航空自衛隊のF-35A戦闘機が洋上に墜落、現場は日本のEEZ内と見られます。パイロットの安否が気遣われる一方、機体の機密情報をめぐり周辺国が注視しているとも伝えられます。EEZ内のできごとに、他国が干渉する余地はあるのでしょうか。

墜落現場は青森県沖、日本のEEZ内だけど…?

 2019年4月9日(火)、青森県にある航空自衛隊三沢基地に配備されていた最新鋭ステルス戦闘機のF-35Aが、同県沖合の洋上に墜落する事故が発生しました。事故から約2週間になる4月22日(月)現在、懸命の捜索作業にもかかわらず発見されたのは機体の尾翼部分のみで、機体がどこに沈んでいるのかすらも不明な状況のようです。正確な機体の位置の把握もそうですが、何より搭乗していたパイロットの方の安否が気遣われます。


航空自衛隊のF-35A戦闘機(画像:航空自衛隊)。

 ところで、捜索作業によって尾翼が発見されたのは、青森県の東側に広がる太平洋上の沖合、約135kmの海域ですが、ここは日本の「EEZ(排他的経済水域)」内にあたります。そして一部報道などにおいては、今回の事故に関し、日本やアメリカ以外の他国による、F-35の機体引き揚げやそのほかの部品回収の可能性について耳にします。しかし、そもそも日本のEEZ内で他国が勝手にそのような活動を行うことは、果たして可能なのでしょうか。

そもそもEEZとは

 EEZは、1982(昭和57)年に採択された「国連海洋法条約」によって作られた、比較的新しい制度で、沿岸国の基線(海岸の低潮線や湾口などに引かれる領海などの範囲の基準となる線)から200海里(約370km)の範囲で設定される海域のことを指します。このEEZにおいて、その沿岸国は漁業資源といった天然資源の探査、開発や保存、風力や潮力などから生まれるエネルギーの生産など経済的な目的で行われる探査、開発に関する主権的権利と、人工島の造成や海洋科学調査などに関する管轄権を有しています。分かりやすく言い換えれば、沿岸国は上記のような活動に関する排他的な権利を有しているということです。そのため、たとえば他国のEEZ内で海洋科学調査などを実施するためには、事前に沿岸国の同意を得る必要があります。


2009年3月、中国のEEZ内で活動していたアメリカ海軍の海洋調査船「インペッカブル」に対し、中国の漁船や漁業監視船などが妨害活動を実施した(画像:アメリカ海軍)。

 もともと、EEZは自国の主権が及ぶ領海の幅をめぐって、領海の幅を狭める一方でどの国の船でも自由な航行や資源開発が可能な「公海」を広くしたい先進国と、領海の幅を広げて自国の権益、特に漁業といった資源に関する権益を独占したい発展途上国や新興国とのあいだの対立と妥協によって生まれた制度でした。先進国は、技術力や国力が高いために広大な公海でも十分に資源開発を行うことが可能ですが、逆に技術力でも国力でも先進国に及ばない発展途上国などは、公海よりもむしろ自国が管理できる領海の範囲を広げて資源を独占したく、ここで両者間に対立が生じました。そこで、両者の主張の妥協点として、海洋資源といった特定の分野についてのみ沿岸国の権利や管轄権を認めるEEZが誕生したわけです。

 ちなみに、島国である日本は世界でも有数のEEZ面積を誇る国で、その順位は何と世界6位、面積にして約400万平方キロメートル(日本の国土面積全体の約9倍以上)にもなります。

自国のEEZで他国は何ができる?

 上記のような経緯を経て誕生したEEZでは、沿岸国が持てる権利の範囲は、海洋資源や経済目的の活動に関するものに限定されています。つまり、それ以外の事柄に関する他国の活動は、基本的に沿岸国から規制されることはなく、言うなれば公海と同様の扱いになるのです。そのため、他国の船や飛行機がEEZやその上空を通過することはもちろん、海底パイプラインの敷設なども自由に行うことができます。


2018年度にスクランブル対象となった中露機の飛行パターン例。同年度のスクランブルは中露機以外も含め999回を数えるも、領空侵犯はなかった(画像:統合幕僚監部)。

 さらに、軍事的な活動も一般的には自由に行うことができます。具体的には、軍艦や軍用機の通過はもちろん、軍事演習の実施や軍事的な情報収集を含む調査活動まで許されていると解されています。ただし、中国などごく一部の国はEEZについて定める国連海洋法条約について、EEZにおける他国軍の活動を規制できると解釈していますが、これは一般的な見解とは見なされていません。

 これを踏まえて考えれば、たとえ日本のEEZ内であるとはいえ、今回の事故で墜落したF-35Aの機体や部品を他国が引き上げること自体は、少なくともEEZの制度上は問題ないと言わざるを得ません。

 これをEEZの制度上の問題と捉えることもできるかもしれませんが、しかし、これは同時に日本も他国のEEZでさまざまな活動を実施することができることの裏返しともいえます。単純にEEZの制度が問題だ、という話ではないのです。

【図】日本の領海やEEZなどの概念図


海上保安庁による日本の領海やEEZなどの概念図で、外国との境界が未画定の海域における地理的中間線を含め便宜上図示したもの(画像:海上保安庁)。