キャプテンの安部は「時間はあまりないけれど、十分に改善できる」と冷静に語った。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 U−20ワールドカップがおよそ1か月後に迫っている。開催国はポーランド。参加24か国が6グループに分かれ、まずはグループステージを戦う。
 
 影山雅永監督率いるU−20日本代表のチーム作りもいよいよ最終段階に入った。気になるのはやはり攻撃面での仕上がり具合。試合に勝ちきるには何より得点が必要だからだ。
 
 4月16日、全日本大学選抜とのトレーニングマッチでは安部裕葵(鹿島)のPKによる1点にとどまった。チームのコンセプトである「ボールを動かすこと」はできてもその先が思うように表現しきれなかった印象だ。

 影山監督は「ゴールに迫るプレー、相手にとって危険なプレーをもっと増やさなければいけない」と課題に言及しつつ、「大きな枠組みのなかで、チームとしての調和を求めている。細かな戦術を落とし込んでしまうのではなく、選手個々のアイデアやアレンジする力を最大限に引き出したい。うまくいかない時にどうするか。そういうところに話を持っていくのが大切」と続けた。

 選手たちも課題の克服に目を向ける。
 
 キャプテンの安部が「もっと前を向いた状態でプレーできれば、自分のよさを生かせると思うけれど、そういう状況がなかなか作れないのなら、別のことを考えるだけ。お互いの持ち味はわかっている。時間はあまりないけれど、十分に改善できる」と冷静に語れば、2トップの一角に入った郷家友太(神戸)は「サイドバックがボールを持ったら、(前のスペースに向かって)斜めに入ってほしいとか、2トップのひとりが下がったら、もうひとりが裏のスペースをねらうとか、攻撃のイメージは共有できている。あとは、タイミングや質の問題」と、ゴールへの道筋は整理されている。
 
 そんななか、得点への可能性を感じさせたのがCKやFKといったセットプレーだ。全日本大学選抜戦では右利きの安部や左利きの藤本寛也(東京V)がキッカーを務め、192センチの三國ケネディエブス(福岡)や188センチの伊藤洋輝、185センチの小林友希(神戸)らがゴール前で待ち構えた。
 CKでは直接ボールを送り込む形とともに、ひと工夫を加える形もあり、実際にチャンスを創出していた。42分に得た左CK。安部がタッチライン際にポジションをとっていた東俊希(広島)にいったんリリースし、そこから鋭いクロスを上げて三國のヘディングシュートにつなげた。
 
 惜しくもゴールには至らなかったが、迫力満点。セットプレーはU−20日本代表の重要な得点源になり得るのではないか。
 
 しかしながらグループステージでぶつかる3か国――南米予選を1位で通過したエクアドル、育成年代からの指導に定評のあるメキシコ、そして何だかんだいっても古豪のイタリアと、曲者ぞろいだ。中盤の構成力では引けをとらないとはいえ、守備に回らされる時間が多いのではないか。
 
 FWの宮代大聖(川崎)は「確かに相手は強いけれど、そういう展開になっても焦れずに戦おうと、みんなで話し合っている。引いて守ってカウンターではなく、できるだけ自分たちがボールを持って攻めたい」と、負けん気をのぞかせた。

 相手がポゼッションし、攻めてくるということは背後にスペースができやすい。ボールを奪ったあとの、最初のアクションで、いかに有効な攻撃を仕掛けられるか。その精度が勝負を分けるひとつのカギになるのではないか。
 
 トレーニングマッチの視察に訪れていた日本代表の森保一監督は「世界の舞台で、個々のクオリティーや武器をどんどん見せてほしい」と将来を嘱望される選手たちにエールを送った。
 
 1999年、ナイジェリアで行われたワールドユース(現・U−20ワールドカップ)で、日本は準優勝に輝いている。あれからちょうど20年、ポーランドの地でどんな成績を残すか。
 
 5大会ぶりに出場した韓国での前回大会で、日本は堂安律、久保建英、冨安健洋らを擁し、ラウンド16まで進んだ。今回もまたそこが現実的な目標になるだろう。
 
取材・文●小室功(オフィスプリマベーラ)