改元の祝賀ムードが続く中、消費増税の足音は確実に近づいている(写真:A_Team / PIXTA)

いよいよ令和時代が始まった。10連休の真っ最中に幕を開けた元年は、旅行やら近隣レジャーやら買い物やらで、気前よくお金を使った人も多いことだろう。

御代替わりの祝賀ムードを当て込んだ改元商戦は当分続くだろうが、とはいえ大型連休で散財した反動はボディーブローのように財布に効いてくるに違いない。夏のボーナスシーズンまでは引き締めモードに切り替わる家庭は多いだろう。そして、夏休みを過ぎればいよいよ迫ってくるのは10%への消費増税だ。政府の気が変わらない限り、令和元年の最大の経済トピックは増税なのだ。

個人的には、せっかく今年しか打ち出せない元年記念グッズやらサービスやらができるのだから、それに水をかけるような増税はもったいないと思うが仕方ない。今年は、我々の財布を直撃する要注意トラップが目白押しだ。防御の姿勢をとるためにも、しっかり知っておこう。

コーヒーチェーンは値上げラッシュ

まず、今年の大きな動きはズバリ「値上げ」である。目立つところではビジネスパーソンが日ごろお世話になっているコーヒーチェーンで、早くも値上げが相次いでいる。


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2019年2月には、スターバックスがドリップコーヒーなど定番商品の価格を10円から20円程度引き上げる改定をした。ショートサイズの「ドリップコーヒー」は280円が290円へと10円上がり、しかも税抜き価格のため、消費増税となればさらにアップする。

スタバの値上げニュースを聞いた際、税込み価格でメニュー表示をしていた他チェーンの出方が気になった。増税前に値上げがあるのではと危惧していたところ、その予感は的中してしまう。

ドトールコーヒーは、4月11日から一部商品の価格を改定した。カフェラテ・アイスカフェラテが250円から270円へ、ロイヤルミルクティーが280円から300円へ、ココアが320円から330円へ(※すべてSサイズ)と、10〜20円のアップ。

ただし、今回は値上げの理由を牛乳生産コスト上昇の影響としているため、ブレンドコーヒーなどは含まれていない。しかし、現在220円のブレンドと270円のカフェラテではあまりに差がつくため、引き続き動向を注視したい。

同様に4月19日より値上げを実施したのが、タリーズコーヒー。こちらは本日のコーヒー を320円から330円へ、カフェラテを360円から370円へ、カフェモカ430円を440円(※すべてSサイズ)など、やはり10円から20円ほど上がった。

企業側は値上げの要因を主にはコスト増と説明しているが、やはりそれには秋の消費増税が絡んでいるとみてもいいだろう。メニュー記載の価格を税込みで見せていたチェーンは、先に手を打ったのではないか。

とくに軽減税率の対象外とされた外食にとっては、増税直前には二重に価格を上げにくい。3月には「カレーハウスCoCo壱番屋」でも東京23区内の店舗などで一部商品を21円値上げした例もある。

もし、ほかにも税込み表記でメニューに価格を出していたり、税込み価格を切りのいい数字にまるめている外食チェーンがあれば値上げに要注意である。

各コーヒーチェーンは自前のプリペイドカードを発行しており、その利用客にはポイントを付与したり、割引したりの優待サービスを実施している。それらでささやかな防衛を図るしかないか。

ふるさと納税も6月からはオトク度は厳しくなる

さらに、令和から制度が変更になるものが、ふるさと納税だ。

返礼品競争の過熱ぶりに端を発し、国が返礼割合を3割にしろと通達しても言うことを聞かない自治体に業を煮やし、とうとう国は地方税法の一部を改正し、新しい制度を創設した。それが、ふるさと納税の対象となる自治体を指定制にするというものだ。

今後、各自治体は、「うちをふるさと納税の対象にしてください」との申請を行う必要がある。それに対し、総務大臣が新しい基準に適合したと認めた地方団体を指定することになる。さらには返礼品についても細かい基準がある。

・返礼品の返礼割合を3割以下とすること
・返礼品を地場産品とすること

これを守らない自治体は指定してもらえない。ふるさと納税で人気の返礼品といえば、肉・海産物・米だったが、これまでは何とか理屈をつけ、自由に設定できた返礼品も厳しくチェックされ、それをクリアしない自治体はふるさと納税の対象団体にはなれない。

これまで節約を兼ねて、返礼品の米をあてにして寄付をしていた家庭もあるだろうが、6月以降は注意が必要だ。また、指定からもれた自治体にうっかり寄付をしても、ふるさと納税の控除対象にはならないので、そこも注意点。

ちなみに、これまで国の通達を無視する高還元率返礼を続けていた静岡県小山町、大阪府泉佐野市、和歌山県高野町、佐賀県みやき町の4市町は、6月からはふるさと納税対象から外される方針だという。さらには、制度への参加を辞退した東京都も対象外となる。

なお、この指定制度、念の入っていることに毎年申請が必要とのこと。つまり、1年間ルールを守っていないと、来年からはダメですよと言われかねないのだ。なんとも厳しい話だ。

しかも、オトク度を過激にアピールすることもできなくなる。

「お得」「コスパ最強」「ドカ盛り」「圧倒的なボリューム」……なんてキャッチコピーは問題ありとされ、ちゃんと守らないと、これまた翌年の申請時に問題視されるらしい 。

節税面と返礼品とにオトクさを感じていた人は、その期待はややダウンしそうだ。確かに、返礼品アピールばかりが目立った平成のふるさと納税はやりすぎだったかもしれない。ネットショッピング感覚で自治体を選んできたわれわれの側にも、むろん反省すべき点はあるだろう。

しかし、政府を怒らせるとずいぶんイケズなことされるんだなと感じた制度改正ではある。

鳴り物入りのポイント還元策にも注意

そして、令和元年最大の懸念といえば消費増税だ。その対策として打ち出されている、いわゆるキャッシュレスでのポイント還元策だが、これについても注意すべき点がある。

ポイント還元事業については「中小店舗が5%」などといわれているが 、この中小・小規模事業者の範囲は小売業の場合で資本金が5000万円以下、従業員数が50人以下などと定義されている。

ただし、これに当てはまれば即OK、というわけではない。この事業に参加したいという小売店や企業は、事前に手を挙げ登録することが必要なのだ。それも、自分たちが導入している(または導入する予定の)キャッシュレス決済事業者を通じての代行申請となる。

しかも、そのキャッシュレス事業者自体も、このポイント還元の取り組みに参加している業者でなければならない。決済事業者も、消費者が実際に利用する店舗や企業側も、事前に登録する必要があるわけだ。消費者は、単に小ぢんまりした小規模の店でカードで買い物すれば、それだけでポイント還元されるというわけではないのである。

決済事業者の登録はすでにスタートしているので、経産省のスケジュールによれば5月以降に中小店舗の登録が開始され、私たちがどこが対象の店なのかを知れるのは7月以降になりそうだ(対象となる店舗にはポスター掲示などが行われる予定だ)。

また、ポイント還元の方法も決済事業者ごとに異なる可能性がある。従来のように支払金額に応じたポイント付与のほかにも、支払いの時点でポイント分をその場で値引きする、代金を銀行口座から引き落としする際にポイント分を差し引くなどのパターンがあるからだ。消費者も単純な5%還元だけと思っていると戸惑うことになりそうだ。

さらにいえば、こんな危惧もある。今回の還元策は2019年10月1日〜2020年6月30日までとされているが、この事業の予算額は約2800億円を計上している。この原資で十分かという点だ。

記憶に新しいところでは、昨年12月に行われたPayPayの「100億円あげちゃうキャンペーン」は10日間で還元額が上限に達し、終了してしまった。その28倍となれば約9カ月との計算となり還元予定期間ぎりぎり持ちそうだが、さてどうだろうか。PayPayはあくまで民間企業だから予算はお好きに決めていただいていいのだが、今回使われるのは税金である。むやみに追加で予算投入というのもいかがなものかという気もする。

この事業のポイント還元は、家や車の購入は対象外、換金性の高い切手やプリペイドカード、宝くじなども対象にならないが、それでもあれやこれやと悪いことを考える輩はいそうである。もし、このポイント還元策の恩恵にあずかりたいなら、事前の準備と早めのお買い物が安心かもしれない。

むろん、われわれにとっては消費税が上がらないのが一番だ。令和のお祝い景気が続くためにも、ぎりぎりまで諦めないでいたいのが本音である。