企業の果たす責任、「明治安田生命は変われるか?」
2006年01月16日09時05分 / 提供:PJ
昨年2月に明治安田生命が金融庁による行政処分を受けてから、もうすぐ1年が経とうとしている。一度目の行政処分時には、金子前社長の名で「私どもの誓い」という文面が保険契約者の元に郵送され、二度目の行政処分時には「お詫びとご報告」なる文面が送られた。
明治安田生命による一連の不祥事に対して、金融庁からの行政処分が昨年11月18日で一部解除されたが、一部の子会社の営業活動や、保険新商品の認可等の行政処分は未だ解けていない。一連の保険金未払いの不祥事は、旧明治生命からの問題でもあり、旧明治出身の社長が退任したのは当然だとも言えるが、後任に同じ旧明治出身の常務を昇格させたことには、「本当に企業体質を変えられるのか」という疑問が湧いてくる。
その上、三菱系の旧明治体制では、「隠されている不祥事が未だあるのではないか」「更に収益至上主義になるのでは」と、ついつい勘ぐりたくもなる。他の生保会社も新商品を頻繁に開発・販売している現在、既存の保険商品だけで業績を上げていくことは簡単なことではないはずだ。
だが、一般の契約者からしてみれば「明治安田生命の経営状況が今後どうなるのか、自分の保険は大丈夫か」という方が切実な問題だ。生命保険という商品は、「あそこの生保会社の対応は悪すぎる!」と、他の保険会社へ自動車保険と同じように、現条件を引き継いで移行することもできない現実がある。
昨年の12月、明治安田生命は新任の会長・社長連名で、「ご契約者の皆さまへのお約束」なる書面と「ご報告」と題した冊子を契約者の元へ送った。一連の不祥事に対して、経営陣を刷新し、経営改革に取り組む企業姿勢を示した内容で、冊子の2ページ目には基本方針として、
「お客様の立場にたち、お客様を大切にいたします」「お客様とのお約束を誠実・確実に果たし、お客様に安心をお届けします」「お客様とのコミュニケーションを通じ、社会に開かれた会社を目指します」・「以上の3つの基本方針をもって、具体的な改革に取り組んでまいります」と書かれているのだが、不祥事が起きる毎に大企業は、このような声明を「これでもか」と出してくる。商いとして当たり前のこと、一番根底にあるもの、絶対厳守することを、あえて前面に出すこと自体が、モラルの低下そのものではないだろうか。
こんな実例がある。茨城県に住むAさんは、15年前に旧明治生命で生命保険の契約を交わした。告知書の控えも無く、内容も記憶に残っていなかったが、一連の不祥事で不信感と不安を募らせ、保険加入時に書いたはずの「告知書」開示を、昨年の10月に明治安田生命へ依頼した。2週間後、Aさんの元へ明治安田生命・契約部から届いた告知書のコピーを見たAさんは驚くことになる。
まず、筆跡が違った。告知書の記入欄には「自筆」と書かれていたが、自分の筆跡でもなく、家族の字でもなかった。職業欄も違っていた。当時のAさんは自営業で株式・有限の会社組織にはしていなかったが、職業欄には「○○株式会社」書かれていた。更に、健康状態の告知欄にも当時の状況と違う箇所があった。
Aさんは明治安田生命に、「これは私が書いたものではない、きちんと調査して報告して欲しい」と依頼するが、明治安田生命からの返答は、「告知から既に2年以上経過しているので、内容がどうであれ、告知書の効力は既に無い」それだけだった。納得できなかったAさんは、「今後何かあったとしても、この告知書は私が書いたものではなく、無効だと証明できる書面が欲しい」「旧明治生命の職員が書いたのか否かが知りたい」と再度依頼した。
2週間後、明治安田生命・保険金部から親展扱いで封書が届く。明治安田生命・保険金部長名で「不利益な扱いはしない」という内容の書面は入っていたが、Aさんの自筆ではなく、第三者が書いたものであるという内容は文面中に一切書かれていなかった。
保険契約時には告知書以外に、保険証券の契約者名や受取人名などの記入欄は自筆になる。つまり、明治安田生命に有る証券控えの筆跡と、告知書の筆跡を照合すれば直ぐに判るはずなのだが、Aさんが三度目の依頼をしてから1カ月が過ぎる今も、明治安田生命からは何の返答も無いという。
仮にAさんの筆跡でなければ、旧明治生命職員の誰かが書いたことは濃厚であろう。それよりもAさん本人が保険に加入後、不運にも数年で死亡していたら、死亡保険金の扱いはどうなっていただろうか。自筆では無い、職業内容も誤りがある、健康告知も虚偽だと言われ、不当・不利益な扱いを受けていたかもしれない。
生命保険の約款には、「契約してから2年間に、虚偽報告をした病気で入院しなければ、告知義務の違反は問わない」という意味に取れる条文がある。その一方で、「重大な告知義務違反があった場合には保険金を支払わなくてよい」という詐欺無効なる条文も書かれ、矛盾する内容にも取れてしまう。
本来ならば、病歴等によって保険には加入出来なかった人々も多かったのかもしれない。しかし、営業員の言葉を信じて契約を交わし保険掛け金を払い続け、不運にも一家の大黒柱を失なった時、明治安田生命は「告知義務違反」を盾に支払うべき状況でも保険金の支払いを拒否し、正当に受け取れなかった家族や遺族から多くの苦情を生むことになった。
100パーセントの確証が無いのであれば、事実を掴む最善の行動を取ることが、企業責任の一つではないだろうか。「終わったこと、過ぎたことだからもういい」と決めるのは企業側ではない。過ちは過ちとして認め、きちんと素直に、誠実に対応することを常に求める権利を持つ契約者側のはずだ。
生命保険は、同じ商品を毎月・毎年、何十年も買い続け初めて日の目を見る商品も多数ある。中途解約などしようものならば「寝耳に水」、あの手この手で減額され、手元に戻る金額は微々たるものになってしまうケースも多い。明治安田生命が起こした一連の不祥事は、決して売り手の言いなりではなく、「自己責任で生命保険を選ばなければいけない」ということを物語っているのかもしれないが、そんな理屈が大手を振ってまかり通って良いはずはない。
生命保険の販売は、営業職員が訪問販売形式で行うのが殆どで、営業員自身の収入は、販売件数、販売額からの評価によって決まる場合が多い。生命保険販売業に限らず、営業・販売という職種は「売ってどれだけ」の結果世界の面もある。企業に「利益最優先」の社風がある以上、お客に対して不利益だと解っていても販売してしまう族が消えることはないだろう。
明治安田生命による死亡保険金と入院給付金の不払い件数は1000件を超え、金額は50億円に達した。最初の入り口では、これでもかと誠実さを訴えて来るが、一旦不利益なことになると、相変わらず重い口は閉ざされる。果たして明治安田生命は変わることができるのだろうか。【了】
明治安田生命による一連の不祥事に対して、金融庁からの行政処分が昨年11月18日で一部解除されたが、一部の子会社の営業活動や、保険新商品の認可等の行政処分は未だ解けていない。一連の保険金未払いの不祥事は、旧明治生命からの問題でもあり、旧明治出身の社長が退任したのは当然だとも言えるが、後任に同じ旧明治出身の常務を昇格させたことには、「本当に企業体質を変えられるのか」という疑問が湧いてくる。
その上、三菱系の旧明治体制では、「隠されている不祥事が未だあるのではないか」「更に収益至上主義になるのでは」と、ついつい勘ぐりたくもなる。他の生保会社も新商品を頻繁に開発・販売している現在、既存の保険商品だけで業績を上げていくことは簡単なことではないはずだ。
だが、一般の契約者からしてみれば「明治安田生命の経営状況が今後どうなるのか、自分の保険は大丈夫か」という方が切実な問題だ。生命保険という商品は、「あそこの生保会社の対応は悪すぎる!」と、他の保険会社へ自動車保険と同じように、現条件を引き継いで移行することもできない現実がある。
昨年の12月、明治安田生命は新任の会長・社長連名で、「ご契約者の皆さまへのお約束」なる書面と「ご報告」と題した冊子を契約者の元へ送った。一連の不祥事に対して、経営陣を刷新し、経営改革に取り組む企業姿勢を示した内容で、冊子の2ページ目には基本方針として、
「お客様の立場にたち、お客様を大切にいたします」「お客様とのお約束を誠実・確実に果たし、お客様に安心をお届けします」「お客様とのコミュニケーションを通じ、社会に開かれた会社を目指します」・「以上の3つの基本方針をもって、具体的な改革に取り組んでまいります」と書かれているのだが、不祥事が起きる毎に大企業は、このような声明を「これでもか」と出してくる。商いとして当たり前のこと、一番根底にあるもの、絶対厳守することを、あえて前面に出すこと自体が、モラルの低下そのものではないだろうか。
こんな実例がある。茨城県に住むAさんは、15年前に旧明治生命で生命保険の契約を交わした。告知書の控えも無く、内容も記憶に残っていなかったが、一連の不祥事で不信感と不安を募らせ、保険加入時に書いたはずの「告知書」開示を、昨年の10月に明治安田生命へ依頼した。2週間後、Aさんの元へ明治安田生命・契約部から届いた告知書のコピーを見たAさんは驚くことになる。
まず、筆跡が違った。告知書の記入欄には「自筆」と書かれていたが、自分の筆跡でもなく、家族の字でもなかった。職業欄も違っていた。当時のAさんは自営業で株式・有限の会社組織にはしていなかったが、職業欄には「○○株式会社」書かれていた。更に、健康状態の告知欄にも当時の状況と違う箇所があった。
Aさんは明治安田生命に、「これは私が書いたものではない、きちんと調査して報告して欲しい」と依頼するが、明治安田生命からの返答は、「告知から既に2年以上経過しているので、内容がどうであれ、告知書の効力は既に無い」それだけだった。納得できなかったAさんは、「今後何かあったとしても、この告知書は私が書いたものではなく、無効だと証明できる書面が欲しい」「旧明治生命の職員が書いたのか否かが知りたい」と再度依頼した。
2週間後、明治安田生命・保険金部から親展扱いで封書が届く。明治安田生命・保険金部長名で「不利益な扱いはしない」という内容の書面は入っていたが、Aさんの自筆ではなく、第三者が書いたものであるという内容は文面中に一切書かれていなかった。
保険契約時には告知書以外に、保険証券の契約者名や受取人名などの記入欄は自筆になる。つまり、明治安田生命に有る証券控えの筆跡と、告知書の筆跡を照合すれば直ぐに判るはずなのだが、Aさんが三度目の依頼をしてから1カ月が過ぎる今も、明治安田生命からは何の返答も無いという。
仮にAさんの筆跡でなければ、旧明治生命職員の誰かが書いたことは濃厚であろう。それよりもAさん本人が保険に加入後、不運にも数年で死亡していたら、死亡保険金の扱いはどうなっていただろうか。自筆では無い、職業内容も誤りがある、健康告知も虚偽だと言われ、不当・不利益な扱いを受けていたかもしれない。
生命保険の約款には、「契約してから2年間に、虚偽報告をした病気で入院しなければ、告知義務の違反は問わない」という意味に取れる条文がある。その一方で、「重大な告知義務違反があった場合には保険金を支払わなくてよい」という詐欺無効なる条文も書かれ、矛盾する内容にも取れてしまう。
本来ならば、病歴等によって保険には加入出来なかった人々も多かったのかもしれない。しかし、営業員の言葉を信じて契約を交わし保険掛け金を払い続け、不運にも一家の大黒柱を失なった時、明治安田生命は「告知義務違反」を盾に支払うべき状況でも保険金の支払いを拒否し、正当に受け取れなかった家族や遺族から多くの苦情を生むことになった。
100パーセントの確証が無いのであれば、事実を掴む最善の行動を取ることが、企業責任の一つではないだろうか。「終わったこと、過ぎたことだからもういい」と決めるのは企業側ではない。過ちは過ちとして認め、きちんと素直に、誠実に対応することを常に求める権利を持つ契約者側のはずだ。
生命保険は、同じ商品を毎月・毎年、何十年も買い続け初めて日の目を見る商品も多数ある。中途解約などしようものならば「寝耳に水」、あの手この手で減額され、手元に戻る金額は微々たるものになってしまうケースも多い。明治安田生命が起こした一連の不祥事は、決して売り手の言いなりではなく、「自己責任で生命保険を選ばなければいけない」ということを物語っているのかもしれないが、そんな理屈が大手を振ってまかり通って良いはずはない。
生命保険の販売は、営業職員が訪問販売形式で行うのが殆どで、営業員自身の収入は、販売件数、販売額からの評価によって決まる場合が多い。生命保険販売業に限らず、営業・販売という職種は「売ってどれだけ」の結果世界の面もある。企業に「利益最優先」の社風がある以上、お客に対して不利益だと解っていても販売してしまう族が消えることはないだろう。
明治安田生命による死亡保険金と入院給付金の不払い件数は1000件を超え、金額は50億円に達した。最初の入り口では、これでもかと誠実さを訴えて来るが、一旦不利益なことになると、相変わらず重い口は閉ざされる。果たして明治安田生命は変わることができるのだろうか。【了】
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 瀬畑 真一
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