心理学部心理学科准教授 藤井 靖 構成=伊藤達也 写真=iStock.com)