坂本花織(左)、紀平梨花(中央)、宮原知子(右)【写真:Getty Images】

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来季は「4回転時代」到来へ、ロシア、米国から次々台頭する女子の新星

 フィギュアスケートは2018-19年シーズンがほぼ終了した。選手たちは現在、新しいプログラムの振付を行ったり、海外で合宿したり、アイスショーに出演したりと、来季に向けて始動している。女子は現在、トリプルアクセル(3回転半)、4回転ジャンプを跳べる選手が出てきている。来季はいよいよ「4回転時代」となり、高難度のジャンプを跳べないとトップにはなれないかもしれない。

 女子はこれまで多くが連続3回転を跳んでいたが、大技に挑む選手はめったにいなかった。だが、3月の世界選手権では、今季シニアデビューした16歳の紀平梨花(関大KFSC)がトリプルアクセル(3回転半)を成功させて4位。19歳のエリザベート・トゥルシンバエワ(カザフスタン)が4回転サルコウをきれいに決めて、シニアの国際大会で初めての4回転ジャンプ成功者となり、2位となった。それは新時代の到来を予感させるものだった。

 ジュニアをみれば、4回転を跳ぶロシア勢がいる。世界ジュニア選手権を2連覇した14歳のアレクサンドラ・トルソワはルッツに加え、サルコウ、トーループとすでに3種類の4回転を国際大会で成功させている。今年の世界ジュニア選手権2位の15歳のアンナ・シェルバコワは、昨年12月のロシア選手権で4回転ルッツを決めて優勝した。ともに来季からのシニア参戦が見込まれる。

 さらに下のノービスでは、米国期待の13歳、アリサ・リウが、今年1月の全米選手権でトリプルアクセルをショートプログラム(SP)、フリーで計3本決めてシニアの選手を抑えて女王となった。来季はジュニアで戦う見通しで、選手権や五輪といったシニアの国際大会の年齢制限が現行の15歳のままならば、北京五輪が行われる21-22年シーズンにシニアに昇格できる。紀平、世界選手権6位の宮原知子(関大)を指導する浜田美栄コーチが「(五輪シーズンとなる)最後の1年で急に出てくる子が必ずいる」と以前語っていたが、リウが順調に伸びていけば、当然メダルを争う有力候補になるだろう。

日本勢はどう挑むのか、それぞれの覚悟…紀平「どんどん先に行っておかないと」

 そんななか、女子の日本勢も高難度のジャンプに挑戦する姿勢を見せる。

 紀平は今季、SPで1本、フリーで2本と計3本のトリプルアクセルに挑んできたが、現状にとどまるつもりはなく、来季は4回転を投入する意向だ。今季のシーズン前と、今年1月の米国・コロラドでの合宿でも練習しており、トーループとサルコウはすでに降りたことがある。「4回転の確率がロシアの選手はすごい。私も同じような確率にもっていけるように、まずは1本、1種類、完成できるようにしたい」。サルコウに挑む見込みで、羽生結弦(ANA)のジャンプを参考にする。「無駄な力の入らない、お手本のようなジャンプ。練習に生かしたい」と話す。

 世界選手権5位で19歳の坂本花織(シスメックス)は来季、トリプルアクセルをフリーで1本跳ぶことを目指す。中学時代に練習していたが、15年秋に右足すねを疲労骨折したことでいったん封印。昨年の平昌五輪に出場し、同12月の全日本選手権を制したが、高難度のジャンプを成功させる選手が高得点をマークする現状に、「3回転まででは勝てない時代になると思うので、恐ろしい」と危機感を隠さない。技の重要性を痛感し、「難しいけど、(北京)オリンピックまでには」と取り組んでいく覚悟だ。

 21歳の宮原は、練習で時間がある時にトリプルアクセルに挑戦している。「意識しないと言うと、うそにはなる」と明かし、「諦めずに練習してきたい」と誓う。

 若年の選手が成長期を迎えて4回転を跳べているかは分からない。ただ、紀平は「まだどういう時代が来るか分からないが、練習するだけしておきたい。どんどん先に行っておかないと」。トゥルシンバエワも「今後もこのジャンプ(4回転サルコウ)を頑張っていくつもり」と言う。勝つ道具として高難度の技をマスターしようとする流れは続きそうだ。(福田 智沙 / Chisa Fukuda)