シャボン玉が舞うなか、歌い踊る自分の姿に、輝いていたあの頃を重ねていたのかもしれない。5月中旬、埼玉県内でおこなわれたのは、2020年公開予定の映画『星屑の町』の撮影だ。ヒロインを務める女優・のん(25)にとって、約5年ぶりの映画出演となる。

 ラサール石井(63)らベテラン陣をバックに従えて演じるのは、歌手デビューを夢見る田舎娘役。カメラが止まっても、熱心に振付を確認する姿は、朝ドラで主演を務めて日本の朝を照らした、6年前を思い起こさせる。

 共演するオジサンたちと談笑しながら、平穏に撮影に臨むのんだが、この笑顔の陰で、先月、彼女が渦中にある裁判の判決が下されていた。

 発端は、『週刊文春』が2015年4月に掲載した記事だ。のん(当時、能年玲奈)が表舞台から姿を消した理由は、のんが当時所属していた芸能事務所・レプロエンタテインメントの待遇にあると報じた。

 記事では、2013年以降、のんが置かれていた状況を、「『あまちゃん』時代の月給は5万円」「お金がなく、パンツも買えなかった」「現場マネージャーが次々に替わった」などと詳報。証言者は明らかにされていないが、当事者に「ごく近い人物」を取材したと思われる具体的な内容だった。

 記事に対し、レプロおよび同社社長は「事実に反する」として、2015年6月、発行元の文藝春秋と、当時の同誌編集長を名誉棄損で提訴。その判決が、2019年4月19日に下されたのである。
判決で、東京地裁は文春側に合計660万円の損害賠償の支払いを命じたが、文春側は即日控訴した。

 本名の「能年玲奈」で活動していた若手女優は、2013年、ヒロインを務めたNHK連続テレビ小説『あまちゃん』で、一躍脚光を浴びた。人気女優の仲間入りを果たしたかに思われたが、2015年初めごろから、開店休業状態に。

 のんとレプロの確執は、さまざまなトラブルに発展し、現在も和解はしていない。

 一般的に、記事が「事実無根」であるかを争って、裁判に発展することはままある。だが今回の裁判には、異例の事実があった。以下は4月19日、判決、また即日控訴を受けて、『週刊文春」編集部がホームページ上に公開した弁。

《本件記事は、能年玲奈さんご自身の告発に基づき、掲載されたものであることを、裁判の場で明らかにしています》

 なんと、記事の「ネタ元」の一人は、のん本人だったのだ。

「本人の了承なしに、『文春』が情報源を開示したとは考えにくい。『告発したい』という、のん自身の強い気持ちの表われではないか。これほどの有名人が、匿名で週刊誌に告発し、後からそれが明るみに出るのは前代未聞だ」(芸能プロ関係者)

 名前を明かした理由について、文藝春秋法務・広報部は「取材及び裁判の過程については、お答えしておりません」と回答。のんの現在の所属事務所からは、期日までに回答はなかった。

 のんが心から笑顔を見せる日は、まだ来ない。

(週刊FLASH 2019年6月4日号)