2018年12月に開催された「日本カー・オブ・ザ・イヤー2018-2019」の最終選考会でイヤーカーに選ばれたボルボ「XC40」(撮影:風間仁一郎)

スウェーデンのボルボ初のコンパクトSUV(スポーツ多目的車)がXC40だ。ボルボにはほかに、XC90、XC60というSUVがあるが、XC40は最も小型のSUVである。2018年3月に日本市場へ導入されたXC40の爆発的人気が、国内はもとより世界でも止まらない。


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日本では、発表当初に設定されたファーストエディションと呼ばれる限定車が、発売時点ですでに完売の状況であった。そして、正式発表後に受注したクルマは納車が6月以降という人気ぶりで、昨年内の納車は2000台ほどだったが、なお1000台以上の受注を抱えていた。そして2019年に入っても、注文しても納車まで9カ月待ちの状態である。

こうした状況の背景にあるのは、XC40の世界的な人気によるところが大きい。大柄なクルマが好まれるアメリカでも人気が出て、日本市場へ配分される台数が、日本での活況を受け割増しされたにもかかわらず、なお受注に応じきれない状態が続いているのである。

XC40の魅力について、詳しくは後述するが、高い評価を裏付けるものとして、発表後間もなくの欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、その後、日本のカー・オブ・ザ・イヤーも受賞したことに表れている。

国内外で高評価

しかも、日本では前年のXC60に次いで2年連続の受賞であった。日本カー・オブ・ザ・イヤーは、輸入車に対し別枠でインポート・カー・オブ・ザ・イヤーの特典を設けているが、国内外の新車すべての中から最高の栄誉となるカー・オブ・ザ・イヤーをボルボは2年連続で獲得し、その1台がXC40ということなのである。ほかにも、日本カーデザイン大賞のゴールデン・マーカー賞・量産車部門もXC40は受賞している。

XC40が国内外を含め、いかに高く評価されたクルマであるかがうかがえる。では、何がそれほど人々の心を惹きつけるのか。

ボルボは、1927年の創業以来、世界で最も安全なクルマの1台としての価値を提供し続けてきた歴史がある。それというのも、ボルボが初めて自動車を開発している最中に事故を起こし、なによりまず安全が重要であるとの方針を定めたからだ。

日本市場においても、ボルボを愛好する人たちが何より求めたのは安全性であり、なかには「ボルボに乗っていれば死なない」といった誤解をした人もあると耳にしたことがある。いずれにしても、安全の追求でボルボがつねに最先端であることは間違いない。

例えば、今日すべてのクルマに装備されている安全の基本となる3点式シートベルトは、ボルボが開発し、その特許を公開することで、自社製品のみならず世界のクルマが安全になることをボルボは優先した。

一方で、かつてのボルボは、たとえ安全であっても、必ずしも走行性能は高くなく、また外観は四角い箱のような姿で簡素だった。しかしその簡素な姿こそがボルボを象徴していると、今日なお懐かしむ人がいるのも事実である。

そうしたボルボが、大きく躍進したのは近年のことだ。アメリカ・フォードクループを離れ、2010年に中国資本を母体としながら、スウェーデンや北欧的な感性で商品戦略を整え、造形の独自性のみならず、車両の構成を簡素化し、環境へも積極対応する姿勢を示し、商品性は大きく前進した。

ボルボ・カー・ジャパンの木村隆之社長はそれを「新生ボルボ」と呼び、その第1弾が2016年に日本に導入されたXC90である。価格は700万円台後半から1000万円を超える車種となり、従来のボルボの顧客層より上の富裕層への提案でもあった。まさにそれは、ボルボを安全なクルマからプレミアムなブランドへ成長させる挑戦であった。もちろん、基軸となるのは世界有数の安全性である。

ボルボにおける商品価値とは

ボルボで最も小型のSUVとはいえ、XC40もプレミアムなコンパクトSUVとの価値が与えられている。

商品価値について、ボルボは、XC90、XC60、XC40の順に大きさで格付けされるものではなく、例えば、フォーマル、ビジネス、カジュアルというように、同じブランド、同じ顧客であっても、使う場面で用途が異なったり、あるいは人生観で嗜好が分かれたりする価値の考え方であり、上下関係ではないとする。

外観の造形についても、どこのメーカーであるかを明らかにする統一感を持たせる傾向が世界的にあるが、ボルボもその流れにはあるものの、90シリーズ、60シリーズ、40シリーズで明確な性格分けがなされている。

ことに、XC90とXC60に比べ、XC40は明らかに違った外観を持つが、同時に新生ボルボらしく、かつ存在感も備わっている。小型SUVであるため、カジュアルでより親しみやすくとの配慮はあるものの、単に可愛らしい造形にするのではなく、イングリッシュブルドッグを主題に愛嬌のある身近さを表現している。そこが、可愛らしさやスポーティーさとは違った、世界的な共感を呼んでいるともいえるだろう。

車種構成は、基本的に4つのグレードに分かれているが、実は最も廉価な標準仕様がかなりいい乗り味である。その内装は簡素でダッシュボードに黒の樹脂が使われているが、単なる樹脂ではなく、本社があるイエーテボリ市街地の地図を立体的に表現した造形をもたせ、安物に見せない配慮がなされている。ほかのグレードもそれぞれに持ち味があるが、基本がしっかり作り込まれていることを標準仕様で確認することができる。

XC40は、小型SUVであるがゆえに、より大柄なSUVなどに比べ車内の小物入れを充実させ、スマートフォンを置くだけで充電できる機能や、大型のペットボトルとノートPCを収納できるドアポケット、あるいはグローブボックスにバッグを掛けられるリトラクタブル式のフックが設けられるなど、それら使い勝手はまるで日本の軽自動車や小型車の室内を見るような配慮がなされている。

もちろん、安全装備には車種ごとの差がなく、16種類以上の先進安全・運転支援技術を全車に標準装備する。この3月には、一部仕様変更が実施され、後方の死角から接近してくるクルマを知らせる運転支援に、先に90シリーズや60シリーズで採用されたステアリング・アシスト機能が追加されている。

また駐車を支援するパーク・アシスト・パイロットには、駐車中にクルマの前後の予想進路内に他車や歩行者を、センサーが検知した際は、自動ブレーキを掛け、停止させる機能も加わった。

安全に対して、車格を問わず水準を高めていく姿勢が明確にされている。

顧客を他社へ逃さない独自の取り組み

しかしそれにしても、納車まで9カ月も待つことができるのだろうか。対応策として、ボルボ・カー・ジャパンは、ブリッジSMAVO(スマボ)と呼ぶ販売方法を顧客に提案している。

これは、XC40が納車されるまで、ほかのボルボの新車を毎月定額で乗ることができる仕組みだ。したがって、現在使用中のクルマの車検がきて手放したり、あるいは現在クルマを所持していなかったりする場合でも、契約したXC40が届くまでほかのボルボ車を使うことができるのである。

いよいよXC40が納車となったら、乗り換え清算金なしで、複雑な手続きがいらない。これは、いわゆる個人リース契約(SMAVO)の拡張サービスということができる。したがって、頭金なしで、3年間の税金や整備代など諸費用も組み込まれ、均等払いでXC40に乗れるのである。それを、納車までの空白期間にも適用し、例えばV40など在庫されているほかの車種に乗れるというわけだ。

このブリッジSMAVOは、思わぬ評判を得ている。自分のクルマとして購入する場合には選ばないであろう車体色、例えば真っ赤なボルボに乗ってみたいといったことも可能にする。それは、新しい体験になるだろう。

ブリッジSMAVOの取り組みは、長い期間納車を待たせることになる人気車種を希望する顧客を、他社へ逃さない販売上の利点があるのはもちろんだが、顧客にとっても、普段と違った体験を通じ、購入予定の車種以外のボルボの中に別の魅力を発見できるかもしれない。1つの契約で2度おいしいといえる仕組みでもある。

こうして、XC40は発売から1年を経てなお人気が衰える様子はなく、多くの消費者に期待を抱かせているのである。