U18合宿で奥川(左)と変化球の握りの話で盛り上がった佐々木/(C)日刊ゲンダイ

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「高校生の取材体制としては異例。大谷翔平のときも、吉田輝星のときも、こんなのはなかった」

連投がニュースに…大船渡・佐々木の成長阻む周囲の過保護

 報道陣からはこんなボヤキが聞こえてくる。

 18日、春季岩手県大会初戦を迎える大船渡の佐々木朗希(3年)。163キロ右腕を巡るフィーバーは過熱の一途だ。去る3日の住田戦では県高野連が報道各社に異例の取材自粛を要請したが、31社68人が殺到し、3000人近い一般客が詰めかけてパトカーまで出動した。報道陣のひとりが困り顔でこう言う。

「この日、佐々木の取材時間はわずか10分。進路のことはもちろん、尊敬する選手は? という質問にもストップがかかる。名前の挙がる人に迷惑がかかる、というのが理由です。普段から学校の練習取材は禁止ですし、これではまともに記事が書けない」

 大船渡はなぜここまでの取材規制を敷くのか。学校を直撃すると、驚くべきフィーバーの舞台裏が明らかになった。

「先日の予選では、選手が場内のトイレに行くことさえ困難。試合が雨天順延した際には、一般の方から『俺の予定が狂った。どうしてくれるんだ!』とクレームの電話も受けました」

 こう言って苦笑いを浮かべるのは、報道対応の窓口となっている千葉貢副校長だ。

「今年は創立70周年、野球部が活躍すれば学校も盛り上がり、中学生たちが大船渡に入学したいと思ってくれる契機になるかもしれない。メディアの方々と良好な関係を築いていきたい気持ちもある。ただ……。私どもはプロ選手を輩出するような学校ではない。取材対応のノウハウもありません。取材時間が足りないというご意見もあると思いますし、報道に踊らされている部分もなきにしもあらずですが、生徒や一般の方に迷惑がかかれば本末転倒。こちらの想像以上のことが起きているのも事実です」

 地元マスコミ関係者が引き取ってこう続ける。

「学校が周辺住民から『不審者がうろついている』との報告を受けたことがある。佐々木のことを探る記者がいたのです。佐々木の自宅に押し掛けた形跡もあったそうだ。過去には学校の受付を経ずに練習場に潜り込む一般人もいたし、先日はメジャーのスカウトとおぼしき複数の外国人が学校を尋ねてきた。規制をかけなくては手に負えないところまで来ています」

 学校はメディアやプロのスカウトに佐々木の家族との接触自粛を要望、さらに全校生徒に書面でこんな異例の通達をした。

「報道関係者から野球部のこと、佐々木君のことを聞かれたら、『学校に聞いてください』と答えるようにしてください」 これは保護者にも文書で伝えられた。事実上の“箝口令”だ。前出の千葉副校長が言う。

「公式戦は別として、練習に集中するため、学校としては一切の取材機会を設けるべきではない、という意見も出ました。ただ、そうなるとむしろ混乱を招く可能性があるため、公式戦開幕前などのタイミングで取材機会を設けます。わが校としては生徒たちの“プレー”を応援していただければありがたいですし、彼らもきっと、期待に応えてくれると思っています」

■試合に応じて「投球強度」に制限

 当の佐々木は、学校の配慮もあってか、普段通りの高校生活を送っているという。去る15日には春季大会に向けた壮行会に出席。先日、学校の体育館で行われた「生徒総会」では、委員の生徒の意見にうなずきながら耳を傾けていたそうだ。前出のマスコミ関係者が言う。

「U18合宿の紅白戦で163キロを投げましたが、奥川(星稜)らトップクラスの同級生に刺激を受け、張り切って投げたら163キロが出てしまった、そうです。その後、球数制限が話題になっていたこともあり、国保監督が筑波大時代からつながりのある馬見塚医師の診断を受けた。まだ大人の骨ではないとして、試合に応じて『投球強度』に制限をかけることにした」

 春季大会は勝っても負けても甲子園出場に直接の影響はないが、活躍すればフィーバーはさらに過熱しそうだ。