朝食抜きだと、1日に必要な栄養・エネルギー量ともに追いつかない

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新連載「働く人の食事術」―忙しい社会人が摂るべき「朝食」は何なのか

「THE ANSWER」は忙しく働く大人世代が日常のパフォーマンスを上げる方法を“食”から考える新連載「働く人の食事術」をスタート。Jリーグやラグビートップリーグをみてきた公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏が指南する。

 1日のなかで最も慌ただしい朝時間。朝食もそこそこで家を飛び出し、満員電車に揺られ、出社した頃にはもうヘトヘト……という人も多いだろう。そんな働きマン、働きウーマンを支える、ベストな朝食の組み合わせとは?

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 人にとって、朝食を摂ることが大事な理由は2つ。一つは、午前中に必要な脳のエネルギーと栄養を確保すること。そしてもう一つは、「体の時差ボケ」をリセットすることです。

 ところが、朝の通勤、通学前は1日のなかで最も余裕のない時間帯。朝食は食パンや菓子パンを少しかじってコーヒーで流し込むだけ、野菜ジュースを飲むだけで、家を飛び出す人も多いのではないでしょうか。

 満員電車での通勤・通学で疲れてしまう、仕事や家事に追われてヘトヘト……。実はそんな疲れの原因には、栄養不足が関わっている場合がとても多いのです。例えば、先ほどの朝食。パンだけでは食べたものを効率良くエネルギーに代えるビタミンやミネラルが不足しているし、野菜ジュースでは脳や体を働かせるエネルギーが圧倒的に足りません。

 もしも朝食抜きであれば、昼・夜しっかり食べても、1日に必要な栄養・エネルギー量ともに追いつかない状態です。ちなみに菓子パンは砂糖と脂肪の塊。血糖値が急激に上がり、量はそれほど食べていないわりに、体脂肪はしっかり身につきやすくなります。

「糖質+タンパク質」の朝食を摂るべき理由、完璧な組み合わせは?

 さらに、糖質とタンパク質を組み合わせた朝食を摂ると、「体内時計の時差」のリセット効果が、より高くなるとわかってきました。

 人間の体にはもともと、「体内時計」が備わっています。地球の自転により私たちは1日24時間で生活していますが、実は体内時計は1日を24時間10分で刻んでいます。たった10分のずれでも、1週間続けば1時間以上。1日、1日、体内時計をリセットしていかないと、次第に体が時差ボケを起こし、疲労や体調不良につながります。

 この1日10分のズレをリセットする役目を担うのが、「糖質+タンパク質」の朝食なのです。

 例えば卵かけご飯、ハムやチーズを乗せたトースト。コンビニで買った、鮭おにぎりやたまごサンドでもいい。これに、野菜ジュースや手軽に食べられる野菜(プチトマトやきゅうりなど何でもOK!)を食べれば、エネルギーの変換効率も上がって、完璧です。

「食事はバランスが大事」とよく言われるのは、食べたものを無駄なく、効率良くエネルギーに変え、体の機能をフルに働かせるためには、栄養もチームワークが必要だから。忙しいとどうしても食生活を簡単に済ませがちですが、今の疲れや不調の原因は、「何かの栄養が足りていない」ことにあるかもしれません。ほんのひと手間加えるだけで、栄養状態が改善され、体内リズムが整い、体本来の力とパフォーマンスが戻ってきますよ。(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビューや健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌などで編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(共に中野ジェームズ修一著、サンマーク出版)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、サンマーク出版)、『カチコチ体が10秒でみるみるやわらかくなるストレッチ』(永井峻著、高橋書店)など。