充電設備はガソリンスタンド並みに普及している

 電気自動車(EV)の本格的普及が国内なかなか進まないのは、1回の充電で走行できる距離でも、全国における充電設備の整備でもない。最大の理由は、集合住宅の管理組合である。

 新型リーフは、1回の充電で走行できる距離を最大458km(WLTC)まで伸ばしている。今日こそ、ハイブリッド車(HV)やディーゼルターボ車では1回の給油で1000km近く走行できるものもあるが、ガソリン車であれば400〜500kmがせいぜいであろう。走行距離に関する遜色はないに等しい。

 充電設備についても、急速充電器が約7600基、普通充電器が約2万2100基(リーフのカタログに記載/2018年10月末時点のゼンリン調べ)存在し、合計約2万9700基となる。これがどれくらいの数値かというと、ガソリンスタンドの件数が約3万件だから、それにほぼ等しい。そんなにあるのかと驚くかもしれないが、充電器が設置されている場所を示す青色の看板が、意識していないと目に入らないからである。

 したがって、EVの普及に勢いがつかない理由は、すでに走行距離でも充電設備でもなくなってきているのがわかる。

 最大の阻害要因となっているのが、集合住宅の管理組合だ。EVへの充電の基本は、自宅での普通充電(交流200V)である。そのコンセント設置に際し、集合住宅では管理組合や理事会の合意を得なければならない。駐車場は、エレベーターやホールと同様に、個人の施設ではなく住民全員の共同利用の場所であるためだ。そこで、EVやプラグインハイブリッド車(PHEV)の所有を希望する人は、駐車場にコンセントを設置するため管理組合や理事会に要望しなければならない。

東京都は集合住宅への設置を促すよう動き始めた

 ところが、管理組合や理事会のなかには、自分とは関係ない個人のことだから賛成しないという人がいる。あるいは、賃貸の駐車場の場合、駐車場の経営者の理解を得なければならないが、ここでも反対される場合がある。

 初代リーフの時代、この問題で購入者の約9割は自分の判断で普通充電コンセントを設置できる戸建て住宅の人であった。その状況は、基本的に今日も変わっていないはずだ。

 この課題を解決するため、日産は大京アステージというマンション管理会社と共同で、解決に乗り出している。また東京都も、小池都知事が問題解決に乗り出そうと言っている。そのほか、新築マンションを建設するデベロッパーは、充電コンセントの設置をすでにはじめている。だが、既存の集合住宅を中心に、まだ社会全体の動きとはなっていない。

 クルマ関連の税制改革にしても、自分はクルマを持っていないとか、クルマを利用しないからと関心を示さない人が多い。だが、じつはスーパーマーケットでの買い物や宅配便など、物流を切り離した生活はいまや成り立たなくなっている。クルマへのそうした無関心を解決していくことが、集合住宅での充電コンセント設置を可能にし、EVの本格的普及を促すことになるだろう。