「働く女はオス」などと表現し、炎上した小学館のファッション雑誌「Domani」の広告の一部=小町(@machikomachi)さん提供

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 近年、企業や団体による不適切な表現の広告が続出しています。女性や外国人差別、度を越したふざけた内容などで、インターネット上で炎上し、関係者が謝罪に追い込まれるケースもあります。会社の看板とも言える広告で、なぜ不適切な表現が増えているのでしょうか。経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。

差別的フレーズでインパクト向上狙う

Q.なぜ、不適切な表現の広告が増えているのでしょうか。

大庭さん「インターネットやSNSが普及した現代社会では、日々ユーザーや消費者のもとに大量の情報が舞い込んできます。そのため、ユーザーや消費者に対する情報の認知効果(関心を引き寄せ、記憶にとどめさせる効果)が低下し、企業広告の費用対効果を低下させる結果となっています。

そんな中、広告効果を高めるための戦略として、ユーザーや消費者にインパクトを与える内容で広告を発信することを考える企業が増加しています。そして、インパクトを与える方法の一つとして、差別をにおわせるフレーズを使用することで注目度を高めるという戦術が生み出されています。このことが、不適切な表現の広告が増えている理由と考えられます」

Q.広告の企画や制作は、外部に委託するケースが多いのでしょうか。

大庭さん「広告媒体によって異なります。テレビなどのコマーシャルは、基本的に外部の広告制作事業者に委託します。コンテンツの制作やコマーシャルを流すチャネルとの交渉などのノウハウを、広告主が持ち合わせていないからです。新聞広告や雑誌広告などの紙広告は、広告主が作成するか、外部のコピーライターなどに委託するのが一般的です。ターゲットの心に刺さるキャッチコピーなどの制作に関するノウハウを活用するためです。

このほか、ネットやSNS上での広告は、広告主が作成、もしくは外部のウェブコンサルティング事業者に委託することが一般的です。外部に依頼するのは、ネットやSNS上でのアクセスの最適化に関するノウハウを活用するためです」

Q.企業・団体側は事前に広告のチェックを行っていないのでしょうか。

大庭さん「テレビなどのコマーシャルは、広告制作事業者が不適切な内容でないかを事前にチェックします。一方、紙広告やネット、SNS上に出稿する広告に関しては、差別などの不適切要素が含まれていないかの事前チェックが行われないことも多いです」

Q.不適切な表現の広告が、企業や団体に与える影響は。

大庭さん「不適切な広告に対して一部のユーザーや消費者が批判的な反応を示した場合、そのことがインターネットやSNSを通じて拡散し、さらには、マスコミなどに取り上げられることで、広告元である企業や団体そのものが差別的な方針の下で活動を行っているという否定的なイメージが世間に広まります。

そのような事態が引き起こされると、ユーザーや消費者の中に、当該企業や団体との取引を継続、あるいは商品を購入し続けることで、『不適切な方針に賛同しているイメージ』を周囲から持たれることを懸念する心理的負担が発生します。結果的に、ユーザーや消費者が取引や購買を控えるようになり、売り上げの低下につながります」

Q.採用活動にはどう影響しますか。

大庭さん「否定的なイメージが世間に広まると、当然、採用活動にも悪影響を及ぼします。『差別的な方針がある』というイメージを持たれると、『雇用の場でも差別的な行為が行われている』というイメージにつながるからです。さらに、不適切な広告への謝罪やイメージを回復するための活動への特別なコストの発生が、利益率を低下させる結果を招きます」

Q.広告の発表時に企業・団体が取り組むべきことは。

大庭さん「広告はポジティブなイメージで伝わらなければなりません。差別や否定と捉えられるような表現を用いることは厳禁です。そうした上で、広告として正式に公表する前に、広告の内容が第三者に与える客観的な印象を確認することが効果的です。具体的には、広告とは関連のない他部門の人や一般消費者を対象に、広告に対してどのような印象を抱くのかをテストするような取り組みです」

Q.ネットでの炎上など、広告に関して問題が発生した場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

大庭さん「まず、いち早く謝罪のコメントを発表した上で、広告を取り下げ、改めて企業や団体としての元々の方針を開示します。その後、炎上が沈静化した段階で再度謝罪するとともに、再発防止に向けた対策を公表するという手順を踏むことが効果的です。

広告が不適切であったことを認めて謝罪した上で、その後も丁寧に方針などを伝える対応を取ることで、イメージの向上につながることがあります。そのため、企業・団体は、炎上時の対応フローをあらかじめ決めておく必要があります」