「湾生」らの来訪を歓迎する高思博氏(左から2人目)=同氏提供

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(台南 14日 中央社)日本統治下の台湾で生まれた日本人である「湾生」の男性(93)が14日、かつて15年暮らした南部・台南市の2階建ての木造住宅を再訪した。長い時を経て再び家の敷居をまたいだ男性は、保存状態の良さを称賛。子ども時代のことを「非常に懐かしく思い出した」と喜んだ。

男性の父親は地元の建設業界の名士。消防車を寄付したり、優秀な学生に学費を提供したりと、慈善事業に熱心だったという。同市の指定古跡に指定されている「旧台南合同庁舎」の建設に当たり、寄付も寄せている。

旧台南合同庁舎はかつて消防組の詰め所が置かれた建物。建物中央の高い塔は火の見やぐらとして1930(昭和5)年に落成。1938(昭和13)年には塔の両側が増築されて合同庁舎となり、消防や警察などの機関が置かれた。

台南市は、当初の姿をよみがえらせる修復作業と、同市の消防の歴史を紹介する史料館の設置を合わせて進めてきた。工事は終了し、15日に予定される供用式典には建物ゆかりの人々が招かれた。湾生の男性はこの機会を利用し、旧宅を訪ねることになったという。

戦後、男性の一家が日本に引き揚げた後に同宅を入手したのは、馬英九政権下で行政院政務委員(無任所大臣に相当)を務め、昨年11月の地方統一戦では野党・国民党の公認候補として台南市長選にも出馬した高思博氏の祖父。高氏自身にも同宅で幼少期を過ごした思い出があるといい、男性の訪問を温かく歓迎した。

(楊思瑞/編集:塚越西穂)