追うファーブル(左)と逃げ切りたいコバチ(右)。果たして、優勝の行方は。 (C) Getty Images

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 最後のカウントダウンだ。ブンデスリーガ最終節、バイエルンとドルトムントは優勝をかけてそれぞれフランクフルト、ボルシアMGとの一戦に臨む。

 10年あまり、ブンデスリーガで最後まで緊張感が続くシーズンがなかった。ここ最近はバイエルンの独走優勝が6季も続き、ファンは自クラブの結果にだけ一喜一憂するばかりだった。口では「若手選手が育ってきている」「面白い指導者が出てきている」「チャンピオンズ・リーグ(CL)、ヨーロッパリーグ、それに残留争いは熾烈だよ」とそれなりの楽しみを見出してはいたが、誰もがスリリングな優勝争いを待ち望んでいたのだ。

 今季は第33節終了時、首位バイエルンにドルトムントが勝ち点2ポイント差で食いついている。最終節の34節まで優勝の行方が決まっていないのは、実に08−09シーズン以来のこと。久しぶりのドキドキ感にドイツのサッカーファンはこれまでにない盛り上がりをみせている。

 最終節で、どちらも難敵と対戦するという構図が、第三者からすればなんとも興味深い。バイエルンはホームにELベスト4進出のフランクフルトを迎え、ドルトムントはホームにめっぽう強いボルシアMGに乗り込まなければならない。フランクフルトもボルシアMGもCL出場権獲得に向け、是が非でも勝利が必要な状況だ。

 とはいえ過去の統計を見ると最終節でそれまで首位だったクラブが、優勝を逃した例は過去たった5件しかない。最後まで優勝の可能性があるとはいえ、立場的に厳しいのは誰もが理解しているところだ。

 それでも、ドルトムントはまだ優勝をあきらめてはいない。試合前の記者会見でリュシアン・ファーブル監督は「タイトルの行方はまだ決まっていない」とバイエルンに宣戦布告すると、スポーツディレクターのミヒャエル・ツォルクも「こちらが先にゴールを決めて、すぐ相手にプレッシャーをかけたい」とけん制。代表取締役ハンスヨアヒム・バッツケはすでに優勝祝賀会の準備を進めており、あらゆるものを自分たちの力に変えようとしている。

「状況として我々にプレッシャーはない。バイエルンはすべてを失う可能性があるが、我々にはすべてを勝ち取るチャンスがあるわけだ。プレッシャーは南へと押し寄せていく」(バッツケ代表取締役)

 いずれにしてもまず、ドルトムントはボルシアMGに勝たなければならない。すべてはそれからだ。

「(対戦するボルシアMGは)彼らはカウンターが得意だ。だが彼らにしても勝たなければならないという状況だ。それだけに様々なバリエーションに備えていなければならない。我々がトップゲームをすることができるかが肝心だ」とファーブルは警戒心を強めていた。
 ポジティブな要素はある。正GKロマン・ビュルキは負傷から復帰予定。そしてシャルケとのルール・ダービーで提示されたレッドカードで出場停止だったキャプテンのマルコ・ロイスがチームに戻ってくる。バイエルン対策に、入念なビデオ分析も行っているようだ。

 勝たなければならない試合に勝つことができるか。ドルトムントに突き付けられている命題はこれだ。解放されたプレーで、勇敢に勝利を目指す。そしてミュンヘンで何かが起こることを祈る。考えていてもしょうがない。彼らは、やれることをやるのみだ。

 追われるバイエルンにも、負けられない理由がある。フランク・リベリー、アリエン・ロッベン、そしてラフィーニャ、3人のベテランがクラブでの最後の試合を迎える。

 ラフィーニャは記者会見で涙を浮かべながら感謝の言葉を口にした。

「ブラジルにいる母親から、電話がかかってくるんだ。試合の結果や僕の成績なんかは聞いてこない。いつでもチームメイトやスタッフへの立ち振る舞いについてを気にかけている。