性懲りもなく土下座外交(C)共同通信社

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 トランプ米大統領から押し込まれた日米貿易交渉が15日から本格的に始まるが、案の定、雲行きは相当に怪しい。トランプがヤリ玉に挙げる自動車分野は先送りにされる一方、農産品は狙い撃ちだ。今月下旬の日米首脳会談での妥結に向けて米国は鼻息が荒い。日本の農家にとって巨額の市場開放は大きな打撃になるが、安倍首相は二つ返事でOKしかねない。

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 茂木経済再生相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が、15〜16日にワシントンで会談予定。米国では対日圧力が日増しに強まっている。「全米豚肉生産者協議会」のジョルダーノ副会長は11日、NHKの取材に「すでに日本での売り上げが減っている。非常にがっかりしている」「他の国と同じか、それよりもよい条件で輸出したい」と露骨な不満を口にした。

 背景にあるのは昨年末のTPP、今年2月の日欧EPAの発効だ。参加国からの輸入関税が引き下がり、米国の農産品は日本市場からはじき出されている格好なのだ。財務省の貿易統計の2月輸入実績(数量)によると、米国産豚肉は前年同月比14%も減らしたが、EUは54%、カナダやメキシコは2割近くも増加。牛肉も米国産が17%増なのに対し、カナダは3倍超、ニュージーランドは6割増だった。米国の“独り負け”なのである。

 パーデュー米農務長官は「農産品を巡る暫定合意を早期に結ぶことを望む」と強気だが、米国はどれくらいの農産品を日本に売り込むつもりなのか――。貿易問題に詳しい「アジア太平洋資料センター」の内田聖子共同代表が言う。

「数値はあまり公に出ていませんが、参考になるのが、TPP離脱前に米通商代表部が行った試算です。コメ、牛肉、豚肉、乳製品で計4000億円の対日輸出を増やすというものでした。今回の交渉でも基準になると思われます。すでにTPP、日欧EPAで輸入農産品が拡大している上に、米国の4000億円が加われば、農家は大打撃です」

■早期妥結で参院選への影響を回避

 米国は茂木―ライトハイザー会談で農産品を巡る協議を詰めた上で、今月下旬の安倍訪米のタイミングで妥結をまとめるハラだ。日米交渉で米国が本命視する自動車分野については、追加関税の是非が来月中旬に決定する見通し。化けの皮がはがされたとはいえ、アベノミクスの生命線である輸出産業の中核を成す自動車を死守したい安倍は4000億円もの農産品の市場開放にヤスヤスと応じそうだが、加えて、こんな事情があるという。

「安倍政権は〈TPP並みに抑えた〉などと言って早期に妥結する可能性が高い。というのも、交渉が後ろにずれ込めば、夏の参院選が近づいてきます。4月末に決着をつければ、その後、改元祝賀ムードや10連休で問題がかき消され、選挙戦でのダメージは薄まるとみているようです」(内田聖子氏)

 世論はもとより、ビッグディール好きのトランプをずいぶんとナメたもんだ。大量に売りつけたポンコツ戦闘機の補償は頬かむりで、「もっともっと」と迫られ、自縄自縛に陥るのは目に見えている。