公開を迎えた『アベンジャーズ/エンドゲーム』
 - (C) Marvel Studios 2019

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 まさにマーベル映画の集大成。本作は、2008年の『アイアンマン』からのすべてのマーベル映画を締めくくる。『アベンジャーズ/エンドゲーム』がそういう位置付けにあることは、すでに2017年、マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギが Vanity Fair 誌のインタビューで語っていた。彼は、本作でこれまでの物語が終わり、本作の後は、全く別の物語が始まると宣言していたのだ。

 ファイギは先日、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)フェイズ3の最終作は本作ではなく『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』だと発言したが、何しろ本作のサブタイトルは『エンドゲーム』。これまで続いてきた「ゲーム」が終わりを迎えるのは、この作品なのだ。これまで描かれてきた壮大な物語はどのように結実するのか。ヒーローたちそれぞれはどのような選択をするのか。本作は、ファンがそれを見届けるための映画になっている。

 だから本作は、観客が観たいもの全てを見せてくれる。まるで、世界中のファンの願望をリサーチして作られたのではないかと思ってしまうほど。

 もうひとつ、鑑賞後の興奮が少し落ち着いてから思い知ったのは、マーベルの情報戦略の見事さだ。公開前にネットに出回った噂を思い返してみると、どれひとつとして、映画の楽しみを妨げるものではなかったことに気づかされる。噂の中には、ある程度当たっていたものも、全く見当外れだったものもあるが、あれだけ噂が出回ったのに、肝心な部分は出回らなかった。中には、このネタを隠すためにあの噂を流したのではないか……と思わせるものもあり、マーベルの戦略にただ感服するばかりだ。

 そして本作は、これまでマーベル映画を観てきたファンへのご褒美にもなっている。これまでに観たマーベル映画の数が多ければ多いほど、その感動が大きく深くなるのだ。もしマーベル映画を充分に観ていなかったとしても、もっとマーベル映画が観たくなるはずだ。(平沢薫)