現実よりもリアルなバトルを目指して。映画『賭ケグルイ』劇中ゲーム制作の裏側

学校で生き残るために必要なのは、学問でも、スポーツでもない。ギャンブルの強さだけ――。そんな“狂った”学園を舞台にしたマンガ『賭ケグルイ』。

映画版『賭ケグルイ』では、原作にないオリジナルなストーリーとギャンブルゲームが繰り広げられ、個性的なキャラクターに完璧にマッチした勝敗や手札も見どころになります。

この劇中ゲームを考案したのが、プロデューサーの松下剛さん・岩倉達哉さんと、ゲームデザイナーの佐々木隼さん。3人にオリジナルゲーム「デュアルクラッシュ・ポーカー」の制作秘話を伺いました。


撮影/尾藤能暢 取材・文/ミヤザキユウ(バンソウ)

ゲームの作り方を知らないふたりで、ゲームを考えたら行き詰まった

▲左から、ゲーム会社「オインクゲームズ 」代表の佐々木隼さん、映画プロデューサーの松下剛さん・同じく岩倉達哉さん。
もともと『賭ケグルイ』はドラマが人気を博していましたよね。
松下:はい。深夜枠ながらも好評だったので、「シーズン2」をやろうという話になったんです。

同時に、映画化も決まって。原作コミック(スクウェア・エニックス刊)に忠実なドラマに対して、映画は完全オリジナルのストーリーで行こう、ということになりました。
▲プロデューサーの松下剛さん。
ドラマのほうは、原作ファンや「シーズン1」を気に入ってくれた人が対象になります。

だけど映画になると、『賭ケグルイ』という世界自体に初めて出会うお客さんも多くなるかもしれない。

だから、作品の魅力を2時間に凝縮して伝えられるようなお話を新しく作ろうと。その一環で、映画用にオリジナルなゲームを考えることになったんです。
数々の映像作品をプロデュースしてきた松下さんと岩倉さんですが、ゲームを考えるのは初めての取り組みですよね。
松下:苦労の連続でした(笑)。

原作者の河本ほむら先生の案では、ホイスト(2対2に分かれて遊ぶトランプゲーム)だったんですけど、映画で英勉(はなぶさ・つとむ)監督がイメージする画を作るためには、違うゲームにする必要があったんです。
▲プロデューサーの岩倉達哉さん。
岩倉:ゲームは作品のコアとなる部分だから、我々プロデューサーが考案すべきだと判断しました。

でも、プレイシーンとか、勝利するキャラなんかの抽象的なイメージは湧いていたものの、具体的なルールは全然作れなくて…。
松下:カードゲームの『ハゲタカのえじき』みたいなバッティング(出したカードの種類が他の人と同じだったときに何らかのペナルティなどが発生する)システムと、河本先生案のホイストを足した何か…までは考えついたんですが、そこから進まなくて。プロの手を借りるべきだと。
それで、ゲームデザイナーの佐々木さんに相談されたんですか?
岩倉:佐々木さんは我々の救世主なんですよ。
松下:英監督の息子さんがボードゲームをお好きで、「オインクゲームズ」という会社名を教えてもらったんです。
▲ゲームデザイナーの佐々木隼さん。ルール監修と小道具のカード制作を担当。

泥臭いプロセスを重ねて、たどり着いた「セクシーな手」

佐々木:最初にご連絡をいただいたときは、正直「できんのかな?」って半信半疑でした。
僕が映画のシナリオに沿ったゲームをゼロから新しく考えなきゃ、というケースなら、負担が大きすぎる。

でも、もとになるアイデアがあって、それをシナリオにハマるように調整する、という形だったら、何とかなりそうだし、面白そうだなと。
岩倉:わらにもすがるような思いで連絡したので、初めてオフィスに伺ったときは不安でいっぱいでした(笑)。

取り掛かった当初は、ゲームデザイナーという職業の存在に想像が及んでいなかったんです。

ただ、高い専門性が求められることにはすぐに気づきました。世に出して恥ずかしくないものに仕上げるには、我々だけでは心もとなかった。
そうして佐々木さんが監修に入ったことで、ゲーム制作がグッと進んだわけですね。
松下:そうですね。ルールだけでなく、劇中の展開作りにもご協力いただきました。

まず会議室に僕と岩倉さんのふたりがこもって、ホワイトボードにカードの配列を描き、あーでもないこーでもないと話し合いをするんです。

ベースができたら佐々木さんに見てもらいに出向く、という体制で進めました。


▲各プレイヤーがどのターンでどの手を出せば、キャラと矛盾せずストーリーを展開できるのか検討を重ねたそう。
岩倉:あの時期は休日もふたりでゲーム会議をしてましたね(笑)。

そこまでやっても、素人では気づけないようなシステムの穴があるかもしれないし、手札の矛盾も見落としてはいけない。
佐々木:テーブルの上に、対戦時のカードの手札を順番に並べて、検証しました。1戦目はこの配列、2戦目は…と全部チェックしていくんです。

途中で、この登場人物のキャラ的に、この場面でこのカードを出すのはおかしいんじゃない? ってところが出てくるんですよね。
岩倉:そうなると、他も全部考え直さないといけないから大変なんです(笑)。
松下:佐々木さんの、記憶に残る発言があって。

カードの配列を詰めているときに、佐々木さんがササっとカードを入れ替えて、「こうすればセクシーですね…」って呟いたんです。
僕らにはわからないけど、プロの人の目にはそういうふうに映っているんだなと印象深くて。あの瞬間、良い映画になる予感がしました。
佐々木:村雨天音(宮沢氷魚)の手ですね。彼にはいろいろなドラマがあるので、それが手札に表れてカッコよくなった。
▲映画オリジナルの登場人物で、キーパーソンとなる村雨天音。

原作ファンを裏切らないために、「キャラクターをブラさない」

ゲームのルール面のクオリティーを担保する一方で、オリジナルかつ原作ファンの期待に応えるような展開を用意する、という課題もあったかと思います。
岩倉:新しいゲームだからといって、ルールが機能するように人物を都合よく動かすということだけは、絶対にしてはいけないと決めていました。

どんなゲームでも、主人公の蛇喰夢子(浜辺美波)は夢子らしい戦い方をするべきなんです。


それぞれのキャラクターが濃いので、原作の彼女たちらしいプレイスタイルにしなくては。ルールはルールとしてあるんだけど、そのうえで登場人物がどう個性を発揮できるかという点は常に気にかけていました。
佐々木:「夢子にこうなってほしいんですが、このゲームシステムでこの結果は変ですか?」というご相談はよく受けましたね。

あからさますぎると観る人が途中で勝敗や戦略に気づいちゃうし、調整が難しいところでした。
▲主人公・夢子の天才的な戦略が、『賭ケグルイ』シリーズの魅力。
もうひとつのゲーム「票争奪ジャンケン」のラストは、夢子らしさがよく出ていると思います。
佐々木:ありがとうございます。「らしい」シーンから逆算して、じゃあどういうゲームがあって、どういう展開になっていると良いかなと考えました。
他にも、演出面で工夫された点などはありますか?
松下:ゲームのルールや状況説明で観ている人が退屈しないようにしましたね。英監督がとくに気を遣っていた部分です。

「賭ケグルイ」は基本的に登場人物たちのテンションが高いし、展開もスピーディ。だけど、説明しないといけないことも多いんです。
たしかに舞台の百花王学園の設定(学園内での階級がギャンブルで決まるため、生徒が全員ギャンブラー)からして、常識はずれですね(笑)。
▲高杉さん演じる鈴井涼太のコミカルな動きにも注目。
松下:そうです(笑)。鈴井涼太(高杉真宙)に面白おかしく、しゃべってもらって、説明くさくならないように状況説明する役割をしてもらいました。
岩倉:ゲームのルール説明は劇中でディーラー役になる五十嵐清華(中村ゆかり)の担当だったんですが、長いセリフを台本通りに、1字1句きっちり喋ってもらいました。
松下:すっごく大変なんですけど、緊張感が画面に出て、観ている人にも伝わる。情報量が多いけど、飽きさせない映画になりました。
▲クールな生徒会書記・五十嵐。

リアリティを追求するうちに、映画の中のゲームが現実になった

今回佐々木さんが監修を手掛けられたゲームはギャンブルでしたが、ふだんデザインされているボードゲームとの違いはどこでしょう?
佐々木:何かを賭けて、勝ったときにリターンがあるという構造が面白さになるのがギャンブルですね。だからみんな絶対勝つことを目的にする。そこがボードゲームとは大きく違う点だと思います。
ボードゲームにおける目的って、必ずしも勝つことじゃないんです。みんなで楽しんで、場が面白くなることですよね。ギャンブルだと、お金を儲けるのがゴール。

でも「デュアルクラッシュ・ポーカー」はお金を賭けなくても面白い(笑)。良いゲームになったから、出版しませんかと提案しました。
松下:僕らとしては超ラッキーですよ(笑)。そんなこと、もともとは考えてもいなかったですから。しかも、商品化を前提として制作してもらうことで、小道具の欠点にも気づけた。

映画の中でディーラーがカードを配るシーンがあるんですが、テーブルの上でカードをカッコよく滑らせるためには、表面に加工をしておく必要があるんです。

最初は市販のトランプでやってみたんですが、うまく滑らず、引っ掛かってしまって。サイズや用紙を含め、すべてのデザインを、佐々木さんに担当していただきました。
佐々木:そうして作ったものをそのまま商品化したので、撮影にも耐えられるカードゲームに仕上がりました。
▲「デュアルクラッシュ・ポーカー」のコンポーネントにはコインが付属しており、ギャンブル気分を味わえる。映画の中では製品版と同じカードが使用された。
©Oink Games inc. ©2019 河本ほむら・尚村透/SQUARE ENIX・「映画 賭ケグルイ」製作委員会
映画の登場人物たちのプレイングを追体験できるのは、嬉しいですね。
最後に、映画『賭ケグルイ』で注目してほしい部分を教えてください。
佐々木:「デュアルクラッシュポーカー」を使って戦う、最後の戦いのシーンですね。

4人の中にスゴい葛藤を抱えて戦うことになる人物がいるんですが、彼が地味ながらもイイ手を打つんです。気持ちの乗った手に注目してほしいです。
松下:各キャラクターのゲーム中の手札ですかね。

『賭ケグルイ』シリーズを初めて観る人でも感情移入できるような、魅力的な人物がたくさん登場する作品です。

それぞれのキャラは、カードの持ち方からシャッフルの仕方まで、すべて異なります。手元だけで誰かわかるんですよ。
▲木渡潤(矢本悠馬)と早乙女芽亜里(森川葵)の手元。見比べると、カードの持ち方が異なる。
岩倉:役者さんは全員、カードを持ち帰って練習してましたね(笑)。僕はそうした、俳優たちのエネルギーに満ちた演技合戦に注目してほしいと思います。

生身の人間がここまでやるのか! という迫力ある映像、実写ならではの魅力を味わってください。
岩倉達哉(いわくら・たつや)
映画制作会社SDP所属。『闇金ウシジマくん』シリーズなど、多数のドラマ・映画のプロデュースを担当。
松下剛(まつした・つよし)
映画配給会社GAGA所属。『ラ・ラ・ランド』などの宣伝統括、『味園ユニバース』『アイネクライネナハトムジーク』などのプロデューサーを務める。

佐々木隼(ささき・じゅん)
ゲーム制作会社オインクゲームズ代表。『海底探険』『エセ芸術家ニューヨークへ行く』など、ヒット作多数。

作品情報

『映画 賭ケグルイ』
5月3日(金・祝)ロードショ−
https://kakegurui.jp/

『デュアルクラッシュ・ポーカー』をプレゼント

今回インタビューをさせていただいた3名が考案したゲームをを抽選で2名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2018年4月25日(木)18:00〜5月1日(水)18:00
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  • 当選者発表日/5月7日(火)
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  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから5月7日(火)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき5月10日(金)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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