中国・青島に到着した海自の護衛艦「すずつき」/(C)共同通信社

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■中国海軍の観艦式に7年ぶり親善訪問

安全保障で迫られる乏しい3択のリセットが日本の起点に

 4月23日、中国海軍は山東省青島沖で創設70周年記念の観艦式を行い、海外13カ国から18隻が参列、日本の護衛艦「すずつき」(満載6800トン)も参加した。米国は中国が南シナ海で人工島を築き、軍事基地化したことを非難、「航行の自由作戦」を行っているから、米艦は観艦式に参加しなかった。

 海上自衛隊が米海軍に従わないのは珍しい。「政府から、日中関係改善のため観艦式に出るよう強く求められた」と海上幕僚監部の幹部は言う。

 今年10月には海上自衛隊が観艦式を行うが、韓国海軍は招待しない。昨年10月、済州島沖の韓国の観艦式の前に、「艦旗(旭日旗)は掲げるな」と言われ海上自衛隊は「無礼だ」と参列を拒否したからだ。中国は招待され、今回の「答礼」として中国軍艦が参加するのはほぼ確実だ。

 日本では、中国の海洋進出に対し、「日米韓の連携を強化し対抗すべきだ」との冷戦時代的発想が強かったが、逆の現実が生じたのだ。

 かつて2007年には中国の駆逐艦「深圳」(同6100トン)が東京港を親善訪問し、翌年には日本の護衛艦「さざなみ」(同6400トン)が中国南海艦隊の根拠地、湛江を訪れ、11年には同「きりさめ」(同6100トン)が北海艦隊の基地、青島に入った。だが12年に日本が尖閣諸島を国有化したことで中国で反日デモが発生、親善訪問どころではなくなった。

 今回の自衛艦の訪中は7年4カ月ぶりで、海上幕僚長・山村浩海将も青島に飛び、中国海軍高官らと交歓した。日本の防衛当局はこれを契機に相互訪問を復活させ、信頼醸成を図りたい意向だ。

 6月28日から大阪で開かれるG20首脳会談で日本が議長国となる。会議が紛糾し、共同宣言もまとまらなければ議長の安倍首相は面目を失うから、米国の意向を気にしつつ、中国との関係改善も図らねばならない。トランプ政権が貿易交渉などで日中に不当な要求をすることを牽制するには、中国との関係も重要だ。

 安倍首相は元来親中的で06年9月に首相に就任した12日後にまず北京を訪れ胡錦濤主席(当時)と「戦略的互恵関係」で一致した。14年11月には尖閣問題で習近平主席と会談。「双方が異なる見解を有することを認識」との玉虫色の表現で事実上、領土問題を棚上げした。

「一帯一路」構想に対しても17年から講演などで協力の意向を表明。昨年10月の日中首脳会談では52案件での協力に合意している。今年の4月25日からの「一帯一路」に関する首脳会議には、米国への忖度からか閣僚は出さず、中国との関係に熱心な二階俊博・自民党幹事長を首相特使として、親書を託した。

 さる4月14日からの「日中ハイレベル経済対話」の後、中国の王毅国務委員長・外相と河野太郎外相は異口同音に「日中関係は正常な軌道に戻った」と語った。「すずつき」の観艦式参列は日中関係を尖閣海域での日本巡視船と中国漁船の衝突事件以前の姿に戻す効果があり、同艦は日中関係好転の象徴となりそうだ。

(田岡俊次/軍事評論家、ジャーナリスト)