(画像:ジャネール・モネイInstagramより)
 毎年5月の第1月曜、ニューヨークのメトロポリタン美術館(通称メット)で開催されるメットガラ。

 日本のファッション誌でも取り上げられる世界的なファッションの祭典ですが、今年は思わず「おやおや?」と二度見してしまう強烈なスタイルが目立ちました。

 なんかハロウィンぽい? そんな印象を持った人が多かったのには、今年のテーマ「キャンプ」に関係がありました。

◆2017年はテクノロジー、2018年はカソリック、2019年は?

 米『ヴォーグ Vogue』の編集長アナ・ウィンター(69)が主催するメットガラには毎年テーマがあり、同美術館のコスチュームインスティテュートではそのテーマに沿った展覧会も開催されます。

 過去2年は「テクノロジー時代のファッション」(2017)、「カソリック・イマジネーション」(2018)。

 前者はシンプルな流線型のドレスが目立ったくらいで、テクノロジーだからといって電飾バリバリだったり、3Dだったりするコスチュームは見当たらず。

 後者はカトリック教会の宗教画から飛び出してきたようなスタイルのセレブはいたものの、テーマそのまま過ぎて逆にそこまで話題になりませんでした。

 ところが、今年のセレブの出で立ちは打って変わって個性派揃いで、翌日のニュースもメットガラの話題で持ち切り。

 アカデミー賞俳優のジャレッド・レトは、昨年グッチのファッションショーで観客を震え上がらせた生首ルック。

 歌手のケイティ・ペリーはシャンデリアからチーズバーガーに変身。カーディ・Bは3万本の羽で縁取られたワインレッドのドレスで登場。

 それぞれ今年のテーマ「キャンプ」を表現したルックですが、文脈を知らなければ「仮装大賞?」と思ってしまっても仕方のない奇妙なものばかりでした。

◆やり過ぎ上等!バカバカしことを真面目に大げさに大金を使って

 お察しの通り、今年のメットガラと野外にテントを張るあのキャンプは関係がありません。

『ヴォックス Vox』によると、スーザン・ソンタグが1964年に発表したエッセイ『ノーツ・オン・キャンプ Notes on Camp』からインスパイアされた「キャンプ」は、定義するのが困難と言われてきた英単語。

 BBCによれば、このワードが最初に『オックスフォード英語辞典』で紹介されたのは1909年のことで、「表情豊かな、誇張された、情感たっぷりの、演劇的な」「女性的または同性愛者。同性愛者の特性やそれに属するもの」という語釈がつけられていたとか。

 その後、長らくゲイコミュニティの隠語となっていた「キャンプ」を、「不自然なものを愛する精神」「過剰な遊び心・不真面目さを持つこと」といったニュアンスに変えたのがソンタグのエッセイ。

 無理を承知でまとめるならば、「キャンプ」とは不真面目なことを真剣に取り組む美学。バカバカしいことや不自然なことにお金をたっぷり使って、過剰なまでに取り組む“やり過ぎ上等”の美学なのです。

◆ガガ様は早着替え!振り切れたセレブの「キャンプ」ファッション

 しかし、さじ加減を間違えたら直ちにネット上に草が生えそうな難しい題材なだけに、最初からテーマを無視して普段のパーティスタイルと変わらない装いで現れたカーリー・クロス(26)のようなセレブも少なからずいたと『USA トゥデイ USA Today』。

 そんな中、さすがと称賛されたのは今年ホストを務めたレディー・ガガ(33)。ピンクの巨大なドレスから黒のランジェリー姿まで4度の早着替えを披露し、沿道に集まった観衆を沸かせました。

 また、アカデミー賞のレッドカーペットでタキシードスカート姿のレポーターとして話題となったビリー・ポーター(49)は、黄金の太陽神になりきり上半身裸の召使いたちにかつがれて登場。

 他にも、だまし絵みたいな7つ目のエズラ・ミラーや全身レインボーカラーのカーラ・デルヴィーニュ、シュールレアリスムの絵画のようなドレスのジャネール・モネイ、半分タキシード・半分ドレス姿のマイケル・ユーリーなど、振り切れたルックスのセレブが目を引きました。

 不真面目でバカバカしく不自然なことをそれぞれ独自に解釈し、資金をふんだんに使ってこれでもかと表現したセレブが集った2019年のメットガラ。あなたが選ぶキャンペストセレブは誰でしたか?

Sources:「BBC」「VOX」「USA Today」

<文/アメリカ在住・橘エコ>

【橘エコ】
アメリカ在住のアラフォー。 出版社勤務を経て、2004年に渡米。ゴシップ情報やアメリカ現地の様子を定点観測してはその実情を発信中。