5月28日までに東京五輪のチケット抽選申し込みが締め切られる。スポーツライターの酒井政人氏は「観戦希望者が最も多いのは陸上競技。新国立競技場ならオリンピックの雰囲気を存分に感じることができる。特にお勧めは日本勢の活躍が期待できる8月6日午前(男子4×100mリレー予選ほか)などの『朝チケット』だ」という――。
画像=東京2020公式チケット販売サイトより

■東京五輪チケット、新国立競技場で観戦できる陸上競技「狙い目」

2020年東京五輪のチケット抽選申し込みが5月9日に始まった。3段階で行われるチケット販売の「第1弾」で、今回対象となるのは、ボクシングを除く32競技と開会式・閉会式。

観戦希望者が多く、公式サイトへのアクセスが増えている。なおチケットは最大でひとり30枚まで購入可能で、抽選受付は5月28日の午後11時59分までとなる。

特に人気なのは開会式だが、そのチケットはA席が30万円、一番安価なE席でも1万2000円で、全体的に高額だ。

新種目のスケートボード、BMXフリースタイルなどさまざまな競技があるが、4年に一度のオリンピックらしさを感じられるのは五輪スタジアム(新国立競技場)で行われる陸上競技ではないか。クロス・マーケティングが2018年に実施した東京五輪の意識調査でも、観戦したい競技は、陸上競技が37%でトップだった(以下、体操35.2%、水泳30.3%、野球29.9%、サッカー25.0%と続く)。

ところが、この陸上競技は通常時はさほど人気があるわけではない。陸上界最大のイベントである日本選手権でも観衆は2万人ほど。つまり、陸上観戦の未経験者がほとんどで、どの席で申し込めばいいのかわからない人も多いはずだ。

そこで何度も世界大会を取材してきた筆者の視点から、陸上競技観戦の醍醐味とお勧めチケットの種類についても解説したい。

■新国立「陸上」の最高額は8/8(土)夕方セッションA席13万円

まずは、東京五輪における陸上競技のチケット種類についてだ。ポイントは以下の3点になる。

・シート(席)はA〜Eの5種類。
・日程は、2つ。9時〜昼くらいまで行われるモーニングセッション(午前競技)と、19時ごろから22時ごろまで行われるイブニングセッション(午後競技)の区分けされている。
・日によってチケットの金額は変わる。

たとえば、男子100m決勝のある8月2日(日)、男子4×100mリレー決勝のある8月7日(金)、トラック&フィールドの最終日となる8月8日(土)のイブニングセッションが最も高額でA席は13万円。

他の午後決勝はA席6万7500円で、午後決勝のE席はいずれも5800円だ。最も安価なのは決勝種目のない7月31日(金)と8月1日(土)のモーニングセッションで、A席が1万3500円、E席が3000円となる。

■日本人選手が活躍するのは何月何日か?

陸上競技の世界大会はモーニングセッションに予選を行い、イブニングセッションに決勝というタイムテーブルが基本だが、今回は少し事情が異なる。巨額な放映権料を支払う米国のテレビ局に配慮したのか、「午前決勝」が実施されるのだ。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/klenger)

オリンピックといえども、モーニングセッションはスタジアムが埋まらないことも多い。午前決勝のある8月3〜6日は平日にあたるため、都合をつけることができれば、狙い目といえるだろう。

ただ注意しないといけないのは、マラソン以外は全席指定となるため、フィールド競技やトラックを周回しない種目は席によって選手が見えにくいことがある。またC〜E席はスタンド上層階(4・5階)となり、必然的に選手との距離が出てくることを理解しておこう。

コアなファンなら、どの日程でも十分に楽しめるだろうが、さほど陸上競技を知らない人だと、「アタリ」「ハズレ」を感じる場合がある。そこで世界大会の“雰囲気”と日本人の“期待値”からチケットの価値を考えていきたい。

■8/6(木)朝、男子4×100mリレー予選は盛り上がり必至

重要なポイントは、東京五輪に「開催国枠」はないため、どの種目でも必ず日本人選手が出場するわけではないことだ。特に女子は長距離(5000mと1万m)、マラソン、20km競歩、やり投げ以外の種目は参加が厳しい状況にある。男子の投てき種目も同様だ。

一方で、活躍が期待される種目もある。その筆頭はリオ五輪で銀メダルを獲得している男子4×100mリレーだ。

決勝は8月7日(金)のイブニングセッション。決勝進出を狙える男子4×400mリレーの予選もあり、日本勢にとっては“最高に盛り上がる”チケットになる可能性が高い。ただし、料金設定は最高額のうえ、男子4×100mリレーは誰もが知っている注目種目のため抽選倍率も高いことが予想される。

そこでお勧めは、男子4×100mリレーの予選が行われる8月6日(木)のモーニングセッションに申し込むことだ。リレー種目は特別で、予選からヒートアップする。先日行われた「世界リレー2019横浜」でも観衆は2万人ほどだったが、日本チームには大声援が送られた。

新国立競技場の収容人数は6万8000人。ホームゲームならではの盛り上がりになる。このチケットを獲得できれば、日本が“決勝進出”を決めた喜びを多くの仲間とシェアできるだろう。

■サニブラウン男子200m予選、8/4(火)朝もいい

トラック種目でいうと、桐生祥秀、山縣亮太、ハキーム・サニブラウンらが代表候補の男子100mも注目度が高い。「世界最速」が決定することもあり、世界中から熱視線を浴びる種目でもある。準決勝と決勝が行われる8月2日(日)のイブニングセッションだけでなく、予選のある8月1日(土)のイブニングセッション(女子100m決勝などもある)も抽選倍率は高くなるだろう。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Pipop_Boosarakumwadi)

日本人の活躍度を考えると男子100mよりも男子200mのほうが期待できると見る向きも多い。なぜなら日本が世界に誇る若きエース、サニブラウン・ハキーム(フロリダ大)がいるからだ。

先日、100mで9秒99をマークして話題になった20歳の青年は、ウサイン・ボルトを超える能力を持つ逸材として、大きな期待を集めてきた。2015年の世界ユース選手権は100mと200mのスプリント2冠。200mではボルトの持つ大会記録を塗り替えると、同年の北京世界選手権には男子200mで世界最年少となる16歳5カ月で出場した。2017年のロンドン世界選手権では、男子200mでボルトの記録を約6カ月更新する18歳5カ月で世界最年少ファイナリストに輝いている。

サニブラウンは100mより200mのキャリアが先行しており、東京五輪ではファイナル進出はもちろん、「メダル」の期待も十分にある。男子200m決勝が行われる8月5日(水)のイブニングセッションが日本にとってハイライトになるかもしれない。そして、サニブラウンの快走を生で観るなら、男子200m予選がある8月4日(火)のモーニングセッションが狙い目になる。

■メダル期待、男子棒高跳び決勝の8/4(火)夕方も捨てがたい

他にメダルに手が届く可能性があるのは、男子走り高跳びと男子棒高跳びだ。IAAF世界ランキング(5月14日発表時)では男子走り高跳びの戸邉直人が5位、男子棒高跳びの山本聖途が9位。両種目とも同記録(試技差なし)で並ぶことがあるため、メダリストが3人以上誕生する場合もある。

またメダルを獲得するには日本記録に近い記録が必要となるため、メダルだけでなく、日本記録の瞬間を目撃できるかもしれない。ただ男子走り高跳び決勝は男子100m決勝と同じ8月2日(日)のイブニングセッション。抽選倍率を考えると、お勧めは男子棒高跳び決勝のある8月4日(火)のイブニングセッションだ。

メダル獲得の瞬間に立ち会うことができなくても、日本人アスリートの表彰式を狙う手もある。筆者は日の丸がはためくのを幾度も見てきたが、なんとも誇らしい気持ちになる。この経験をぜひ味わっていただきたい。表彰式はレース直後ではなく、半日後もしくは1日後のセッションで行われる。

■抽選に外れても、競歩なら皇居周辺で「無料観戦」できる

メダルが期待できる種目で抽選倍率の低いスケジュールは、IAAF世界ランキング(5月14日発表時)で日本勢が1位(山西利和)、2位(池田向希)、4位(盒怯儺院砲砲弔韻討い訝忙20km競歩が7月31日(金)のイブニングセッション、サニブラウンの活躍が期待される男子200mが8月6日(木)のモーニングセッション。8月6日は男子4×100mリレー予選も行われるため、競技観戦も充実している。

またマラソンを沿道で生観戦したいと考えている人は多いが、皇居外苑の内堀通りを周回する競歩もチケットなしで現地観戦が可能だ。20km競歩は二重橋前をスタートして1周1kmコースを20周、50km競歩は1周2kmコースを25周する。マラソンと異なり、何度も選手たちを応援することができるし、日本勢は男子20kmだけでなく、男子50kmもメダルの期待が高い。チケットが当たらなかった場合は競歩観戦をお勧めしたい。

■チケット獲得チャンスは2019年秋以降(先着順販売)にもある

第1弾の抽選結果は6月20日に発表予定で、7月2日までに「購入手続き」を済ませないと、当選はすべて無効となってしまう。そして、抽選に外れても、まだまだチャンスはある。2019年秋以降には、購入手続きがされなかったチケットや海外用に割り振られて余ったチケットの「先着順販売」があり、2020年春には販売所での「対面販売」も予定されている。また入手したものの、当日行けなくなったチケットは、希望者に定価で譲ることができる「リセールサービス」も2020年春に開始される予定だ。

いずれにしても東京五輪を観戦するには、陸上競技の知識があるほうがいい。今秋のドーハ世界選手権で世界的なスターを“予習”しておくことで、東京五輪の本番をもっと楽しく観戦することができるはずだ。自国での夏季五輪の開催は一生に一度あるかどうか。観戦する側も悔いの残らないように、しっかりと準備しておこう。

(スポーツライター 酒井 政人 写真=iStock.com)