池袋駅の南側に4月1日に開業した「ダイヤゲート池袋」。ビルの真下を電車が走る(西武ホールディングス提供)

3月25日に池袋駅の南側に特徴的な建物が竣工した。菱形に組まれた鉄骨がビルの外観として目立つ。まるで鉄道のダイヤグラムを見ているようだ。

ビルの名前も「ダイヤゲート池袋」。このビルのオーナーは西武ホールディングスの中核会社・西武鉄道である。

今年の池袋はこの「ダイヤゲート池袋」をはじめ、いくつかのプロジェクトがお披露目を迎える。また、駅周辺では再開発プロジェクトも進む。

こだわりが光るダイヤゲート池袋

「ダイヤゲート池袋」は旧西武鉄道本社跡地に建てられたオフィスビルだ。20階建て・高さ約100mのビルには西武グループのうち西武ホールディングス・プリンスホテル・西武プロパティーズの3社が本社機能を4月に続々と移転した(西武鉄道や西武バスは従来どおり所沢に本社を置く)のをはじめ、貸し会議室を展開するTKPの「TKPガーデンシティPREMIUM池袋」やリージャスが運営するレンタルオフィス「リージャス池袋ビジネスセンター」が入居する。

ダイヤグラムのような見た目をした外壁の鉄骨は「ブレース」と呼ばれるもので、ビルを支えるため構造上でも重要な役割を果たす。そのため、ビル内部は柱のない広々とした空間を実現した。1フロアの貸し室最大面積は2100平方メートル。池袋エリアでは最大だという。また延床面積も約5万平方メートルと池袋エリアトップクラスだ。

何よりも特徴的なのは線路をまたいだビルであることだ。もともとは旧西武鉄道本社の跡地のみを活用する予定だったが、線路を挟んだ向かい側に西武鉄道が貨物輸送に使っていた土地があり、そこも含めて有効活用することとなり、線路をまたぐことになった。当然、難工事にはなったが、これも広々とした1フロアを形成するのに役立っている。

線路上にビルを造ることで生まれたのは広いフロアだけではない。2階には「ダイヤデッキ」が生まれた。ここからは真下を行き交う西武鉄道の列車を眺めることができる。新たな鉄道観察スポットとなりそうだ。

そのダイヤデッキは大規模災害時に最大約2000人を受け入れる帰宅困難者一時滞在施設としても機能する。ダイヤゲート池袋は中間免震構造や72時間非常用発電機をはじめとした信頼性の高い電力供給、上下水のバックアップで防災面にもこだわっている。

そして、ダイヤデッキ横ではある工事が進む。

それはビックリガード上空デッキだ。ビックリガードとはダイヤゲート池袋の横にある西武池袋線のガードのことで、ガードの上空にさらにデッキが造られている。このデッキは将来的に池袋駅を東西に結ぶデッキ整備構想につながる。

1日平均乗降人員が約260万人の池袋駅では地下通路が混雑している。そこで、東西を結ぶデッキをJR池袋駅の南北に2本造ることで快適な移動空間をつくろうというのだ。さらには災害時に発生することが想定される帰宅困難者の一時待機場所にもなる。また、デッキを多目的に利用することで新たな魅力発信スポットにすることもできそうだ。


水戸岡鋭治氏がデザインする「イケバス」(写真:豊島区)

回遊性でいえば、11月には池袋駅周辺を走る電気バス「イケバス」が運行を開始する。これは株式会社シンクトゥギャザーが販売する16人乗りの低速電気自動車「eCOM-10」を利用し、各地のユニークな鉄道車両のデザインを手がける水戸岡鋭治氏がデザインを担当し、赤を基本にしたものとなった。

池袋駅周辺の4つの公園を回遊するルートになる予定で、運行事業者は昨年9月に高速バスを運行するWILLER株式会社に内定した。

こうした低速電気自動車による回遊バスは群馬県桐生市や長野県飯田市などでは運行しているが、東京都内では初めての取り組みとなる。この低速電気自動車によるバスは豊島区の構想するLRTにもつながるもので、多くの人が利用することになれば、LRT構想も具体化していきそうだ。

公園と劇場の建設・整備も進む

そして、この低速電気自動車によるバス路線沿いの公園整備も進む。

2016年にお披露目され、それまでのイメージを一新した南池袋公園をはじめとして、今年11月には東京芸術劇場の前にある池袋西口公園と旧豊島区庁舎跡地に隣接する中池袋公園が整備を完了し、来年にはサンシャイン池袋の東側にある造幣局跡地に防災公園が整備される。

かつ、旧豊島区庁舎跡地には回遊バス運行開始と同じ11月に「Hareza(ハレザ)池袋」が一部開業する。この施設は国家戦略特区の認定を受けた複合再開発により生まれるもので、官民一体のプロジェクトとして事業が行われている。豊島区は2016年に「豊島区国際アート・カルチャー都市構想 実現戦略」を掲げており、このハレザ池袋はそのシンボルとしての役割も担う。

施設はハレザタワー・ホール棟・としま区民センターの3つの建物からなり、11月に開業するのはホール棟ととしま区民センターの2棟だ。ホール棟には1300席を備える芸術文化劇場のほか、ポニーキャニオンが運営する未来型のライブ劇場、ニコニコ動画を運営するドワンゴが運営するサテライトスタジオが入る。従来の文化施設の枠にとらわれず、サブカルチャーにも焦点があたった施設内容は確かに豊島区としてかなり気合いを入れて計画した施設であることが伝わってくる。


中池袋公園とHareza池袋。左からハレザタワー・ホール棟・としま区民センターの3棟から構成される(筆者撮影)

そして2020年夏に開業するハレザ棟は32階建てのオフィス棟を中心とし、ダイヤゲートに続いてまとまったオフィスが供給されることとなる。

このように池袋は文化・芸術・公園といったまちのイメージの一新だけでなく、大規模オフィスビルの竣工に伴うオフィス面積の供給により、ビジネスセンターとしての役割も高めようとしているのである。

これだけでもずいぶんと池袋のまちにダイナミックな変化が生まれるのではないかと思われるが、これまではダイヤゲート含め東口が中心の話だ。西口では今後3棟の高層ビルを中心とし、三菱地所・三菱地所レジデンスが協力事業者となった「池袋駅西口地区市街地再開発」も本格的に動き出す。今後池袋駅周辺は大きく変わっていくこととなる。

池袋のイメージを生かしたまちづくりを

こうした積極的な施策には2014年に豊島区が「消滅可能性都市」として話題になったことも関係している。危機感を抱いた豊島区では「持続発展都市」をテーマに予算を組み、若い女性向けの声を予算に反映させるといった取り組みも行ってきた。こうした再開発やイメージ刷新により、豊島区内への人口流入を誘発し、豊島区の住宅街の人口構成を変えていくことで最終的に豊島区全体へ投資の恩恵を広く波及させていくのが狙いだ。

ただ、こうした池袋の再開発は池袋の従来のよさを崩してしまわないかという不安もある。筆者は2018年2月9日付記事「池袋はいつから『ダサい』と呼ばれ始めたのか」で池袋の特徴および魅力は気張らなくても、いいまちであるところだと分析してきた。だからこそ、こうした再開発で「最先端をいくまちのイメージ」へ変化させていくことは、これまで池袋の魅力としてあったものを逆に削ぐことになるのではないだろうかと考える。

また、同じく東京都心の西側で文化都市のイメージをつくっている渋谷とのイメージのバッティングも気になるところだ。

だからこそ、池袋の魅力は渋谷と違った方向で発信されるべきだろう。せっかくこれまで培われてきた池袋の魅力や特徴があるのだから、それを大事にした再開発・まちのイメージづくりを進めていくことが、豊島区や池袋周辺の再開発主体には求められるのではないだろうか。