米インディアナ州インディアナポリスで公演を行う「ザ・ローリング・ストーンズ」のミック・ジャガー(2015年7月3日撮影)。(c)Michael Hickey / GETTY IMAGES NORTH AMERICA / AFP

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【AFP=時事】英ロックバンド「ザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)」のボーカル、ミック・ジャガー(Mick Jagger、75)が心臓弁の置換手術を受けて「回復中」であることを明らかにしたかと思えば、ヘビーメタル歌手オジー・オズボーン(Ozzy Osbourne、70)は転倒して負傷したため年内のツアー全日程を延期した。さらに、英ロックバンド「ザ・フー(The Who)」のギタリスト、ピート・タウンゼント(Pete Townshend、73)は重度の難聴を抱えている。

 ロック界のレジェンドたちも年には勝てないのかもしれない。

 引退ツアー、伝記映画、懐かしのヒット曲を集めたコンピレーションアルバムのリリース――20世紀半ばから活躍してきたレジェンドたちは老い、ロック界に「死に神」がひたひたと忍び寄ってきている。音楽業界からは、もはやロックに未来はないのではないかと危ぶむ声も出てきている。

 ロックの旗印を掲げ登場するバンドがいないわけではない。2000年代には「ザ・ブラック・キーズ(The Black Keys)」「ザ・キラーズ(The Killers)」などがロック界に久々の新風を吹き込んだ。

 だが、調査会社ニールセン・ミュージック(Nielsen Music)によると、2018年で最もストリーミング配信された楽曲トップ10にロックバンドは一つも入っていない。そのうち9曲をヒップホップとR&Bのアーティストが占め、首位はポップ界の大スター、アリアナ・グランデ(Ariana Grande)が抑えた。

 世界の主要な音楽フェスティバルでも、ロックバンドの出演機会が減り、代わりにポップ、ラップ、エレクトロミュージックのアーティストがヘッドライナーを務めるようになっている。2018年は、米野外音楽フェスティバル「コーチェラ・バレー・ミュージック&アートフェスティバル(Coachella Valley Music & Arts Festival)」のヘッドライナーから初めてロックバンドが姿を消した。

■ロックの衰退

 今年8月に開催される野外音楽祭ウッドストック・フェスティバル(Woodstock Festival)50周年を記念したフェスティバルには、前回のウッドストックに出演した「サンタナ(Santana)」やジョン・フォガティ(John Fogerty)、「キャンド・ヒート(Canned Heat)」といった60年代を代表するアーティストらが再び出演する。一方で、若年層を動員するためラッパーのジェイ・Z(Jay Z)、エレクトロポップのシンガー・ソングライターのホールジー(Halsey)、ポップスターのマイリー・サイラス(Miley Cyrus)もヘッドライナーになっている。

 ロックの衰退を示すかのような兆候はまだある。グラミー賞(Grammy Awards)授賞式で、ロック部門は何年も前からテレビ中継されなくなっている。

 音楽評論家のダン・オッジ(Dan Ozzi)氏は昨年、バイス・メディア(Vice Media)に「ロックは死んだ。やれやれ(Rock is Dead, Thank God)」と題した評論を投稿した。この中でオッジ氏は「ロックは、人気や収益などさまざまな面においてポップとヒップホップ、EDMの影響で影が薄くなっている」と評し、次のように結論付けた。

「こうした基準から言えば、そう、ロックは死んだ」

■ヒップホップが「若者文化を代表する声」に

 ロックが最後の輝きを放ったのは1990年代だったと唱える音楽関係者もいる。この時代、「ニルヴァーナ(Nirvana)」「スマッシング・パンプキンズ(The Smashing Pumpkins)」「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(Red Hot Chili Peppers)」「サウンドガーデン(Soundgarden)」が音楽シーンを席巻した。

 だが、ニルヴァーナの元マネジャーのダニー・ゴールドバーグ(Danny Goldberg)氏は、1990年代半ばには、ロックが占めていた革新的な立ち位置がヒップホップに取って代わられるようになったと指摘する。

 AFPの取材に応じたゴールドバーグ氏は、ヒップホップが「若者文化を代表する声になった」と話した。

■ロックの「精神」

 カナダのダルハウジー大学(Dalhousie University)で音楽学を教えるジャクリーン・ワーウィック(Jacqueline Warwick)氏は、ロックはかつて「真剣な」アーティストのための音楽だと思われていたが、ヒップホップ、そしてポップまでもが同様の主張をするようになってきたと話す。

「ロックは、時代から取り残された恐竜のような存在になってしまった」

 一方、ロックに関する複数の著作を持つディアナ・アダムズ(Deanna Adams)氏はAFPに対し、ロックの今日性を疑問視する声はあっても、広範囲に与えた影響力については否定できないとの見方を示す。

「ロックンロールがなければ、ヘビーメタルもパンクも、そしてヒップホップも生まれなかった」とアダムズ氏は主張する。「ロックンロールは決して死なない。頑丈な古木に張り出した太くて豊かな枝だからだ」

 実際、ヒップホップアーティストたちの多くも、ロックの「精神」は永遠に生き続けるだろうと指摘する。

「ロックの殿堂(Rock and Roll Hall of Fame)」入りを果たしたギャングスタ・ラップのパイオニア「N.W.A.」の元メンバー、アイス・キューブ(Ice Cube)は、「ロックンロールは精神そのものを指す」と話す。

「ロックとは、音楽においても人生においても、先人のやり方に倣うのではなく、自分の道を切り開くことを言う」

【翻訳編集】AFPBB News