『ケトルVOL.48』(渋谷系特集号/太田出版)

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平成に流行した音楽のムーブメント「渋谷系」は、音楽だけでなくファッションやライフスタイルにまで影響を与えたのが大きな特徴。渋谷系ファッションといえばセント・ジェームスにアニエス・ベー、ベレー帽にボーダーシャツのフレンチスタイル……というイメージが先行しますが、その頃登場したストリートブランドの存在を忘れてはいけません。

例えば、1993年に原宿でアンダーカバーとNIGOが始めたブランド「A BATHING APE」や、1994年に立ち上がった「X-girl」は、未だに若年層から多くの支持を集める人気ブランド。A BATHING APE は各アイテムが少量しか生産されず、レアなグッズを求める人びとがお店に殺到しました。

X-girlは、立ち上げに関わったアメリカのバンド・SONIC YOUTHの女性ベーシストであるキム・ゴードンや映画監督のソフィア・コッポラの影響によるブーム。音楽や映画など、複数のカルチャーが密接に関わり合っていた時代だからこそ、ジャンルを掘り下げるときに付随するファッションも憧れの的となっていたのです。

流行したブランドについて、カジヒデキさんは「好きなアーティストが着ていたモノの価値が高かった」と述べています。

「プライマル・スクリームのボビー・ギレスピーと小山田圭吾くんはファッションリーダーでしたね。小山田くんのファッションを真似して、僕もゴルフ帽子を被ったりしていましたし。その頃に印象として残っているのは、プライマルが初来日した時にボビーが来ていたTシャツ。彼はその日、ヒステリックグラマーの“G”と書かれたTシャツを着ていたんです。

ライブ後、それを見たファンはヒステリックグラマーの店舗に一斉に電話。東京の在庫はいち早く無くなりましたよ。僕も地方の店舗で買ってもらったり。ボビーが髪を切った時も、やっぱりみんな真似しましたね」

ネット通販やSNSも無かった時代だからこそ、「見る前に飛べ!」が基本スタンス。現場で“これだ!”と思ったら、すかさずメモれー! コピれー! という反射神経こそ、トレンドの先端をゆく鍵なのです。

◆ケトルVOL.48(2019年4月16日発売)