メキシコ・トレスマリアス諸島最大の島マリアマドレ島で、最近閉鎖された刑務所の入り口(2019年3月16日撮影)。(c)JOSE OSORIO / AFP

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【AFP=時事】太平洋に浮かぶメキシコ・トレスマリアス諸島(Maria Islands)の刑務所は「楽園」と呼ばれていた。このほど政府が閉鎖を決定したが、受刑者からは閉鎖を惜しむ声も出ている。

 この刑務所は1905年、メキシコ本土から130キロ離れた、船で8時間の場所にあるトレスマリアス諸島最大の島、マリアマドレ島(Isla Maria Madre)に建てられた。島はターコイズブルーの静かな海に囲まれ、ペリカンやオウム、イグアナなどが生息している。トレスマリアス諸島は2010年、国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の生物圏保存地域に指定された。

 昨年就任した新興左派のアンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール(Andres Manuel Lopez Obrador)大統領は、美しい自然と多様な生物に恵まれたトレスマリアス諸島を「刑罰や拷問、抑圧の証し」にしてはならないとして今年2月、この刑務所の閉鎖を決定した。

 刑務所にはこれまで延べ約6万4000人が収容されてきた。最後に収監されていた584人は3月に本土へ送還され、刑期満了が近かった危険性の低い受刑者は釈放され、その他は北部コアウイラ(Coahuila)州の内陸の刑務所へ移送された。

 穏やかな気候の熱帯の島の刑務所では、大半の受刑者が半解放状態で、ヤシの木の間を自由に歩き回っていた。家族と暮らしている受刑者さえもいた。

 看守のホセ・バセラ(Jose Becerra)氏は、島を訪れたAFPの取材班にこう語った。「彼らは静かに服役し、家族と幸せに暮らしていた。閉鎖に誰もがあぜんとし、明らかにここを去りたくない様子だった」

■熱帯の楽園

 刑務所はコンクリート製の一軒家が中心で、そこに危険性が低い受刑者が暮らしていた。戸外には屋外ジムや庭があり、木工品や音楽のクラスも開かれていた。

 島の住民保護当局を統括するリカルド・ラミレス(Ricardo Ramirez)氏は、「楽園での暮らしをあきらめるのは簡単なことではない。社会復帰するのはいつでも大変なことだ」と述べた。

■文化センターに

 長年、刑務所からの脱獄を試みた受刑者はほとんどいなかった。たとえ脱獄したとしても、長さ20キロ、幅10キロほどの島をさまよい、小動物を捕まえて食べるなどした末、再逮捕されて終わるのが大部分だった。

「見て分かる通り、(受刑者の)家には鉄格子はない。決められた時間に外に出歩くことが許可されていて、受刑者はランニングやバスケットボール、サッカーなどを楽しみ、テレビを見たり、ワークショップに顔を出したりしていた」。警務部門責任者だったグレゴリオ・ロペス(Gregorio Lopez)氏はこう説明した。

 ここを熱帯の楽園だとは思わない受刑者もいた。2013年には厳重警備指定区域の一角で、約650人の受刑者が食事と医療の改善を求めて暴動を起こし、約30人が負傷した。

 メキシコ本土マサトラン(Mazatlan)の港から週1回、看守や物資を運ぶ船便が出ている。まもなく、最後に残った看守がこの船で本土へ戻り、トレスマリアス諸島の新たな章が始まる。

 元刑務所は、1930年代に2度ここへ収監された政治活動家で作家のホセ・レブエルタス(Jose Revueltas)氏を記念する文化センターとなる計画だ。

【翻訳編集】AFPBB News