「自分だからこそ面白い映画にできるんじゃないか」監督・佐藤信介、『キングダム』成功に向けた決断

昨今、漫画原作の実写化に対する風当たりは厳しさを増すばかり。「実写化不可能と言われたあの名作漫画を映画化!」などという使い古された言い回しで、人々が映画館に足を運ぶほど甘くはない。むしろファンであるがゆえに「映画版は見ない」という人も多い。

そんななか、映画監督の佐藤信介は『GANTZ』、『アイアムアヒーロー』、『いぬやしき』など、まさしく「不可能」と言われてきた漫画原作の実写化を手がけ、原作を活かしつつも練りこまれた物語と、質の高い映像で多くの観客を魅了してきた。

そんな彼と長年、映画づくりを共にしてきたスタッフ陣さえ「これは無理!」とオファーの受諾を反対したという禁断の企画――それが『キングダム』である。

だが、周囲の反対をよそに、佐藤は話を聞いた瞬間、「自分だからこそ面白い映画にできるんじゃないか」と不思議な自信を感じたという。企画の受諾から脚本づくり、キャスティングについて聞いた。

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取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.

『キングダム』はいま、自分がやるべき映画だと思えた

原作の連載期間は13年以上におよび、53巻まで刊行された単行本の累計発行部数は3800万部超。紀元前の中国を舞台にした物語のスケールや原作ファンの反応などを考えると、魅力的であると同時に二の足を踏みたくなる企画だったのでは?
ものすごい大きなタイトルですけど、そこに対して「よっしゃー!」ではなく、「いい映画になりそうだな」という妙な自信があったんです。ときめきを感じたというか…少なくともビビってはなかったです。

でも、いままで一緒にやってきた身近なスタッフに「こんな企画が来たよ。やろうよ」と伝えたら「いやいや、ウソでしょ!」「これは無理でしょ」という反応で…(苦笑)
普段から「これは無理だな」と感じて、企画を断ることもあるんですか?
もちろんあります。企画のお話はいろいろいただきますけど、断ることのほうが多いくらいです。
『キングダム』の企画を引き受けた決め手は何だったのでしょうか?
映画の表現って何でもかんでも実現できるわけじゃなくて、むしろ、できないことのほうが多いんです。それでもどこかに突破口を見つけ出して、そこに集中することで企画を実現していくんですが…。

たとえば『デスノート Light up the NEW world』(2016年)では死神をCGで再現しましたが、「そこに本当にいるかのような、生き生きとした表情にしたい」という自分なりのミッションがありました。

『デスノート』には戦いなど大きな動きのあるシーンがなかったので、主人公と死神、1対1で会話をするシーンに注力すれば、それは実現できるだろうと。

そこで手応えを得たので、今度はそうしたCGキャラクターを動かすことを目標にして『BLEACH 死神代行篇』(2018年)で、悪霊たちが戦うシーンを実現させました。そうやって、ステップ・バイ・ステップで、ひとつずつ自分の課題を解決してきたんです。

そうした課題のひとつに「360度異世界」を描きたいというのがあったんですが、『キングダム』の世界はまさに僕の思い描いていた「360度異世界」というジャンル。これまでの自分だったらまだ無理かなと思うところでしたが、『キングダム』の話が来たタイミングで「いま、自分がやるべきなんじゃないか」と思えたんですね。
『キングダム』なら可能かもしれないと思えた理由は?
中国を舞台にした歴史モノという地に足の着いた物語でありつつ、少しだけファンタジーな要素が入っている、その“塩梅”がちょうどいいなと思えたんですよね。これが、龍が空を飛んだりする完全なファンタジーだったら断っていたかもしれません。

原作者・原 泰久からのアドバイスをもらっての脚本づくり

ワールドプレミアイベントのトークで、「原作の独特の“タッチ”をどうやって実写化するかを考えた」とおっしゃっていました。
原作では、ある登場人物がはっと振り向いて、ボソッと口にした言葉がものすごい衝撃を持っていることが多々あります。そこは『キングダム』の素晴らしい魅力のひとつでもあるし、これまで僕が作り上げてきた映像スタイルを存分に活かせる場かなとも思いました。

今日日(きょうび)の流行りの映像テクニックではなく、非常に素朴なスタイルで。原作者の原(泰久)先生と細かく話したわけじゃないんですけど、画に対する考え方とか、きっと共通項があるんじゃないかって思ったんです。

だからこそ、“無理やり”何かを作っている感じがまったくなく、「この名シーンは原作通りの構図で…」など考えすぎずに、素直に自分が映像でやりたかったことを追求できたなと思います。

楊端和(ヨウタンワ)役の長澤(まさみ)さんが舞台挨拶で、「登場人物たちの初登場シーンが見どころ」とおっしゃっていましたが、何もなくただそこに立っているだけなのに威風堂々としたたたずまいを感じさせたり、ただカメラが動きを追いかけているだけなのに、どっしりとしたパワーを感じさせる。それこそ『キングダム』が求めているものだったんじゃないかなと。
▲楊端和役・長澤まさみ
そういう部分も含めて「自分だからこそ面白い映画にできた」と思える作品ができる気がしたんですよね。原作と呼応しているような感覚がありました。
脚本づくりに関してもうかがいます。企画自体は2015年頃から進められていたそうですが、これだけ長い原作があるなかで、最初の5巻まで(「王都奪還編」)に絞るのはかなり大きな決断だったかと思います。
じつは、この決断自体はプロデューサーによるものです。僕が参加する1年半ほど前からシナリオ作りは進行していまして。

僕自身もそのアイデアはすんなりと受け入れられたというか、「どう考えてもそうすべきだ」と思いました。
敵国との戦いではなく、あくまで内乱である「王都奪還編」だけに集中するというのは驚きでした。
とはいえ、「王都奪還編」だけでも、2時間の映画で描くとなると、ものすごく内容は多いんですよ(苦笑)。

面白い部分や信(山﨑賢人)の行動だけを紡いでいけば漫画通りの展開になるかと言ったら、そうじゃないんです。変える部分や削る部分、新しいアイデアを加えたほうが映画として面白くなる部分もありました。
原先生自ら脚本づくりに参加された点も大きな話題となっていますが、いかがでしたか?
結果的に完成した物語はこういうかたちになりましたが、僕自身、いろんなアイデアを脚本の黒岩(勉)さんや原先生にぶつけさせてもらいました。

何より大胆な発想でやっていかないと、映画のストーリーとして委縮してしまう。それを提案すると、原先生やプロデューサーからも、「たしかに映画の展開としてはわかるんですけど、そこまでやると『キングダム』じゃない」とか「このキャラクターは、そうはならないでしょう」という反応が返ってくることもあって。

原作にないシーンに関しても原先生から「こういうセリフを入れたら?」と言っていただけたり、本(脚本)の質を高める作業ができました。

現在進行形で展開している“生”の物語に寄り添うことも意識して、『キングダム』らしさとは何なのか?ということを考え直すきっかけにもなりましたし、非常にダイナミックな脚本づくりをさせてもらいました。
▲信役・山﨑賢人

王騎は、見てワクワクするような存在に作り上げられた

今回のキャストはどのように選ばれたのですか?
本当にさまざまな可能性があり、たくさんの魅力的な人たちの名前が挙がりました。いま、まさに勢いのある山﨑さんや吉沢 亮さん(漂/嬴政役)、橋本環奈さん(河了貂役)もいれば、「これまでの作品でこういうイメージがあるけど、こんな役もいけるんじゃない?」ということで名前が挙がった方もいました。
▲嬴政役・吉沢 亮
▲河了貂役・橋本環奈
やはりひとりひとりのキャラクターが非常に確立していて、原先生がお持ちのイメージもありますし、ネットを見ると「あのキャラはあの人か?」みたいな予想もあったり(笑)。僕自身にとって意外なキャスティングもありましたが、プロデューサーらと話し合いを重ねて、納得のいくキャスティングができたと思います。
メインキャラクターの脇を固めるキャラクターもとても素敵です。
壁(ヘキ)は、満島(真之介)さんの名前が挙がったときに「いいですね」ってすんなり決まりました。

高嶋(政宏)さんの昌文君(ショウブンクン)に関しては、姿かたちを含めて作品の世界をしっかりと作ってくださる方なのでいいのではないかという話になりました。ただしお願いするにあたって、世間の“高嶋政宏像”にさらに一枚新しいイメージを乗せて、いままでにない高嶋さんの姿を見せたいと思っていました。
▲壁役・満島真之介
▲昌文君役・高嶋政宏
実際に、鎧やヒゲのボリュームなどいろんなものを加えていき、セットの前に立って演技をしてもらったら、すべてがパチッとハマった感じがしました。そういう高嶋さんを現場で見ていたので、普段の高嶋さんに接すると、逆に軽い違和感を抱くほどです(笑)。
王騎(オウキ)役の大沢たかおさんに関してはいかがでしょうか?
話し合いがかなり長く続いたキャラクターでした。王騎こそ、いろんな可能性があったと思います。

王騎という存在自体、ある意味で主人公となれるような、彼の映画があってもいいくらいの雰囲気があって、自分の世界を持っている男ですよね。

背後にものすごい人間味があったり、ミステリアスな感じや嫌味な感じ、敵か味方かわからないような雰囲気を醸しつつも、「もう一度会ってみたい」と思わせるような男気を感じさせる。とはいえ今回の映画では、ものすごく出番が多いわけではありません。

数少ないセリフで王騎を描くということで、「大沢さんはどうかな?」と名前が出たんですが、大沢さんのもともとのビジュアルイメージもあるので、そこから王騎として作り込むには、鎧のデザイン、ヒゲ、髪、メイクなどなど、それぞれかなりの時間を要しました。
▲王騎役・大沢たかお
大沢さんには肉体を作っていただきましたし、僕たちは王騎が身に着ける鎧にこだわりました。鎧がヘッポコじゃしょうがないし、漫画をご存知の方はわかると思うんですが、スゴいじゃないですか(笑)。これって実際にあり得るのか!?みたいな(笑)。一応、時代背景を検証して試作もしてみたんですけど、何か王騎の面白さとは違っていて…。

本当に最後の最後まで詰めて、あのデザイン、ビジュアルにたどり着きました。加えて、王騎にどんな“音”が付くのか?という点も細かく調整しました。王騎に関しては、当然ファンの思いも強いですが、僕らの思いも非常に強く、ただのリアリティの追求とはまた違う、見ていてワクワクするような存在として作り上げることができたと思います。
佐藤信介(さとう・しんすけ)
1970年9月16日生まれ。広島県出身。A型。初監督作品『寮内厳粛』が「ぴあフィルムフェスティバル94」にてグランプリを受賞。その後、仲間由紀恵、伊藤英明出演の『LOVE SONG』、釈 由美子主演の『修羅雪姫』、V6のComing Century(森田 剛、三宅 健、岡田准一)、堀北真希らの映画デビュー作となった『COSMIC RESCUE -The moonlight generations』などが大きな話題を呼ぶ。2009年の『ホッタラケの島 〜遥と魔法の鏡〜』では初めてアニメーション映画の監督を務め、その後も『GANTZ』シリーズ、『図書館戦争』シリーズ、『アイアムアヒーロー』、『いぬやしき』、『BLEACH』などを手がける。

映画情報

映画『キングダム』
4月19日(金)ロードショー
https://kingdom-the-movie.jp/
©原泰久/集英社 ©2019映画「キングダム」製作委員会

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