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ライブドア「錬金術」とは何か、その実態を考える

2006年01月18日16時30分 / 提供:PJ

pj
16日、耐震偽装問題の証人喚問や、11年目の阪神淡路大震災の日を翌日にひかえていたが、マスメディアは東京地検特捜部によるライブドアへの捜索差し押さえのニュースを大きく取りあげた。ところが、限られた紙幅・時間枠の中で解説が不十分なのもあって、それら報道の中ではすっかり、「錬金術」という言葉が一人歩きしている感がある。そこで、ライブドアの「錬金術」とは何であるかを考えてみたい。

企業の合併・買収(M&A):資産・利益拡大の原動力
 ライブドアは、いままで積極的なM&Aを仕掛けてきたが、そのM&Aには特徴がある。それは、割安な会社を買収するということだ。連結会計処理が行われている現在、親会社の資産として計上されるのは、保有する子会社株式の価値ではなく、子会社の資産価値になる。

 好調な会社を買収すれば事業のリスクは低いが、そのぶん、その買収対象会社の資産よりも高コストになる。この割高な部分を、通称「のれん代」という。このような割高な買収をする会社の例としては、楽天があげられる。楽天は、過去数年間連続して最終赤字を計上していたことがあるが、これは、「のれん代」を償却するためだ。

 一方、ライブドアが好んで行ってきた、割安な会社を買収する手法によれば、買収しただけで差益が出る計算になる。この差益分をいわゆる「逆のれん」という。もっとも、割安な価格で買収できるのには理由がある。たとえば、買収対象の会社が、業績不振であったり、業界二番手以下であったりということがあげられる。実例としてあげるなら、セシールが業績不振の会社、ベストリザーブが業界二番手以下の会社だ。

M&Aの対価:自社株式
 いくら割安な会社を買収するとしても、買収対象会社の株主に対価を払う必要がある。そこでライブドアが用意した対価が、ライブドア自身の株式だ。

 買収に成功すれば、ライブドア自身の連結資産が増える。買収に成功した場合の資産増加分を引き当てにして、自社株式を対価にするのである。これは、買収対象会社の価値を担保にして買収資金を調達する、いわゆるレバレッジドバイアウト(LBO)の手法と若干の共通点があるともいえるだろう。しかも、割安に買収できるのなら、買収対象会社の資産よりも少ない価値の株式ですむから、その分だけ一株当たりの価値が増える。それは、株価を上げるための原動力にもなる。

買収される側の思惑
 M&Aは、買収される側の株主との取引によって行われる。では、ライブドアに買収される側はなぜM&Aに応じるのだろうか。理由としてまず、意外と高い対価で買収してくれるからということがあげられる。前に述べたようにライブドアは割安に買えそうな会社を選別しているから、若干高めの対価を提示する余裕がある。売る側としては、「そんなに高く買ってくれるのなら」と思うのである。

 つぎに、買収するライブドア自身が好調で、買収された会社にも良い影響を与えるのではないかという予測がある。放っておいても伸びないのなら、ライブドアと手を組んで会社を伸ばしてもらおうという意図だ。では、会社を売り渡した旧株主はどうなるのかといえば、対価としてライブドアの株式を手にすることになる。この株式は持ち続けてもいいが、市場で売却して換金することもできる。

株式市場:買収資金の最終的受け皿
 そこで、M&Aを完全に成功させるには、株式市場でライブドアの株式が妥当な価格で売却できなければならない。そこで、ライブドアとしては、いかにして自社株式の買い手を増やすかということに腐心することになる。そのためのアイデアとして、いわゆる「インベスタマー戦略(自社個人顧客に自社株式を買ってもらう戦略)」があげられるだろう。機関投資家に頼るより、いままであまり株式投資をしていなかった個人をターゲットにして株式を買ってもらった方が伸びしろが大きい。

 しかし、1株が数10万円や100万円を超えるようであれば、個人にはなかなか買ってもらえない。そこで株式分割によって株式の単価を安くし、個人投資家などにとってより買いやすくしたのである。したがって、ライブドアの「錬金術」の資金源は、ライブドア株を買う投資家たちなのである。

M&A戦略が引き起こした問題
 この「錬金術」はいいことばかりではない。たとえば、ライブドア自身が株価対策に苦労することになったことがあげられる。投資家に株を買ってもらうために、頻繁に開示情報やIRニュースを出して、株式の買い材料を提供した。そして、さらなる問題が、現在の証券取引システムにおいての、株式分割による弊害である。それは、株式分割の期日と、実際に分割後の株券が交付される日とのタイムラグに起因する。

 株式分割をすれば、分割日に株価は分割後の株価になるので、安くなった分だけ買い注文は増える。しかし、株券を発行するのが原則である現行商法のもとでは、分割後の株券を作って交付しなければならないので、分割した日に分割後の株券が交付されるわけではない。たとえば、株価1万円の株式を10分割するとする。分割日に株価の基準は1000円になるので、買い注文は単純計算で10倍になる。

 しかし、分割日には株券が交付されていないので、1株あたり9株をもらえるはずの株主はまだ1株しか手元にない。そのため、売り注文は、まだ増えない。そうなれば需給バランスの混乱によって、株価が急騰する。しかもこの現象が広く知られてしまってからは、株主はなおさら売りしぶるようになってしまい、株価の高騰はさらにひどくなるようになった。なお、このタイムラグの問題も、将来的には株券の電子化によって解消されることになると思われる。

 そしてこの株式分割による株価高騰は、既存株主には稼ぐチャンスになる。その既存株主には、M&Aで会社を売り渡した株主も含まれるからなおさら、この株式分割の手法は株価操作のために恣意的に利用される危険がある。ライブドアには、M&Aという経営戦略上で必要があったとはいえ、株式分割によって株価をつり上げて既存株主を儲けさせたのではないかという疑いがもたれてしまうのだ。

 こうやって見ると、ライブドアに嫌疑がかけられた背景が見えてくるだろう。投資家の人気集めの過剰化や株式大幅分割。ライブドアは少々急ぎすぎたのかもしれない。【了】

※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 谷口 仁志

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