4月14日から3日間、U−20日本代表が千葉でトレーニングキャンプを行なった。

 5月23日に開幕するU−20ワールドカップまで、あと1カ月あまり。このあとは、登録メンバー発表を経て国内直前キャンプを行ない、そのまま大会の舞台となるポーランドへと発つことになるため、実質、これが大会前に行なわれる最後のトレーニングキャンプである。

 U−20代表を率いる影山雅永監督も、今回のキャンプの目的について、「今さら選手選考ではなく、チームを成熟させたい」と話しているように、メンバーもほぼ固まり、本番の世界大会へ向け、チーム作りは最終段階にある。

 昨季J1でベストヤングプレーヤー賞に選ばれ、このチームでも中心的役割を担う、MF安部裕葵(鹿島アントラーズ)が語る。

「監督は、ゲームのなかで僕らのよさを出させてくれるし、僕らの意見も聞いてくれるので、信頼されていると感じる。初めての選手もいたが、ほとんどの選手の特長はわかっているので、戸惑いはない」

 しかしながら、本番まで1カ月という段階に来て、U−20代表が厄介な問題に悩まされているのも事実である。

 まずは、MF久保建英FC東京)の招集について。

 今季J1での久保は、まだ17歳ながら、優れたテクニックに加え、身体的な力強さも身に着け、目覚ましい活躍を見せている。首位争いを繰り広げるFC東京で、もはや押しも押されもせぬ主力選手だ。U−20代表でも、攻撃の中軸となることが期待される。


日本の「エース」として、その活躍が期待された久保建英だが...

 ところが、今年6月に18歳になる久保は、FIFAの規定上、その時点で海外移籍が可能になる。古巣のバルセロナはもちろん、レアル・マドリードなども獲得を狙っていると言われ、ただちに移籍決定となれば、移籍先の意向次第で、U−20ワールドカップへの出場がかなわなくなる可能性が十分にあるのだ。

 今回のキャンプに久保が招集されなかったのは、「(日本サッカー)協会とクラブ(FC東京)で話し合って、ノーということになった」(影山監督)とのことだが、本番で招集できないことを見越しての判断とも受け取れる。もし久保を欠くことになれば、U−20代表にとって、大きな痛手であることは間違いない。

 そして、問題はもうひとつ。これは過去のチームも含め、U−20代表が必ず悩まされることではあるのだが、選手それぞれにコンディションのバラつきがあることだ。

 今回のU−20代表の年代――主に1999年、2000年生まれの選手たちは、好素材がそろったタレント世代との評価が一般的だ。それを証明するように、昨秋のアジアU−19選手権(兼U−20ワールドカップ予選)の段階で、すでに登録メンバーの多くが、所属クラブでポジションを勝ち取り、J1やJ2で出場機会を手にしていた。

 しかし、年が明け、新たなシーズンが幕を開けると、状況が変わり始めた。

 18、19歳の選手が所属クラブで出場機会を得ていたといっても、まだまだ確固たる地位を確立していたわけではない。ちょっとしたきっかけ――監督が代わったり、志向するサッカーが変わったりで、ポジションを失うことは珍しいことではない。

 たとえば、MF郷家友太(ヴィッセル神戸)。昨季は高卒ルーキーながら、J1で22試合に出場するなど、充実のシーズンを送ったが、今季は神戸の”バルサ化”のあおりを受ける形で、出場機会が減少。今季J1ではまだ出場機会がない。

 郷家自身は、「ルヴァンカップで90分出ているので、そこまで差は感じない」と言うが、試合のレベルや緊張感を考えると、やはりJ1での出場機会がないのは痛い。影山監督も、キャンプ最終日の全日本大学選抜との練習試合後、Jリーグで試合に出ていない選手について、「後半の後半になると、(パフォーマンスが)ガクッと落ちる。それは、日常のプレー時間に比例している」と語る。

 昨秋のアジアU−19選手権では主力としてプレーした、MF藤本寛也(東京ヴェルディ)もまた、所属クラブで苦しむひとりだ。

「(大学選抜との練習試合の)前半はよかったが、後半はバテ気味で判断が遅れた。Jリーグで90分(試合に)出ている選手、(途中出場で)少し出ている選手、出ていない選手で、コンディションにバラつきがある。やっぱり試合に出続けていかないといけない」

 そう語る藤本は、昨季J2では25試合に出場し、今季はさらなるステップアップを目論んだが、先発出場2試合、途中出場3試合(第9節終了時)にとどまっている。

 19歳のレフティは、「U−20ワールドカップは5年前くらいから意識してきた、絶対に出たい大会。今までのサッカー人生のなかで、一番大切と言ってもいいほど」と話すが、だからといって、メンバーに選ばれればいいというわけではない。

 先月のヨーロッパ遠征では、ポーランド、アルゼンチン、アメリカ、それぞれのU−20代表と練習試合を行ない、3戦全敗。とりわけ、アルゼンチン戦は衝撃的だったと、藤本は言う。

「切り返しは速いし、ビルドアップのときのパススピードも速いから、ボールを取りにいっても全然取れない。相手がカットインしてくるとわかっていても止められなかった。あれだけ強度の高い試合は、今まであまり経験したことがなかった」

 だからこそ、メンバーに選ばれ、世界大会に出場できたとしても、「そこで何もできないと意味がない。自チームで試合に出なければいけないし、トレーニングから自分を追い込み、もっと強度を上げないといけない」と藤本。現状に「焦りを感じているし、不安もある」と、胸の内を明かす。

 彼らに残された時間は、決して多くはない。直前キャンプまでに予定されているJリーグは、あと4節ほど。ルヴァンカップやAFCチャンピオンズリーグなども加えれば、もう少し試合数は増えるが、それでも実戦を通じてコンディションを高めていくチャンスは数少ない。

 指揮官も、「(Jリーグで試合に出ていない選手には)所属クラブで試合に絡んで、次は(コンディションが)フィットした状態で来てほしい」と願うが、はたして、どれだけの選手が所属クラブでチャンスをつかめるだろうか。

 これから約1カ月間のJリーグが、本番でのパフォーマンスを左右する、ひとつのポイントとなりそうだ。