4月25日に会談した金正恩氏とプーチン氏(2019年4月26日付朝鮮中央通信)

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先月、北朝鮮労働者が将来を悲観して命を絶つ悲劇的な出来事があったロシアで、また同様の悲しい事件が起きてしまった。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、現地の高麗人(朝鮮系ロシア人)の情報筋の話として、先月8日のウラジオストクに続いて、今月6日に西シベリアのケメロボ市内の建設現場で働いていた北朝鮮の労働者が自殺する事件が発生したと伝えた。

この労働者は朝鮮人民軍(北朝鮮軍)系の外貨稼ぎ会社からロシアに派遣されていた。情報筋は「若い労働者」としつつも、年齢、出身地などの個人情報は明らかにしていない。

一方、現地の別の情報筋はこの労働者を30代後半と伝えている。

(参考記事:ロシアに派遣された北朝鮮労働者、搾取に苦しみ自殺

情報筋が伝えた自殺の理由は次のようなものだ。

「汗水たらして働いても貯金できず、手ぶらで帰国することとなったこの労働者は、生活苦を悲観して自殺した」

北朝鮮から海外に働きに出るには、当局の担当者にかなりの額のワイロを積まなければならない。そのためトンジュ(金主、新興富裕層)や親戚、友人から多額の借金をするケースがほとんどだ。かなりの額であっても、海外に出て働けば返済は可能だった。さらに、帰国後の商売の元手も貯められるので、数年苦労すれば貧しい暮らしからの脱出することもできた。

ところが、この数年ですっかり風向きが悪くなってしまった。国連安全保障理事会の制裁決議2397号は、自国に滞在する北朝鮮労働者を今年末までに送り返すことを義務付けている。

かつては3年から5年の労働ビザが発給され、滞在期間中にある程度貯金ができたが、今では3ヶ月の研修ビザや観光ビザで出入国を繰り返すしかないため、カネが貯まらない。

それに加えて労働者を苦しめるのは、多額の上納金だ。

「ロシアに派遣された北朝鮮労働者が自殺や脱北などの極端な選択をする理由は、(北朝鮮)当局から押し付けられた上納金の圧迫と、借金に苦しめられる生活苦だ」

賃金を遥かに上回る上納金に苦しめられた北朝鮮労働者は、金正恩党委員長のロシア訪問に希望を見出していた。首脳会談の場で経済協力の約束をロシアから取り付け、上納金を減額してくれることに期待していたのだ。ところが、返ってきたのは減額どころか増額だった。絶望の淵に追いやられたのも無理はないことだろう。

帰国したところで貧しい暮らしは変わらず、借金取りから逃れつつ息を潜めて暮らすよりは、逃亡して働き続けたり、韓国や第三国に逃れたりすることを選ぶ人々もいる。

労働者たちの間では、当局の搾取に対する怒りが高まりつつあるという。

「個人の事情を考えず、外貨稼ぎのノルマを叫ぶばかりの北朝鮮当局を見ると、現代版の奴隷を連想させる」(情報筋)

(参考記事:まるでヤクザ映画!北朝鮮労働者「外国で大乱闘」のド迫力)

ロシアの劣悪な作業環境も、北朝鮮労働者を苦しめている。

RIAノーボスチ通信によると昨年12月27日、カザンの建設現場でエレベーターの穴に落ちた39歳の北朝鮮労働者が死亡した。また、25日にはボロクダの建設現場から落下した1993年生まれの労働者が死亡、11月22日にはモスクワのショッピングモール建設現場の崩落事故に巻き込まれた労働者1人が死亡、2人が重傷を負っている。