買えば終わりじゃないところが旧車の難しさ

 最近は価格の高騰もあったり、今どきのクルマが今ひとつ面白くないということもあり、旧車に注目が集まっている。メディアでも旧車の魅力はよく語られるなど、なんだか素敵な世界が待っているように思えてくる。確かに、キャブ車ならではのダイレクト感や無骨なデザインなど、今のクルマにはない魅力はいっぱいだし、乗ればスペックはそれほどでなくても、楽しかったりする。

 しかし、何事もそうだが、いいことばかりではないのが常。今回は旧車生活30年のワタクシが、旧車ライフを始める人向けに覚悟しておいてほしい点をまとめてみた。

1)クルマが高い

 実用車でも引っ張られて価格が高くなっているのは事実。ただしこれは覚悟というより、目に見えるものなので、最初の低いハードル程度ではある。

2)税金が高い

 ご存じのように13年以上のクルマは自動車税と重量税が割り増しになる。自動車税は約15%、重量税は3割ぐらいアップで、さらに18年経過するとさらに上がる。うちのクルマは30年オーバーだが、実感としてはかなりきつい。

3)燃費が悪い

 10km/L以下は当たり前。今のクルマが良すぎることもあって、なおさら悪く思える。

4)壊れる

 当然壊れやすい。直しやすいのも旧車のいいところだが、出費にはなるので財布には痛い。また1990年代車だとコンピュータが壊れる例が増えており、直せないこともある。中古で対応できなければ、廃車になることも。

5)程度が思ったより悪かった

 中古車もだましの世界ではあるが、旧車界はもっとだましだ。きれいな塗装と思っていたら適当に板金してあって、サビが浮いてきたなんてよくある話。

6)修理してくれるところがない

 ハコスカなどの名車であれば専門店もあるが、普通の旧車ともなると、専門店もない。ちなみにディーラーは1990年代ぐらいのクルマでも見てくれなかったりするので、力にはならない。年配の方がやっている修理工場を探すのがベストではあるが、専門でないとわからないウイークポイントや解消法、対策法などには弱いのが難点ではある。

7)パーツがない

 一部の車種で部品復刻と話題になっているが、多くの車種は欠品が増えていくばかり。復刻されているクルマだって、必要な部品全部でもないし。ない場合は流用できる部品を探すか、ネットオークションなどで探すしかない。もちろんあったとしても高い。

 また旧車専門店の売り文句として、ないものは作るというのを目にする。非旧車オーナーでもさすが専門店と思うが、実際は作れるものは一部だし、もし作れたとしてもかなり高価。

トラブルも個性と思えるようになれると俄然面白くなる!

8)パーツが高い

 あったとしても、各メーカー、毎年どんどんと価格改定をしていて、ちょっとした部品でも驚く値段だったりする。あるだけマシと自分を慰めるしかない。

9)修理が高い

 今のクルマはメンテナンス性も考慮して作られている。旧車はそもそもそう作られていないこともあるし、整備性はよくてもネジの固着で手間がかかったり、オーバーホールに時間がかかったりして、すぐに修理完了とはいかない。そうなると時間工賃がどんどんと掛けられていくわけで高くなる。

10)車検が高い

 もちろん通すだけ、と言えば今のクルマと変わらない。それでは意味なし。旧車にとっても車検は消耗品の交換を行うポイントでもある。冷却水、プラグ、オイル、ブレーキなどなど。さらにタペットの調整や増締めなども行ったりして、整備費用はけっこうかかる。調子が悪くなくても、車検で20万円超えはざらだ。

11)車両保険に入れない

 クラシックカー保険というものがあるが、走行距離にしばりがあったり、保険料がかなり高い。場合によっては一般の車両保険に入れなくはないが、旧車としての価値を認めてもらわないと無理。減価償却という点では旧車はゼロ円である。

12)盗まれることもある

 名車と呼ばれる旧車は盗難確率は高い。車両丸ごとでなくても、パーツ単体で価値があるので、なおさらだ。また車両盗難でなくても、エンブレムが取られたりする確率も高い。

13)音が大きい、臭い

 規定値内と言っても、新車当時の基準なので音がうるさい。触媒がない時代のクルマなら排気ガスはかなり臭い。クリーンな今のクルマに慣れているのでなおさらだ。ちなみに家族の不評を買いやすいポイントでもある。

14)街でやたらと話しかけられる

 車種にもよるし、興味あると人とのコミュニケーションという点ではいいことかもしれないが、信号で止まっているときや駐車しているときも話しかけられることがある。壊れるか? 部品はどうしているのか? 何年式か? 自分も乗っていたなど、さまざまな質問が投げかけられる。最近は勝手に写真を撮られることも増えてきた。

 と、いろいろと挙げてみたが、これらも個性として考え、今のクルマにはない魅力ともども受け入れられれば、楽しい旧車ライフが待っている。一歩、踏み出してみてほしい。まぁ、なんとかなるものである。