「テクノロジー業界で働くなら、やはり選ぶべきはシリコンヴァレー? 求人サイトの調査結果から見えたこと」の写真・リンク付きの記事はこちら

全米の都市が、テクノロジー業界の仕事をシリコンヴァレーから自らの地域へと誘致しようと躍起になっている。それは一見すると、難しいことには思えないかもしれない。シリコンヴァレーは最も高コストな地域のひとつだからだ。さらに言えば、世界最大規模にして最大の資産価値をもつ企業数社が本社を構えており、テクノロジー人材の争奪戦が極めて激しい。

ところが、オンライン求人情報サイト「Indeed」の調査によると、シリコンヴァレーにおけるテクノロジー関連の求人数は減少するどころか、むしろ増えているという。

そしてほかの地域でも、やはりテクノロジー関連の求人は増えている。なかでもシリコンヴァレーをはじめ「テックハブ」と呼ばれるテクノロジーの中心地で求人数が急速に伸びており、こうした地域の魅力が際立っているのだ。

「テクノロジー企業は、もともとのお膝元にとどまる傾向があります。テクノロジーが変化するスピードとは違って、お膝元の変化は比較的ゆっくりなのです」と、インディードのチーフエコノミストを務めるジェド・コルコは語る。

最も求人が増えたシリコンヴァレー

今回の調査では、人口100万人以上の大都市圏のなかから8つの地域が選ばれた。インディードのサイトでテクノロジー関連の職種が高い比率を示す都市で、具体的にはオースティン、ボルティモア、ボストン、ローリー、サンフランシスコ、サンノゼ、シアトル、ワシントンD.C.である。

このうちテクノロジー関連の求人が2017年から1年で最も増えたのは、シリコンヴァレーのサンノゼ大都市圏だった。これにオースティンとボストンが続き、シアトルはほぼ横ばいとなっている。

一方で、ワシントンD.C.とその近郊のボルティモアは、テクノロジー関連の求人が縮小した。ただ、アマゾンがヴァージニア州北部に第2本社の建設を計画していることから、この状況は長くは続かないだろう。

とはいえ、テクノロジー関連の仕事を求めているからといって、なにも巨大テックハブに住む必要はない。確かにシカゴやロサンジェルス、ニューヨークなどの大都市圏は、その規模ゆえにテクノロジー関連の求人がオースティンやローリーといった小さな都市より多い。しかし、こうした大都市圏では、全職種に占めるテクノロジー関連の求人比率は低いのである。

この調査では、特定のテクノロジー分野に注力している都市も明らかになった。例えば、デトロイトやピッツバーグは、自動運転技術の中心地になっている。

「ローズ・シティ」とも呼ばれるオレゴン州ポートランドは、テクノロジー関連の求人数ではほかの都市にかなわなかったが、シリコンヴァレーと同じぐらい種類が多岐にわたっていた。この傾向についてはサンディエゴも同様である。

巨大テックハブの優位性

大都市に住みたくないのであれば、テクノロジー関連の求人数の比率が高い小さな都市も選択肢のひとつだ。アラバマ州ハンツヴィル、コロラド州ボルダー、ニュージャージー州トレントン、コロラド州コロラドスプリングズ、フロリダ州パームベイ、ユタ州プロヴォなどが挙げられる。

こうした小規模なテックハブは、大学や軍事施設と密接な関係を結んでいる傾向がある。デトロイトが自律走行車関連の中核地になっているのは、自動車産業の歴史のなかで果たした役割の大きさからだろう。ピッツバーグの場合は、カーネギーメロン大学のおかげだ。

インディードのコルコによると、今回の調査の結果、こうした組織の協力を得ずにテックハブを形成した都市の明確な事例は見つからなかった。「巨大テックハブにおける労働市場と資金調達システムは非常に複雑で、とてもまねできないものです」とコルコは話している。

今回の調査結果でインディードは、企業が優秀な人材を求めるなら、求職者がテクノロジー関連の求人広告をクリックする可能性の高い都市に目を向けることを推奨している。具体的には、アトランタ、オースティン、ダラス・フォートワース複合都市圏、そしてロサンジェルスが挙げられる。これに対して求職者は、ボルティモア、コロラドスプリングズ、ハンツヴィル、ワシントンD.C.など、あまりクリックされない地域の求人をチェックしようと考えるかもしれない。