50年はビルで例えれば建て替えも検討する年数

 このところ盛んに、「高速道路リニューアルプロジェクト」のCMを見る。あれは一体何なのか? 簡単に言えば、NEXCO3社が進めている、老朽化した部分の修繕工事だ。

 日本最初の高速道路は首都高で、最初の開通からすでに57年経つ。首都高は高速道路なのかとう声もあろうが、今回はそれは措く。首都高は交通量がものすごく多いので、その分老朽化も激しく、もう10年以上前から、ボロボロになった桟橋部(1号羽田線東品川付近)がクローズアップされていた。首都高では現在5カ所計8kmの造り直しおよび、計約55kmの大規模修繕が決まっている。

 一方、NEXCOが管理する東名などの都市間高速道路の状況は、首都高よりはマシだが、それでも名神が開通してもう55年になる。築50年のビルがどうなっているかを考えてみてほしい。外壁にはヒビが入るなど、見るからにボロいことが多い。50年も経つと、建物としての商品価値が著しく低下するので、たいてい建て替えられる。

 しかし高速道路は、簡単には造り替えられない。なぜって、造り替え期間中は大幅な交通規制が必要になるからだ。なので、なるべく修繕で済ませたい。50年も経っていて、修繕だけで大丈夫なの? と思うだろうが、構造物は、適切なメンテナンスさえ続ければ、ある意味ずーっと使い続けられる。道路の場合、ビルと違って構造的に単純で強度さえあればいいので、100年だっていけるはずだ。ただ、ある時点で造り直したほうが安上がりになってくる。造り直しか修理かの選択は、その判断による。

大規模工事の予算は利用料金から賄われる

 首都高の場合は5カ所の造り直しが決まったが、NEXCOの高速道路でも、合計240km(すべて橋梁)を造り直す計画だ。これらの区間は、工事中は片側1車線の対面通行にして片側ずつ造り直す。加えて大規模修繕が1870kmとなっている。期間は2014年から2030年という遠大なものだ。

 約3兆円が予定される費用に関しては料金収入でまかなうが、これに関しては余裕がある。NEXCO3社は民営化によるコスト削減が進んだこともあって、償還(建設費の借金の返済)は順調に進んでいる。しかも今後の修繕費を考えて、当初「民営化(2005年)から45年間」と決められていた料金徴収期間を、60年間に延長することが5年前に決定した。

 本当のことを言うと、修理は永遠に続くので、料金も永遠に徴収する必要があるのだが、間もなく高速道路の建設が終わることを考えると、2065年には値下げも可能かもしれない(笑)。

 現在決まっているリニューアル区間は、建設の古いところが中心だ。名神・東名がその代表。名神・東名は日本の物流の背骨だけに長期間車線規制するのは困難だったが、現在は新名神・新東名がかなり開通しているので、順次工事に取り掛かれるようになった。

 リニューアルは、その他全国の路線で行われるが、全体から見るとまだほんの一部でもあり、それほど大きな影響はないだろう。