■“知財”抗争の現実を垣間見る、警世の書

2018年12月、中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術有限公司)の孟晩舟副会長が逮捕されたとき、著者は「ついにこの時がきた! と思わず体が震えた」という。

ITビジネスアナリスト 深田萌絵氏

短大卒業後、町工場OLを経て早稲田大学政治経済学部で株式アナリストとなった筆者。リーマン・ショックを機に外資系金融機関から企業再生・民事再生業務に転じた後、米戦闘機F35のチップソリューションを開発した米国人エンジニアとともに起業した。

が、そこで開発した技術を「ファーウェイに盗まれ、会社を潰された」として、その複雑怪奇な経緯をネット上で6年間告発し続けている。

「まだ会社を登記する前なのにファーウェイから連絡が来て、ウチの技術を『ライセンスしたい』と。なんでわかったんだ? って話ですよ。即座に断った後も、取引先にファーウェイ社員が1週間と間を置かずに次々と現れました。商談が潰れ、発売前の新製品や印鑑・通帳が消え、中韓系企業から脅迫も受けました」

警察に持ち込んでも、頓珍漢な対応に終始したとか。

「パスワードは財物じゃない、とか、特許を記したノート盗難の被害額は1冊分の150円、ハードディスクは1枚5000円分、とか……。ウチは特許を10個セットで1億円とかで売っていたのに」

自社は倒産。OL時代から株や為替、金取引で叩き上げた資産もすべて失ったという。

「聞くも涙でしょう?(苦笑)。日本は安全でいい国だと信じて起業したんですけど、実態はまったく逆。何ら対策を施していません。自分の身を守る方法がないんです」

深田萌絵『日本のIT産業が中国に盗まれている』(ワック)

本書が書店に並んだ日、「ウチのマンション出入口を遠目から撮影している中国人が何人もいた」と別のフロアの住民が教えてくれたという。ストレスで歯も4本失う特異な体験を積んだ筆者の眼には、シャープやタカタ、東芝メモリ等々が、その高い技術ごと海外資本に買収される様はまさに「やられっ放し」。今も“赤い棺桶”に足を突っ込んだ大手が数社あると指摘する。

「産業に関して無関心なんですよ、この国は。今から景気をよくしていかないと、というこの瞬間に(消費税)増税でしょ? お金がもっと必要だというときに、総体的な引き締めが始まっています。減税と金融緩和で高い経済成長率を維持している米国とは逆。ちゃんと国を運営しているトランプは、優秀な経営者です」

日米がファーウェイ排斥を公言し、純日本製の監視カメラやスマホが世界で求められ始めた今がチャンス!と筆者。リスクを取って戦う日本企業は現れるか?

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深田萌絵
ITビジネスアナリスト
Revatron社長。バークレイズ・キャピタル証券等を経て現職。チップソリューション、AI高速処理設計などを提供。

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(プレジデント編集部 西川 修一 撮影=的野弘路)