恋とは、どうしてこうも難しいのだろうか。

せっかく素敵な出会いをしても、相手に「また会いたい」と思わせない限り、デートにも交際にも発展しない。

仮に、順調に駒を進められても、ある日突然別れを突き付けられることもある。

しかし一見複雑に絡み合った恋愛でも、そこには法則があり、理由がある。

どうしたら、恋のチャンスを次のステップへ持っていけるのか、一緒に学んでいこう。

今回は4回目のデートで友達宣言された理由は?という宿題を出していた。

あなたはこの宿題が解けただろうか?




元気と出会ったのは、男友達の孝典が趣味でやっているフットサルの試合に誘われ、何気なく見に行ったのがキッカケだった。

試合の後に開催された打ち上げ兼飲み会にも顔を出すと、その場で急に孝典に呼ばれた。

「ちょい、茜、あかね。こっち来て」
「何?どうしたの?」

孝典の隣には、背の高い爽やかな男性がいる。

「茜。元気が茜のことタイプなんだって」

直球で紹介されたためか、彼は少し恥ずかしそうにしていた。だけどなんだか人の良さが滲み出ており、好印象だった。しかも私も今彼氏はいないし、“タイプ”と言われて決して悪い気はしない。

「元気さん、っていい名前ですね。茜です。宜しくお願いします」

そんな挨拶から会話は始まった。

そしてこの後LINEを交換し、翌日思い切って自分の方から食事へ誘ってみた。

しかし、1回目のデートでは“うっすら”しか分からなかったマイナス面が、徐々に露呈してきて、3回目のデートくらいで私はうんざりしてしまったのだ。


茜が思わずうんざりしてしまった、元気がデート中にしていた行為とは?


解説1:会話の中に「でも〜」がやたらと出てくる


こちらから食事へ誘ったものの、今月は想像以上に仕事が忙しく、なかなか食事の日程が確保できなかった。

結局お互いの日にちが合ったのは、出会ってから3週間後だ。

「実現できて良かった〜。なかなか日程が合わないから焦っちゃったよ」
「すみません、今月に限って仕事が本当に忙しくて・・・」

こういう時に限って忙しいのが仕事というもの。謝りつつも、元気の優しそうな笑顔にホッとひと安心する。

「忙しそうだね。でも茜ちゃんモテるから、デートで忙しいのかと思ったよ」
「そんなことないですよ〜。むしろ今日の元気さんとのデート、すごく楽しみにしていたんですよ♡」

それは本当だった。会えない3週間のうちに、このデートに対する期待値は日に日に増していたのだ。

「しかもこんな素敵なお店に連れてきて下さって、ありがとうございます」

元気が予約してくれたのは、カジュアルだけれどもとても居心地の良い『食幹 六本木』だった。

「茜ちゃんはグルメ偏差値高そうだからね」
「そんなハードルを上げるの、やめてくださいよ(笑)」
「でもホント、良い店をいっぱい知ってそうだから、ビビっていますよ」

ビビる必要は何もないし、こんな良いお店を選んでくれたことに感謝しかない。

名物メニューである、土鍋で作られた『和風パエリア』を食べながら、デートを楽しんでいた。ところが、あることが気になり始めたのだ。




「そういえば茜ちゃんの仕事は、web系の会社で広報だったっけ?」
「はい!実は、来年独立してフリーランスのPRになろうかなと考え中で。元気さんのお仕事は、不動産でしたっけ?」

初デートにありがちな、ごくごく普通の会話をしている時だった。

「丸の内にある不動産関連の会社で働いているよ。僕もいつかは独立したいなぁとは思っているんだけどね」
「そうなんですか!?」
「でも独立って勇気がいるし、実際に僕にできるのかは分からないけど・・・茜ちゃんは偉いなぁ」

会話の節々から、元気の腰の低さと謙虚さが垣間見られる。しかし、もっと堂々としてもいいのでは?とも思った。大手企業に勤めており、仕事を頑張っているだけでも十分に誇れることなのだから。

「私も最初は不安でしたけど。一度飛び込んじゃえば、あとは無我夢中でやってくしかないかなって思います」

そんな会話をしながら、初デートは終わった。まだこのデートは良かったのだが、この後、段々と元気に会うのが億劫になっていくのだ。


茜が“会うのが面倒だなぁ”と思った元気のデート中の行動とは?


解説2:ネガティブ過ぎる男は一緒にいてしんどい。


初デートは総合的に見ると楽しかったものの、その後のデートで気がついたことがあった。

それは、元気が実はものすごくネガティブなのではないか、ということだ。

かといって連絡を絶つほどの決定打も特になく、なんとなくズルズルと連絡を取り続けていた。




4回目のデートは、彼が気合を入れて予約してくれた『しゃぶしゃぶ九 西麻布 本店』。私は口の中で溶けていく「宮崎牛のたたき 黄金の雲丹とキャビア添え」を味わいながら、幸せに浸る。

「相変わらず、お店選びのセンスが本当に抜群だね」

そう褒めると、やっぱり元気は謙遜する。

「いやいや、毎回緊張しているから (笑)そう言えば茜ちゃん、最初に来てくれたフットサルのメンバーで、会っている人はいるの?」

謙遜は構わないし、横柄な男よりよっぽどいい。しかし私が感じていた問題は、彼のマイナス思考だ。

「孝典は友達だから、この前会ったけど・・・それ以外は元気さんだけだよ!」

「本当に!?それ聞いて安心した。ほら、一人イケメンの智也っていたでしょ?あいつ、モテるからな〜」

-こうやってあなたとデートしているんだから、他の男と会うはずないでしょ!?

そんな当然のことさえわからず勝手に不安になっているのかと思うと、今後の付き合いが思いやられる。

しかも優しい性格の彼は、心に思っていたとしてもハッキリとは口に出せず、そのモヤモヤを心の中に溜めていくのだろう。一体、どこまで心配性で、そして自信がないのだろうか。

「私、イケメンに全く興味がなくて・・・って、別に元気さんがイケメンじゃない、って意味ではないよ!ただ智也さんのことは詳しく知らないけど、彼より元気さんの方がはるかにいい男じゃない?」
「マジで!?いやいや、僕なんて全然ですよ」
「元気さんは素敵だし、仕事も頑張っているし、すごいじゃん」
「いやいや、全く。茜ちゃんの周囲には、もっと凄い人たくさんいるでしょ(笑)」

もはや、コール&レスポンスになってきた。

毎回こうして慰めて持ち上げてあげるのは、正直疲れる。こっちだって気分が落ち込む時もあるし、常にこのマイナス思考に付き合えるわけでもない。

「まぁいないと言えば嘘になるかもだけど・・・彼らは彼らだからね。私自身が凄いわけではないし」

段々と、私の返答も適当になっていく。毎回これに付き合わされると思うとげんなりだ。

そして私はタクシーに乗る前に先手を打つと決めた。もしこれで告白されて断ったりしたら、向こうが酷く落ち込むのが目に見えていたから。

「元気さんとは、友達でいるのが一番だなぁ〜」

元気が驚いたような顔をしていたのは言うまでもない。けれども、私だってネガティブな男といるほど暇ではない。

-ポジティブなのは、“元気”っていう彼の名前だけだな。

そう心の中で突っ込みながら、私は一人タクシーに乗り込んだのだった。

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完璧な男の落とし穴