ヒーローの自覚が芽生える姿に共感。菅田将暉が思い出した『仮面ライダー』での感覚

ドラマ『3年A組 -今から皆さんは、人質です-』で、生徒を人質にとりセンセーショナルな方法で命がけの“授業”を行う、ダークヒーローめいた教師を演じた菅田将暉。

次に挑んだのは、全米で初登場1位を記録したアメコミ映画『シャザム!』の日本語吹き替え版。福田雄一監督の演出で、見た目は大人、中身は子どもな悪ノリ全開のヒーロー・シャザムをコミカルに演じた。

彼のヒーローとしての始まりは、2009年の『仮面ライダーW』。当時のことを「初めての現場で右も左もわからず、とにかく無我夢中でした」と振り返る。

劇中では、シャザムに英雄としての自覚が次第に芽生えてくるが、『仮面ライダー』で俳優デビューを飾った菅田もその感覚には共感したようだ。

撮影/ヨシダヤスシ 取材・文/福田恵子 制作/iD inc.

ボードゲーム『枯山水』に、子どものように夢中になった

日本語吹き替え版の演出を手がけた福田雄一監督から、直接オファーがあったそうですね。
予告編を見て、「うわっ、これ面白そうだな」って思ってたんですよね。そうしたら福田さんからオファーが来てビックリしました。

4月19日公開で3月にアフレコをしたので、こんな公開直前に吹き替えをするんだっていう驚きもありましたし。でも、福田さんについていけば絶対に面白い!っていう安心感があったので、今回も監督の演出に身をゆだねようと思いました。
シャザムはユーモアたっぷりで愛嬌のあるキャラクター。福田さんは、「少年のような可愛げとカッコよさを持っている」ということで菅田さんを起用されたそうですが、ご自身はシャザムと似ていると思いますか?
どうなんでしょうねぇ……。見た目は大人で中身は子どもっていうキャラクターなので、似てたらちょっとマズいのかなって思いますけど(笑)。でもあまり否定できない感じもあるというか。
あまり自分が大人だという感覚はない?
逆に何かしたときに「大人だな」って感じるときのほうが多いから、きっとまだ子どもなんでしょうね。

16歳からこの仕事をやっていて、成人式にも出席できなかったですし。成人式に出ていれば、少しは大人になったんだっていう感覚が持てたかもしれないですね(笑)。
最近、子どものように夢中になったことはありますか?
何だろうな。常に熱くなろうとしてますけどね。ドラマもそうだし、映画もそうだし、洋服作りもそうだけど。

…あ、京都を舞台にした日本庭園を作るゲーム、知ってます? 誕生日に同じ事務所の(ダンサーの)TAKAHIROさんにもらったんですよ。
ボードゲームの『枯山水』ですか? 庭を作って芸術点を競うゲームですよね。
それです! 謎のしわっしわのおじいちゃんのキャラクターが描いてあるやつ。

最初は「また不思議なものをくれたなぁ」って思っていたんですけど、自分の思惑通りにいかないところがめちゃくちゃ面白いんですよ。前の日の夜から始めて、次の日の朝9時までやってしまいました(笑)。僕の周りではアナログゲームが流行ってますね。

シャザムを見て、『仮面ライダーW』の頃を思い出した

シャザムを「可愛い」と思うところは?
すごく純粋なところ。敵にもシャザムの中身は子どもだとバレていて、「まだ子どもだもんな。何歳だ、今?」って聞かれて、「15歳!」って口をとがらせて言うんです。そんな純粋なヒーローっていないなと思って、可愛かったです。
アフレコでは、「『仮面ライダー』のときを思い出して」と福田監督からディレクションがあったと聞きました。
そうですね。僕としても『仮面ライダー』のときの経験が活かされたと感じていて、とくにアクションシーンの勢いやタイミングみたいなものは、雰囲気が掴めてよかったなと思いました。

シャザムが敵と劣勢の状態で戦っていて、反撃したときの「どんなもんだっ!」みたいなノリもそうですし。
アクションシーンはたくさんありますよね。
こんなこと初めてだったんですけど、初日の叫ぶシーンで声が枯れてしまいました。普段演技をしているときに声が枯れることなんて、絶対ないのに。

今回は、なるべく(シャザム役の)ザッカリー(・リーヴァイ)さんに合わせたいなという気持ちで声を当てにいってしまって。気持ちと声帯のバランスがうまく合わなかったんだと思います。
シャザムの姿を見て、ご自身が『仮面ライダー』に出演していた頃を思い出すこともありましたか?
シャザムが急にヒーローになったように、僕も16歳で急にヒーロー(仮面ライダー)になったんで、その頃を思い出しましたね。当時は、初めての現場で右も左もわからず、とにかく無我夢中でした。経験を通して、だんだんヒーローとしての自覚が生まれてくる感覚はすごくわかります。

男の子ってちゃんとカッコつけたい場面があるんですよ。それが好きな子のためなのか、家族なのか自分なのかわからないですけど。だからやっぱり“少年”と“ヒーロー”のセットは夢があるなって思いますし、ワクワクしますよね。

『銀魂』新八役の阪口大助は、師匠のような存在

アフレコは声優キャストさんと一緒だったとうかがいました。フレディ役の阪口大助さんとの掛け合いが多かったと思いますが、いかがでしたか?
新八同士なので、再会できて嬉しかったです(阪口さんはアニメ版、菅田さんは実写映画版の『銀魂』で志村新八を演じた)。

新八を演じるにあたって阪口さんの声をずっと意識していたので、僕にとって憧れの存在というか、師匠みたいな方なんですよね。

アフレコ中、監督がOKを出したんですけど、阪口さんが「別のニュアンスでもう1回やっていいですか?」っておっしゃっていて。そのときに、ぼそっと「このままだと後悔しそうだから、嫌なんだ……」ってつぶやかれたんですよね。
プロの言葉ですね。
それが、新八がたまに見せる本気のときの言い方と一緒で、「カッコええなー!」ってテンションが上がりました。
魔術師役の杉田智和さん(※アニメ『銀魂』では主人公の坂田銀時役)の印象はいかがでしたか?
杉田さんはセリフを発するだけで空気がぴしっと締まるような感じで、魔術師の重厚感がありましたね。まるでクラシック音楽を聴いているみたいで、聞き入ってしまいました。
そのほかにキャストさんとのやりとりで印象に残っていることはありますか?
シリアスなシーンで、俳優さんの呼吸のタイミングに合わせてセリフを言うのが難しかったんですけど、メアリー役の平野 綾さんに「役者の胸を見たら、呼吸のタイミングがわかるよ」とアドバイスをもらって、「あ、なるほど」と思いながら臨みました。
プロの技術を目の当たりにして、学んだことも多かったのでは?
いやぁ〜、正直、学んでいる余裕はあまりなかったですね。

素人の僕からしたら、声優のみなさんはとにかく作業が速いんですよ。僕は2、3回全体の映像を見ないと、どこでセリフを言うのか把握できないんですけど、プロの方は初見で全部わかってるんですよね。

お芝居の表現も完璧なんで、ついていくのに必死でした。レギュラーで毎週アフレコされているわけですから慣れていらっしゃると思うんですが、「プロってスゴいな」って感心させられっぱなしでした。
また声優に挑戦したいと思いますか?
もっとやってみたいです。俳優として、生涯のうちに誰もがわかるキャラクターができたらいいですよね。『アンパンマン』の声といえば戸田恵子さんみたいな。声のお芝居での代表作ができればいいなって。

中村倫也からの言葉で、失敗やミスが怖くなくなった

劇中では「シャザム!」と叫ぶと、ヒーローに変身します。菅田さんが自分を強くしてくれると感じる、忘れられない言葉はありますか?
人からかけてもらった言葉で助けられたことなら、たくさんありますよ。

19歳くらいで舞台をやったとき、演出家さんに怒られまくったんですけど、自分ではできているつもりだったので何を怒られているのかわからなくて。悩んでいたときにたまたま隣で稽古をしていた中村倫也さんが、「若いうちに自分ができないことを知るのもいい時間なんじゃないの? 今だけの特権だよ」って言ってくれたんですよね。
いい言葉ですね。
なるほどなぁって思いました。そこから、失敗やミスみたいなものがあまり怖くなくなりました。そもそもそんなに練習してないのに、ミスしたくないと思っている自分が恥ずかしいなって。
菅田さんも後輩のみなさんにアドバイスをされるんですか?
最近相談される機会が増えましたね。ドラマ『3年A組 -今から皆さんは、人質です-』で共演した何人かとは、“個人面談”をしました(笑)。

今井悠貴は、「いろいろお話したいです」って言ってくれたんでご飯に行って。「何食べたい?」って聞いたら、「小籠包!!」って言うから、またずいぶんピンポイントだな(笑)って思いながらも、小籠包がおいしいお店を探しました。

これまで後輩から「ご飯に連れて行ってください」って言われることがあまりなかったから、嬉しかったですね。
菅田さんにとって、最近のヒーローといえば誰ですか?
最近のヒーローは…米津玄師ですね。あいつは毎日、悪と戦ってますよ。
菅田さんの新曲『まちがいさがし』のプロデュースをされたり、交流が深いですよね。いろいろお話していると、戦ってるのが伝わってくるんですか?
いや、本気で戦ってる人って、しゃべらなくても、“さま”でわかるものなんです。
菅田将暉(すだ・まさき)
1993年2月21日生まれ。大阪府出身。A型。2009年、『仮面ライダーW』(テレビ朝日系)でデビュー。主な出演作品に、映画『溺れるナイフ』、『帝一の國』、第41回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した『あゝ、荒野』、『となりの怪物くん』、『銀魂』シリーズなど。ドラマでは、『dele』(テレビ朝日系)、『3年A組 -今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ系)など。2017年から音楽活動をスタートし、米津玄師が作詞・作曲・プロデュースを手がけた新曲『まちがいさがし』が5月14日に配信リリース。主演映画『アルキメデスの大戦』が7月26日から公開するほか、秋公開の映画『タロウのバカ』、11月からの主演舞台『カリギュラ』に出演する。

映画情報

映画『シャザム!』
4月19日(金)よりロードショー中
http://shazam-movie.jp/

©2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

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