ダルいシーンも多いけどゲーム・オブ・スローンズを見続けてしまう理由
はじめまして、普段は漫画や文学作品の書評をしているライターの花森リドです。アメリカのテレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ(以降GOT)」がいよいよ最終シーズンを迎えました。もともと、私はテレビドラマをほとんど観ません。オンタイムも録画もぜんぶ面倒なので、NetflixやHuluなんかのオンデマンド配信でほんの少し観る程度です。それすらほぼ続かない。なんでかというと、大抵の場合、途中からどうでもよくなるんですよね、キャラクターや世界観が。しかし、飽きる前にクライマックスを迎えるので映画はたくさん観ます。


そんなテレビドラマ無関心勢だった私が、GOTの最終シーズンをなるべく早く観るためだけにスター・チャンネルに入りました。なぜ、GOTだけはこれほどどっぷりとハマってしまったのでしょうか? 作品の魅力を私なりにお伝えします。

はじめに、GOTは小説「炎と氷の歌」をもとにしたファンタジードラマです。騎士も姫もドラゴンもゾンビも権力闘争もセクシーなシーン(無意味におっぱいを出している女性)も山ほど出てくるなんでもありな世界観。この風呂敷の広さにより、「飽きない工夫」がたくさん仕込まれています。エロとグロの表現が強めなので、大人のためだけのドラマです。

尋常じゃないキャラクター数

まず、キャラクターが多いです。ソシャゲのような勢いで次から次へと現れます。第一話で主人公っぽい一家が出てくるんですが、この時点で彼らは6人兄弟なんですよ。しかも五人がそれぞれマイ狼を飼い始めたり、他国の金髪バリバリのド派手な王家が一家総出で訪ねてきたりで、とりあえず開始数十分で「誰が誰だよ」となります。でも、心配無用です。シーズン1が終わる頃には、名前こそアヤフヤでも顔と個性はバッチリ頭に入ります。なので、シーズン1は「キャラクター紹介のシーズン」と割り切って、ダラダラと鑑賞することをオススメします。話についていけなくても、みんな同じ顔に見えても、大丈夫です。次第にヒゲ面の男たちの見分けがつくようになってきます。

場面転換が多い
濃いめのキャラクターが無数に出てくるGOTでは、国もたくさん出てきます。同盟国も敵対国も設定し放題。何よりビジュアルの振れ幅が大きくなります。砂漠だったり雪山だったり海だったり花園だったりゴージャスな王宮だったり......。

これらの国々のお話が同時進行するため、頻繁に場面転換が入ります。よって、「ダルいな」と思うシーンや、「いけすかねえな」と思うキャラクターが出てきても、そのシーンは数分で終わります。景色とキャラクターがガラッと総入れ替えされるので、飽きません。一つのドラマの中でチャンネルをザッピングしているような状態です。私の場合、シーズン2で出てくる「スタニス」という男のパートがダルかったです。謎の女と宗教にハマるちょっと無能な王様で、とにかく顔がパッとしない冴えない男だったのです。

すごい勢いでみんな死ぬ
個性強めのキャラクターが大量に出てくるので、最低でも一人くらいは「お気に入り」ができます。で、ここからが本番です。あなたの「推しキャラ」は、数分後にアッサリ死んでしまうかもしれません。普通のドラマならば「そこそこ後半まで頑張るだろうなあ」と思わせる面白くて重要なキャラクターでも容赦無く急に死ぬんですね。かなりショックを受けます。なので、「頼む、この人だけは死なないでくれ〜」と念じながら観続けることに。

「憎まれ役」の死にっぷりが派手
GOTでは、ちょっとオーバーなくらい悪役が悪役です。そして、悪役は遅かれ早かれ「スカッ」とする最期を遂げます。ネタバレになるので詳細は控えますが、よくこんな死に方発明したよな〜と思う死に方ばかりです。なので、「ひどい!」「なんてやつだ!」と画面に向かってブリブリ怒りつつ「こいつは、いつ、どんなふうに死んでしまうのかしら......」と言う私たちの期待を一身に背負っている悪役たちが、めっちゃ輝いて見えてくることも。

シナリオや演出が優れたドラマは数多いですが、GOTの「やめられなさ」は、この辺りにあるのではと考えています。「まだ観ていない人が羨ましい」と心から思います。残りわずかなGWはGOTのダラダラ視聴で過ごしてみてはいかがでしょうか?

おまけとして独断と偏見で私のお気に入りのキャラクターを紹介します。

ジョン・スノウ
本作のメインキャラクター。ジブリ作品で言うところの「アシタカ」のような男。剣技に優れ、奥手だが強い信念を持っている。で、行く先々でちょっと女にモテるが、本人はガツガツしておらず、それゆえ大切な人をポイっと置き去りにすることも。この置き去り劇が強烈すぎたので、我が家では「ポイ太郎」という不名誉かつダサいあだ名で呼んでいます。ポイ太郎は最終的に何をポイするんだろう......。(パンチ強めな女にモテるところもアシタカっぽい)

デナーリス
最初は脱ぎ要員かなと思っていたらどんどん着衣のシーンが増え、同時にどんどんたくましく偉くなっていった野心家の女王。二つ名が多すぎる。「良き妻」「良き母」「身内のトラブルで苦労する」「いつのまにか周囲が引くほどタフな判断を下す女になる」といったあたりで、ファンタジー界のヒラリー・クリントンのような存在です。

サーセイ
悪女の極みな女王。欲深く、常にワイン片手に悪いことを考えています。各国を旅するキャラクターが多い中、王都から一切動かない固定キャラ。そして、結婚生活で大変ひどい目に遭った気の毒な女性でもあります。こりゃ酒浸りの悪妻待った無しだわ、と私は密かに応援しています。彼女が体験した「ガッカリ初夜」をツイートしたら、5万RTは堅いはずです。