トヨタは「スポーツ用多目的車」「多目的スポーツ車」などと回答

 相変わらず世界的に人気があるSUV。もともとはジープやレンジローバー、トヨタのランクルや日産サファリなどの、悪路に強く、多くの荷物を積めるクルマのカテゴリーで、日本では「四駆」とか「クロカン四駆」と呼ばれるクルマたちのことを差していた。

 しかし近年は、背の低いSUVやクーペスタイルのSUV、ラグジュアリーを重視した高級SUVまで登場し、定義が不鮮明に……。

 そこで、去年12月に5代目RAV4を発売したトヨタに、「SUVとは?」という質問を投げかけてみた。ちなみに、1994年にデビューした初代RAV4こそ、それまでの「SUV=ラダーフレーム」という流れのなかに、モノコックボディで登場したSUVで、いまでいうクロスオーバーSUVの元祖的存在。

 そんなSUVの歴史を変えたトヨタの解答は、「SUVとは、Sport Utility Vehicle(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)の略語です。直訳すると、スポーツ用多目的車、多目的スポーツ車、あるいは多目的な空間を持ったクルマとなります。つまり、仕事からアウトドアレジャーまで、多目的に使えるスポーツ車がSUVです」、とのこと。

 もう少し突っ込んで、「SUVのS、スポーツとは、クルマがスポーティに走るという意味なのか? スポーティなスタイルのことなのか? スポーツをする人のためのクルマなのか?」と訊ねたところ、前述のとおり、スポーティな多目的乗用車の総称として使っているので、とくにトヨタとしての定義があるわけではないという、至極まっとうなお答えが……。

「スポーツ」に馴染みのない日本人にSUVを定義するのは困難

 一応、トヨタの現行車では、C-HR、ハイラックス、ハリアー、RAV4、ランドクルーザー、ランドクルーザープラドが、SUVに当たるということも付け加えてくれた。

 他社では、日産だとジュークとエクストレイル、ホンダはCR-Vとヴェゼル、三菱はアウトランダー、エクリプスクロス、RVR、パジェロ、マツダがCX-3、CX-5、CX-8、スバルがXV、フォレスター、レガシィアウトバック、スズキがジムニー、XBEE、SX4 Sクロス、エスクード、ハスラーといったところが、メーカー公認のSUVとなる。

 本来「スポーツ」とは、日々の生活から離れること、すなわち、気晴らしをする、休養する、楽しむ、遊ぶといった意味の言葉だったが、どれも現代の日本人にはなかなかなじみの薄い言葉なので、「スポーツ」の本質を掴んでいない日本人に、SUVを定義するのは困難といえば困難で、多様化すれどまとまる気配はまるでない。

 言葉は生き物、時代とともに移り変わるので、かつてRVという大きなくくりのなかから、細分化してSUVという呼称が広まったように、やがてSUVもさらに細かく分類され、きちんと定義されるかもしれない。ただ現状では、メーカーがSUVと名乗ればSUV。ユーザーがSUVと認識すればSUV、といった明確さに欠けるカテゴリーになっている。