回転ずしチェーンのスシローは6月の創業35周年に合わせ、「スシロー3連発創業祭」と銘打った販促キャンペーンを実施中(記者撮影)

まさに「絶好調」という一言に尽きるだろう。

5月10日、回転ずしチェーン最大手「スシロー」を展開するスシローグローバルホールディングス(以下、スシローGHD)が2019年9月期第2四半期累計(2018年10月〜2019年3月)の決算(国際会計基準)を発表した。売上高に相当する売上収益は965億円(前年同期比14%増)、営業利益は77億円(同33%増)と、いずれも上半期としては過去最高を記録した。

既存店の伸びは競合を圧倒

業績を牽引したのは既存店の高い成長率だ。スシローの上期の既存店売上高は前年同期比6.9%増を達成。とくにこの1年は、競合のくら寿司やかっぱ寿司が伸び悩む中、高い水準の伸び率を維持してきた(下図)。


既存店の伸びを支えたのが、積極的な販促キャンペーンだ。この上期は、より上質なまぐろを取りそろえた「まぐろ祭」や、通常よりネタを大きくした「てんこ盛り祭」といった期間限定のキャンペーンを相次いで実施。3〜4年前の販促キャンペーンは月1.5回程度だったが、現在は2回に増やした。競合チェーンのある幹部は「スシローさんの攻勢はすごい。矢継ぎ早に手を打っており、なかなか追いつけない」と吐露する。

さらに全国放送・地方放送を問わずメディア露出を拡大したことも追い風となり、上期の既存店客数は前年同期比4.5%増となった。

好業績のもう1つの要因が2018年9月に実施した皿単価の変更だ。それまで180円だった商品を150円に値下げした一方で、期間限定として280円で提供していた皿は300円に引き上げた。「(一部商品を)値下げしたこともあり、お客様の反応も不確定の中でトライしてきた」とスシローGHDの水留浩一社長は振り返るが、ふたを開ければ「少しお金を払ってでも、いいものを食べたいという需要を取り込めた」(同)と話す。

詳細な販売構成比率は公表されていないが、今回の価格帯の変更によって、100円皿以外の売り上げ比率は7%ほど上昇したという。そのほか、今や回転ずしチェーンの定番となったサイドメニューもスイーツを中心に積極投入を続けたことが貢献し、客数と同様に客単価も前年同期比2.3%増となった。


スシローグローバルホールディングスの水留浩一社長は「(業績のよい)このタイミングで守りに入らず攻める」と語った(記者撮影)

好調が続くスシローだが、下期以降も手を緩めることはない。5月14日からは今年6月の創業35周年を記念し、「スシロー3連発創業祭」と銘打ったキャンペーンを立て続けに実施。第1弾では「ほぼ倍ネタまつり」として、人気の中トロを通常の倍近いネタにして100円(税別)で提供している。

また新サービスとして「Google アシスタント」を活用した新サービスも始める。スシローでは土日の夕方に店を訪れると2時間待ちというのも決して珍しくない。これまでは同社の公式アプリなどで事前に予約をすることができたが、今回の新サービスによって運転中など手が離せない状況でも、Google アシスタントが導入されたスマートフォンに向かって話しかけるだけで簡単に予約することが可能になった。

重要となるのは「店の鮮度」

販促キャンペーンに利便性向上策と畳みかけるスシローだが、上期の好業績を受けても通期の業績見通しである売上収益1925億円(前期比10.1%)、営業利益125億円(同7.2%増)は変えていない。水留社長は「(期末まで)まだ5カ月程度ある。楽観はしていない」と話す一方で、「特段、上期の勢いが減速するという見通しはしていない」(同)と述べる。

実際、下期の初月にあたる4月の既存店売上高は前年同月比8.4%増という高い水準でスタートを切った。このペースが続けば、会社側の業績見通しは楽々と達成するだろう。


むしろ、今後の焦点は来年度にあたる2020年9月期(2019年10月〜2020年9月)の動向だ。今2019年9月期については前半にテレビ露出の効果が大きかったことに加え、通年では昨年9月実施の皿単価の変更が1年間貢献した。ただ、来期もテレビ露出が続くかは不透明であることに加え、皿単価の改定効果も今期末で一巡することから、足元のような高い成長率を来期も維持するのは容易ではない。

スシローGHDは、中期経営計画の中で2021年9月期までの3カ年で、国内の回転ずし店を年30店強出店する方針を掲げる。商品のみならず接客といったサービスの質を落とさずに拡大を続けるうえでは、当然人材確保や育成も欠かせない。

水留社長は「すしネタの鮮度は当然大事だが、既存店を伸ばすには『店の鮮度』が重要だ。来店する度に新しい体験、うれしくなるような体験を提供できるか。その繰り返ししか、既存店を伸ばす道はない」と強調する。自ら引き上げたハードルを来年度も超えることはできるのか。“目新しさ”を感じるキャンペーンを継続できるかが、今後の行く末を左右しそうだ。