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「旦那の財布から、私とは利用した事のないラブホテルのメンバーズカードが出てきました」。こんな体験をした女性が、「不貞の証拠になりますか」と弁護士ドットコムに相談を寄せました。

女性がホテルに問い合わせたところ、登録している生年月日は夫と同じもので、女性との婚約期間も含めて、利用していた履歴が残っていたそうです。ただ、夫に聞いても、「自分のではない。誰かに貰ったのかもしれない。身に覚えがない」と否定するだけだそうです。

そこで、女性は、夫がラブホテルに行っていたという証拠を固めるため、弁護士を通じて、ホテルに対して、利用履歴や利用回数、防犯カメラに記録されているナンバーなどの情報を教えてもらえないかと質問しています。

ラブホテルに情報を出させることは法的に可能なのでしょうか。小坂誉弁護士に聞きました。

●弁護士会照会制度などを活用

「ラブホテルに対して、利用履歴や利用回数、防犯カメラに記録されているナンバーなどの情報を教えてほしいとお願いしたとしても、通常は、顧客のプライバシーを侵害するおそれがあるとして回答を拒否されるはずです。

このような場合、第一の手段は、弁護士会照会制度(弁護士法23条の2)です。これは、弁護士会がラブホテルに利用履歴等の報告を求める制度です。裁判所の関与なしに行えるので、柔軟性と機動性に優れており、初期段階の証拠収集手段として最適なことが多いでしょう。ただし、照会を受けた相手から回答がなされないこともままあります」

他に手段はないのでしょうか。

「第二の手段として、調査嘱託(民訴法132の4、186)があります。これは、弁護士会照会と似た制度ですが、裁判所がラブホテルに対して回答を求めるため、弁護士会照会よりも回答を得られる可能性が高いことがメリットです。

ただし、調査嘱託は、少なくとも夫に対して、訴え提起の予告をした後でないとできないので、こっそり証拠を収集しようとする場合には向いていません。

第三の手段は、文書提出命令(民訴法221条)です。これは、裁判所がラブホテルに対して利用履歴等に関する文書やディスクの提出を命じる制度です。ラブホテルが、この命令に従わない場合、20万円以下の過料に処せられることもあるため、最も強力な方法といえるでしょう。

しかし、基本的に訴え提起後でないとできません。また、文書提出命令が発令されるには、法律が定める厳格な要件をクリアーする必要があります。

このようにいずれの方法も一長一短で求める情報を確実に得られる手段はありません。しかし、こうした制度を駆使して勝訴に直結する決定的証拠を得られる場合もあります。諦めずにできるだけの努力をするべきでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
小坂 誉(こさか・ほまれ)弁護士
大手渉外事務所である西村あさひ法律事務所においてパラリーガル、アソシエイト弁護士として勤務した経歴を持つ。依頼者のニーズを把握して、徹底したリーガル・リサーチに基づく解決策の提供を心がけている。離婚事件を多く手がけている。
事務所名:弁護士法人栃のふたば法律事務所
事務所URL:http://www.tfutaba.com