女の子が憧れる理想を曲に。シンガーソングライター・宏実が描き出す歌詞の秘密
最近はミュージシャンとして活躍しながらも、他のアーティストに楽曲提供をする人が増えてきた。川谷絵音や岡崎体育は、その筆頭といってもいいかもしれない。
シンガーソングライター・作詞家・作曲家として活躍する宏実も、そんなミュージシャンのひとりだ。
彼女の作る歌詞は極めて共感力が高い。Nissy(AAA・西島隆弘)に提供した『まだ君は知らない MY PRETTIEST GIRL』は、多くの女子の心をときめかせた。
“ありのままの 君でいいんだよ 何も間違ってない”
そう彼が歌ったことで、救われた女子がどれほどいたことだろうか。
そんな宏実も2018年には、シンガーソングライターのキャリア10周年を迎えた。彼女の作る歌詞は、なぜこんなにも人々の心を掴んで離さないのだろうか。
「じつは作家としてのインタビューは初めてなんです」。
そう話す姿はアーティストとしてのオーラを放ちつつもフラットで、独特な存在感を放っていた。
最初は作家としての仕事に戸惑いがあった
- シンガーソングライターとして楽曲作りを始めたのはいつ頃ですか?
- 15、6年前ですね。当時はボストンにいたんですけど、音楽活動をしていた友達に「やってみなよ」って言われたのがきっかけ。トラックの上にメロディーを乗せるトップライニングという方法で作詞作曲を始めました。
- 楽器を弾きながら、ではないんですね。
- じつは私、楽器弾けないんですよ(笑)。
- 意外ですね。楽曲を提供してもらってシンガーとして活動するということは、考えなかったのでしょうか?
- なかったですね。最初から自分で作った楽曲を歌っていきたいと思ってました。
- それには何かこだわりがあったのでしょうか?
- 最初にお世話になったボイストレーニングの先生が、和田昌哉(※)さんだったんですよ。彼自身がシンガーソングライターだったので自然とその背中に憧れるようになりましたし、「シンガーとして曲を書けたほうがいいよ」とも言われていたので。
- ※和田昌哉:R&Bシンガー、音楽プロデューサー。E-girlsやCHEMISTRYなどさまざまなアーティストの作曲・編曲・コーラスを担当している。
- なるほど。“何かを作る”ということは幼い頃からお好きだったのでしょうか?
- 好きでしたね。小学生の頃はポエムを書くのが好きでしたし、中学生の頃は絵を描くのが好きで恋愛漫画を描いたりしてました。
- いずれの創作物も今の宏実さんにつながっていますね。
- そうですね、不思議と(笑)。
- 宏実さんは作家でもありますが、シンガーでもありますよね。現在の仕事の比重って、どのような感じなんですか?
- なんだかんだ作家としての仕事のほうが増えているかもしれないです。
- 作家の仕事が増えていくことに戸惑いは…?
- ありましたよ。事務所に所属した当初は、自分が裏方(作家)になることに全然慣れませんでした。今はだいぶいいバランスが取れてるんじゃないかな。
- 何かきっかけがあったのでしょうか?
- 何度もお仕事でご一緒させていただく方が増えて、信頼していただけるようになったのが大きいです。今はすごくやりがいを感じていますね。
女の子の憧れを詰め込んだ『まだ君は知らない MY PRETTIEST GIRL』
- 今まで手掛けた楽曲の中でとくに「これは聴いてもらいたい!」という楽曲をあげるなら、どれになりますか?
- 自分の楽曲になってしまうんですけど、『REASON』(2012年)はオススメ。私の得意としてる恋愛ソングで、嫌いになれたら楽なのに嫌いになれないという“葛藤”がうまく描けた作品になっていると思います。
- 楽曲制作はいわば“アウトプット”だと思うんです。元から自分の中に蓄えがないと出すこともできないと言いますか…。楽曲制作におけるインプットは、どのようにしているのでしょうか?
- 映画を観ることですかね。洋画がほとんどなんですが、Netflixとかでよく見てますよ。
- 映画の他にも楽曲制作に役立ってるものはありますか?
- 特別なことではないんですけど、普通の感覚を忘れないようにしてます。私、普段すごく地味な生活をしてるんですよ。スーパーで買い物をして、バスに乗って周りの会話を盗み聞きしたり(笑)。
そういうところから本当に流行ってることや一般的な感覚がわかったりするので、そうやって世の中の情報を取り入れるようには意識してます。 - なるほど。
- “普通の感覚”が自分の中に蓄積されればされるほど、楽曲を届けたい相手のイメージを具現化しやすいんですよね。共感してもらえる楽曲を作っていきたいので。
- それが具体的に表れた曲は例をあげるとすると、どの楽曲になりますか?
- Nissyの『まだ君は知らない MY PRETTIEST GIRL』(2016年)ですね。女の子全員が憧れてしまうような理想の男の子像をイメージしながらNissyと話し合いを重ねて作りました。優しいけどちょっと意地悪な男の子って、魅力的じゃないですか?
- 私は大好きですね…(笑)。
- ですよね(笑)。世の中の女の子が、もっと自信を持っていいと思ってるんです。みんな違う魅力があって、みんな素敵。
自分に自信がなくて異性と目を合わせるのが苦手な子もいると思うんですけど、それすらもあなたの魅力なんだよって。Nissyだったらナチュラルに肯定することができるような気がしたんですよね。
Nissyは“こんなにも自分の魅力をわかっている人”
- Nissyさんは先日、5周年を迎えましたよね。いろいろな楽曲で関わってきた宏実さんとしても、込み上げてくるものがあったのでしょうか?
- そうですね。私も作家である前にひとりのミュージシャンですし、彼の背負ってるものの大きさは計り知れません。どんどん記録を塗り替え、4大ドームツアーも成し遂げている姿は単純にスゴいです。
- 宏実さんはお仕事でご一緒する前からNissyさんのことをご存じだったんですか?
- 正直、AAAの綺麗な顔をしたメンバーっていうイメージしかなかったんです。でも、その当時にリリースされていたMVを拝見したら本当にスゴい方で。すぐに心掴まれて、「私にできることだったら協力したいな」と。
- Nissyさんのどのようなところに惹かれたのでしょう?
- こんなに自分の魅力をわかってる人がいるんだなって。
- 魅せ方のうまさにプロ意識を感じずにはいられませんよね。共作をされるときは、どのような雰囲気で進んでいくのでしょうか?
- 仲良く朗らかな雰囲気ですけど、友達という感じではないですね。彼の作品に対するこだわりの強さとプロ意識の高さには毎回驚かされますし、刺激を受けます!
- たしかに、こだわりが強いイメージはあります。
- チーム一体となって作り上げていくのがNissyの現場。だから私も、ご一緒させていただくと気が引き締まりますね。本当にプロ意識が高い方なので、寝てるときですら仕事してるんじゃないかなって思ったりしますもん(笑)。
“自分らしさ”は体験で得た言葉を盛り込んで表現
- 楽曲制作の醍醐味(だいごみ)は何でしょう?
- ゼロの状態から少しずつ音楽が完成していく喜びは、他には代えられないものがあります。楽曲作りに取り掛かる前は、「果たしてできあがるのだろうか」っていつも不安。でも1曲できあがると、楽曲作り好きだなって思うんですよね。
- そうなんですね。
- 実際にライブでお客さんへ届けてる瞬間もたまらない。もちろん、自分の手掛けた楽曲をアーティストさんが歌っていて、ファンの方が喜んでいる姿を見るのも好きですね。
- アーティストさんへ楽曲提供する際は、何を意識して曲作りをしていますか。
- 各アーティストさんの今の状況は把握しておくべきだと思ってます。(ボーイズ・ボーカルグループの)COLOR CREATIONのメジャー2nd シングル『I’m Here』(2018年)を作詞させていただいたときは、ファンの方との絆を意識した1曲に。これから活躍の幅を広めていくアーティストなので、よりファンの方との絆が強くなるような詞をイメージしました。
- あと、Nissyの『Addicted』は5周年というタイミングの楽曲だったので、アニバーサリーソングとしてふさわしい内容に。どのアーティストさんにしても、届けたい相手や届けたいことをしっかりイメージして楽曲を作るようにしてます。
- COLOR CREATIONやNissyとは、またイメージが違うLDH所属のアーティストへも楽曲提供されていますよね。
- そうですね。E-girlsやTHE RAMPAGE from EXILE TRIBEなどの楽曲制作に関わらせていただきました。
- 彼らへの楽曲提供で印象深い思い出ってありますか?
- 初めてE-girlsに作詞をしたとき(『Hey You!』)は、今でも忘れられないです。この曲のディレクションに和田昌哉さんが関わられていて、初めて同じ作品で仕事をすることができたんですよ。それだけでも嬉しいのに、夏向けの艶ある楽曲をセクシーに歌いあげる彼女たちも最高で。素敵なご縁でした。
- アーティストの色にカチッとハマる楽曲をお作りになる宏実さんですが、ご自身の“らしさ”はどのように落とし込むのでしょうか?
- 特別な意識はしてないかも(笑)。しいて言うなら、自分の体験で得た言葉を盛り込んだりする点ですかね。THE RAMPAGEの『Dirty Disco』(2017年)に関してはストリート感も大事だったので、自分の知っているスラング(俗語)を入れ込みました。
多様化するJ-POPで変わらないのは“カラオケで好まれる曲”
- ちなみに宏実さんが「スゴい」と思う楽曲って、どんなものですか?
- 街中やテレビで流れていて、「誰の曲なんだろう?」って気になってしまう楽曲ですね。作る側になると、なかなか難しいなと…。
- 今まででそういう体験をした楽曲はありますか?
- SUPER BUTTER DOGの『サヨナラCOLOR』(2001年)は、まさしくそれで。歌詞に惹かれて思わず調べちゃいましたもん。じっくり歌詞を読んでも本当に素晴らしくて感動しました。
- 作詞をするうえで、気を付けていることはありますか?
- なるべく聴き取りやすい言葉を選ぶことですね。サビの歌い出しを発音しやすい言葉にするようにしたり、キャッチーな内容になるように意識してます。
- 難しい単語などは使わないように意識しているのでしょうか?
- 使わないですね。話し言葉が今の主流です。
- メロディーに言葉を乗せるうえでのこだわりはありますか?
- 洋楽的な音のはめ方と邦楽的な音のはめ方を適宜使いこなすことですね。
- と、言いますと?
- たとえば“だらしない”って言葉があったときに、歌謡曲的なアプローチだと1音に1語を割り当てるので5文字になるんです。でも洋楽的なアプローチだと、まとめて発音できるところをギュッとして音に乗せたりするので3文字になったりするんですよ。
- テクニカルですね。
- 「メロディーに対して文字数多くない?」っていう歌詞のはめ方は、私の作詞の特徴のような気がします。
- 音の乗せ方の話にも当てはまると思うんですけど、最近のJ-POPはすごく多様化してきている感じがしています。
- たしかに、そうかもしれないですね。
- 宏実さんは、これからのJ-POPはどうなっていくと思いますか?
- もっと多様化していくと思います。でも、みんなで盛り上がれる面白い楽曲は文化として残っていくんじゃないかな。ピコ太郎さんの『PPAP』(2016年)やDA PUMPさんの『U.S.A.』(2018年)みたいな。
- コミック的な要素がある楽曲ということですね。
- 日本にはカラオケが根付いてますから。そこは廃れない気がします。
- では、多様化はどのように進んでいくと思いますか?
- 今以上に洋楽との差がなくなっていくんじゃないですかね。洋楽っぽいサウンドに対する日本人の抵抗感もなくなってきてるように感じますし、J-POPの基準が変わる気がします。
- 多様化が進む中で改めて“J-POPらしさ”を定義するとしたら、何だと思いますか?
- 結局はカラオケで好まれる曲が、J-POPらしい曲として残っていくんじゃないでしょうか。歌いやすいメロディー、なじみのあるコード進行、覚えやすい歌詞。
日本人である以上、どの言語よりも日本語が伝達力も表現力もあると思いますし。そういうところに重きを置いた曲が、J-POPらしい曲になっていくような気がしますね。
変わらないスタンスは“届ける相手がいるから音楽をやる”
- 宏実さんのシンガーソングライターとしての活動も10周年を迎えられてましたよね。振り返って、いかがですか?
- いろんな出会いと別れがあり、その一歩一歩が今の私を作ってくれてる気がします。たくさんのアーティストさんとコラボレーションもしましたし、素晴らしいプロデューサーさんたちにも出会えたので。そのどれもが今の私の財産です。
- ご自身で10年間で変わったな、と思うところはありますか?
- ライティングスタイルが変わったかな。デビュー当時は実体験を歌詞に落とし込むことが多かったんですけど、最近はテーマを元に自分が主体じゃないことも書けるようになりました。あとは、作り直しをするようになったかな。
- 再考するようになったんですね。
- 「こういうのどうですか」って1回提案してみて、その反応を元に練り直したり。ブラッシュアップが自分の中で当たり前になりました。柔軟性が高くなったんでしょうね。以前は答えはひとつしかないと思っていたので。
- 逆に変わっていないことはありますか?
- カッコつけるようですけど、聴いてくれてる人のために音楽をやっているところ。音楽を生業にしていると「なんで音楽をしているんだろう」って考える瞬間がどうしてもあるんですけど、そういうときに思い出すのってファンの方々の喜んでる顔なんですよ。
楽曲提供にしても同じ。ファンの方が私の作詞した曲で喜んでいるのを見ると「やっててよかったな」って。楽しいからやってるのももちろんなんですけど、届ける相手がいるから音楽をやるっていうスタンスは変わらないですね。 - 素敵ですね。次の10年後、20周年への展望を聞かせていただけますか?
- ずっと音楽を続けていきたい。年下のアーティストさんも増えてきたので刺激を受けつつ、自分も刺激を与えられるアーティストでありたいですね。
- 宏実(ひろみ)
- 1982年10月1日生まれ。東京都出身。AB型。
シンガーソングライター・作詞家・作曲家。幼少期から伝統的な「和」の音楽に触れて育ち、高校卒業後はアメリカのボストンに留学し本場アメリカでR&Bシンガーとして音楽活動を開始。帰国後の2005年にアーティスト「宏実」としてデビューする。生まれながらに持つ感性豊かな表現力から発する洋楽テイストを絡めた強いメロディーラインが特徴で、倖田來未や板野友美などの楽曲を手掛ける。また、楽曲のニュアンスを最大限に活かした表現力を武器に、Nissy(AAA・西島隆弘)やDream Amiなどの作詞を担当。このほか、コーラスワークも手掛け、CHARLI XCXやBlock Bなど海外アーティストの日本語歌詞も手掛ける。2017年にはSofi Tukkerの『Best Friend(feat. NERVO, The Knocks & ALISA UENO)』に携わり、この曲はApple『iPhoneX』のグローバルCMソングとして起用され、世界的に話題になった。
サイン入りCD&タオルプレゼント
今回インタビューをさせていただいた、宏実さんのサイン入りCDとタオルを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。
- 応募方法
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\作家としてのインタビューは初!/#宏実 サイン入りCD&タオルを3名様にプレゼント!
— ライブドアニュース (@livedoornews) 2019年4月23日
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・応募〆切は4/29(月)20:00
インタビューはこちら▼https://t.co/fNjkwCJLlW pic.twitter.com/bTjd0PsWC1- 受付期間
- 2019年4月23日(火)20:00〜4月29日(月)20:00
- 当選者確定フロー
- 当選者発表日/5月7日(火)
- 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
- 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから5月7日(火)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき5月10日(金)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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